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ようやく更新できました

お待たせしてしまって申し訳ありません!!

 主に政治界でのお偉いさんがたを乗客者として迎え入れる豪華客船・プリンセススター号。

 開発されたのは三年前。当時の科学技術を総動員したかのうような開発期間とレベルだったという。

 そして。

 そんな豪華客船を襲った悲劇が―――二年前。

 

『プリンセススター号襲撃テロ事件』である。


 事件に巻き込まれた者達は二百人。被害に遭ってテロ実行犯達に殺害されたのも『一人』を除いて全員である。

 二百人の大量殺害。

 明らかに大罪だ。

 大罪以上に罪深い悪行である。

 しかし、その二百人を殺害したという悪行を行った犯人達すらも―――死亡・・していいたのだ。

 一人残らず。

 全員が心臓を動かしていなかった。

 つまりこの悲惨な事件で唯一生き残った者はただ一人。

 たった一人の少女だったのである。

 

「それが『プリンセススター号襲撃テロ事件』のあらすじじゃ。そして儂が今目の前にしているゾンビのような男は―――そのテロ事件を起こした犯人のリーダー、井土いどみのるじゃ。儂もあの事件の時にはテレビやニュースで何度も犯人の顔を見たからのう。見間違いではないじゃろう」

「「ッ!?」」

 雪白千蘭ゆきしろせんらん清姫きよひめも仰天してゾンビの男―――井土いどみのるという『プリンセススター号襲撃テロ事件』実行犯のリーダーという男を凝視する。

 七色夕那ななしきゆうなは井土を指し示しながら続けて、

「そして儂達を囲んでいるゾンビ共も、テロ実行犯の仲間達じゃ。当時は全国的にニュースや新聞で犯人の顔写真や情報が公表されていたからのう。間違いはない」

「で、でも何でそのテロを起こした犯人達がここに……」

「そんなもの、儂たちと同じで魂を食われたからじゃろう。じゃなければここには存在せんよ」

 雪白に返答を返した七色夕那をしばし見つめ続けている、ゾンビのような姿をしたテロ実行犯リーダー・井土実。腰を下ろしてしゃがみこみ、地面となっている真っ白な砂に人差し指の先を当てて、メッセージのようなものを書いた。

『そうです。私があのテロ事件を起こした犯人達のリーダーです。そして貴女方を囲んでいる者達もテロ事件の犯人です』

「? もしかして貴方達……喋れないの?」

 わざわざ文字を使って会話を行ってきた井土を見て、清姫は気づいたように尋ねていた。

『はい。私達は喋れません。だから貴女方を追いかけて話をしようと思いました。しかし私達の格好に怖がられたのか、貴女方は逃げてしまって』

 他のゾンビ達も共感するように頷く。

 なるほど。どうやら彼らは本当に七色達を襲うつもりはなかったらしい。ただ単純に話をしたかったのだが、彼女達が自分達の姿を恐れて逃亡してしまったため、大人数に追いかけていただけだという。

 しかしどういうわけか言葉は喋れない。

 ならば呼び止めることも不可能なのだから、ゾンビ映画のように追いかけっこを行っても仕方なかったのだろう。

「な、ならばなぜお前らは喋れないんだ?」

『私達もここに来た当初は貴女方と同じで喋れてましたし、体もこんなゾンビのようにボロボロじゃありませんでした。ですが、長い間ここにいたら、いつの日からか―――』

「魂の存在力・・・が弱まってきた、とかそういった辺が理由じゃろう?」

 七色が告げた言葉に井土は大きく首を縦に振る。

 いまいち現状を納得しきれていない雪白は、己の理解が正しいのかどうか答え合わせを求めてきた。

「つまりこのゾンビ達はテロを起こした犯人達で、喋れないのは魂としてこの世界に居すぎたことで存在力……がなくなってきたということか?」

「おそらくそうじゃ。どんなものにだって無限は存在せん。全てが有限なのじゃよ。人も動物も物も地球も何もかものう。じゃから魂としての寿命・・が尽きてきたせいで、ゾンビのようにボロボロになって口も動かせないほど弱体化してしまったということじゃろうな」

 周囲のゾンビ達は自分達のことを納得してくれたことに歓喜したのか、若干嬉しそうにコクコクと首肯してきた。

 とにもかくにも。

 ゾンビの正体は解けた。

 害は特にない、七色達と同じ存在である魂の成れの果てとでも言ったところだろう。

 しかし疑問は未だ解明されていないものがある。

 それは、

「では、なぜお主達はあの大量殺人を起こしたのじゃ? それと―――いつ魂を食われたのじゃ?」

 井土実は後悔するように沈黙し、ゆっくりと文字を書いていった。


『人質を取られてたんです、私たちは』

 

 七色は眉を潜める。

「人質、じゃと?」

『ええ。怪しげな奴らに家族や恋人などを私たちは全員奪われました。さらにその怪しげな奴らが家族をさらったと思ったら、あいつらは私たちを人気にない廃工場に集めてこう命令してきたんです』

 一瞬の静寂の後。

 井土実のボロボロの指が震えながら命令の内容を書き記していった。

 

『「人質を返す代わりにプリンセススター号に乗客している者を全て殺害してみせよ。出来なかった場合は、人質の女は風俗に売り飛ばすか問答無用で殺す。男は使いようがないから殺す」……と。』


 なんと悲しき事実だったのか。

 ただの愉快犯や、人殺しを根っから好む快楽殺人鬼や、現状の日本に対して苦しめられていたから……などの『テロを起こしても納得できる理由』があるならば、『プリンセススター号襲撃テロ事件』の犯人達を真っ向から恨むことも憎むことも敵視することもできる。

 しかし。

 もしも彼らの言うとおり『大切な存在』の命と引き換えに仕方なくプリンセススター号を襲撃したとしたら……大半の人間は多少の同情をしてしまうだろう。

 悪夢のような悲劇―――『プリンセススター号襲撃テロ事件』の真相とは。


 テロを実行させた『黒幕』が舞台裏で呑気に過ごしていたということ。


『だから私たちはその怪しい連中から支給された銃火器っを手にとって……二百人を命令通りに始末しました』

 テロ実行犯達である井土実達は『大切な存在』を守る為に二百人の大量殺害を犯した。

 これが事実であり現実だ。結局のところ、どちらも被害者だったのだ。

 井土実達は『黒幕』の被害者。

 乗客者達は井土実達の被害者。

 連鎖的に起こった惨劇。本当の『犯人』は井土達を人質を使って脅した『黒幕』。

 七色も雪白も清姫も、返す言葉がなかった。

 いや、そもそも何を返せばいいいのだろう?


 井土達は家族や恋人を守る為にテロを起こした。

 乗客者達はそれに巻き込まれた。


 ……何て言葉を返せばいい?

 ―――可哀想に、人質を取られていたんだからしょうがないよ。

 ―――ふざけるな。そんな理由で人を殺したのかバカどもが。

 なんて、どちらの言葉も発言できるわけがない。

 犯人達は大切な人を守りたかったからテロを起こした。もしもその境遇に自分が遭ってしまったら……自分はテロを起こさなかったと断言できるのか? 家族も恋人も何もかもを目の前で殺されていく現実を笑いながら肯定できたのか? 

(……こんな時、夜来……お前はどう思う?)

 ふと、そんなことを考えた雪白千蘭。

 彼ならば、一流の悪人である彼ならば、『大切な存在』を守る故に殺人を犯した井土実達になんて言葉をかけるのだろう? 

 彼ならば、

 否定するのだろうか。

 肯定するのだろうか。

 一体、夜来初三―――『本物の悪』を背負う彼ならばどのような評価を下すのだろうか。

 次第に思い悩んでいく雪白だったが……ふいに口元が緩んでしまった。

(はは。そうだ。夜来アイツなら……)

 まるで。

 夜来初三の提示する答えを、考えを、悪を分かりきっていたように。

 彼女は、ここにはいない『一流の悪人』の『代わり』をするべく、沈黙だけが漂っている現状に口を開いた。


「―――お前らは『二流の悪』だ」

 ゾンビ達を指差して、そう堂々と告げた彼女。

 その双方の瞳は、確固たる確信があることを表すような色で構成されていた。 



  

 

 

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