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黒狼さんと白猫ちゃん  作者: 翔李のあ
story .08 *** 異能力と世界を形創るモノ
210/211

scene .1 守るべき存在

 騒がしい程賑やかな朝食を終えたロルフたちは、今後の予定を立てるべく情報共有をしていた。

 と言っても、モモは攫われてからこの宿屋に戻りエルラに洗脳を解除して貰うまでの記憶がほぼ無く、ロロは教会に建てられていた像が母に似ていたためにそれをもう一度確かめたいという理由で一人行動しただけ、とのことだった。


「だったらもう一回行きたいって言ってくれたらよかったのに! うちら全然付き合ったよ?」


 ランテのそんな言葉に、ロロは小さく口を尖らせる。そして、床に視線を向けると「はずかし、かったから」そう呟いた。


「そんなことで」

「ねぇ」


 兄として叱るべきだと思ったのだろう、ロロの返答を聞いてクロンが珍しく自ら口を開く。だが、その台詞はヴィオレッタに掻き消された。

 ヴィオレッタは全員の視線を集めるかのようにゆっくりと歩いてロロの前に立つと、その顎に手を添え顔を上を向かせその目をじっと見つめた。


「お子様ね」

「なっ」


 心を読まれていたことに今更気付いたロロは、慌てた様子で視線を外す。


「さ、サイテーだわ! かってに人の心をのぞくなんて!」

「だからお子様だって言ってるの」


 ヴィオレッタは腕を組むと、座ったままのロロを見下すように冷たい視線を向ける。


「アナタね、足手まといなのよ」


 その言葉に、ロロはそのまま硬直した。

 周りの空気も凍り付く中、ヴィオレッタは言葉を続ける。


「今回はたまたまワタシが間に合ったから良かったけど、そうでなければ首が無くなっていたかもしれないのよ。周りの大人が皆、ヒマなお人好しだと思わないで頂戴」


 床を見つめたまま、いつものように言い返すこともできず涙を浮かべ始めたロロを見かねてエルラが口を開く。


「あ、あの、でも私たちはロロ様に助けられましたし、その、」

「そうだ、ロロが居なかったらレイロカの攻撃を防ぐことはできなかった」

「だからなに?」


 ヴィオレッタは棘のある眼差しでエルラとロルフを睨みつけた。


「でもどうにかなったわ、この子がいなくても。そうでしょう?」


 その通りだった。もちろん攻撃自体を防ぐことは出来なかっただろう。ただ、あの時はロロが攻撃を防いだため考える必要がなくなったが、後々考えてみると防御する手立てが全くないという訳でもなかった。

 ランテであれば口先だけでそんなことはない、そんな風に言えたかもしれないが、根が真面目な二人はそれすらできず黙り込む。

 そんな二人に、やっぱりね、そう言うように短い溜息をつくと、ヴィオレッタはロロに視線を戻した。そして、少し前とは一転して、諭すような、優しさを感じるような声色で提案する。


「わかったらおウチに帰るのね。やらなくちゃならない事が多いのだけれど、そうね……今なら送ってあげなくもないわ」

「……やだ」

「賢明ね、そうしたら……ん?」


 イエス以外の答えは返ってこないと思ったのだろう。首を振りながら絞り出すような声で嫌だ、そう答えたロロに、ヴィオレッタは驚き流れるように口にし始めた台詞を止めた。


「やっと見つけたの、お母さんにつながるかもしれない情報を! こんな所で帰るくらいなら最初っからついてきてない!」


 ロロは膝の上でぎゅっと手を握りながら、床に向かってそう叫ぶ。そして縋るような瞳をヴィオレッタに真っ直ぐと向けた。


「今あきらめたら絶対にこうかいするの! 迷惑かけないように頑張るから。わたしも一緒に連れてって!」


 必死なその眼差しに囚われたかのように、ヴィオレッタは動きを止めた。




*****

****

***




 少女は幸せだった。

 お腹いっぱい食べられなくても、欲しいものを手にすることが叶わなくても、たとえ――家族以外の者たちに自分の髪色が気味悪がられていても。


「お姉ちゃん!」

「ローシャ!」


 双子の姉妹だろうか、姿のよく似た、しかし髪と目の色が違う二人の少女が楽しそうに抱き合う。

 一人は髪も瞳も紫色、一人は髪も瞳も焦げ茶色だ。


「具合は大丈夫なの?」

「うん! お姉ちゃんがとって来てくれたお薬が効いたみたい」


 そう言ってローシャと呼ばれた焦げ茶色の髪の少女が笑った。


「そうだ。今日はもう遅いし帰っておいでってお母さんが」


 その言葉を聞いて、紫色の髪の少女は空を見上げる。


「ほんとだ。もうこんな時間だったのね」

「ねぇ、昨日の話の続きをしながら帰らない?」


 薬草を持っていない方の手を引っ張られ、紫色の髪の少女は焦げ茶色の髪の少女の方へ視線を向けた。

 そして、イタズラっぽい笑顔を浮かべると、


「断る理由はないわね!」


 そう言って汚れた手をスカートで拭くと、今度はこちらから妹の手を握り帰路に着いた。

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