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元男の私、異世界で女性になったら男性ハーレムに囲まれました!!  作者: ちぃたろう


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第6話 奴隷商の影と、初めてのキス



 朝の空気が少し冷たく感じた。

 昨日まであんなに穏やかだった村の人々の目が、どこかよそよそしい。

 ……いや、正確には、私とリィナを見る目だけが変わっていた。


 「またあの獣人連れてるのか」

 「最近、村の外れで妙な連中を見たって噂だぞ」

 「……まさか、また狙われてるんじゃ」


 ひそひそ声を聞きながら、私はリィナの手を握った。

 「大丈夫。私がいる」

 「……うん。でも、アリア……」

 リィナの声が震えていた。

 その不安を打ち消すように、私は彼女の髪を撫でた。

 「信じて。今度こそ、絶対に守る」


 その日の夕方、村の入り口でひとりの男が待っていた。

 黒い外套に隠された顔。どこかで見たような――そう、奴隷商だ。

 「久しぶりだな、リィナ。随分と元気そうじゃないか」

 リィナの顔が真っ青になる。

 「やっぱり……来た」


 「おいおい、そんな怖い顔するなよ。ちゃんと金で買ってやったんだ。お前は俺のもんだ」

 男がにやりと笑う。

 私の中で何かがぷつんと切れた。

 「人を“もの”って言うな!」

 剣を抜くと、周囲の空気が一瞬で張りつめた。


 男はわずかに笑って、指を鳴らした。

 森の影から、黒いフードの兵たちがぞろぞろと現れる。

 「……また多勢か」

 「そりゃあ、前みたいに痛い目見たくないからな」


 私は剣を構えた。

 その瞬間、身体の奥から光が広がっていく。

 足元の“魂リンク”の紋章が、淡く輝いていた。


 「リィナ、離れて!」

 「いやっ……アリアと一緒に!」

 リィナが私の手を掴むと、その光がさらに強くなった。


 ――キィィン!


 眩い閃光とともに、風が爆ぜる。

 奴隷商の兵たちが吹き飛ばされ、あたりに土煙が舞った。

 「な、なんだこれは……!」

 『おお~リンクスキル発動確認! “共鳴防壁Lv.2”ですっ☆』

 「神様、実況してる場合じゃない!!」


 でも、そのおかげで敵の攻撃を防げた。

 リィナは驚いたように私を見つめていた。

 「アリア……すごい……」

 「私も、正直びっくりしてる」

 笑いながらそう答えたけど、心臓はドクドクと暴れていた。


 戦いのあと、森の小屋に戻ると、どっと疲れが押し寄せてきた。

 リィナが手当てをしてくれながら、静かに言った。

 「……ねぇ、アリア」

 「うん?」

 「どうして、そんなにわたしを守ってくれるの?」


 その問いに、一瞬言葉を失った。

 理由なんて、最初はなかった。

 ただ、助けたかったから。

 でも今は違う。


 「リィナが笑ってくれると、嬉しいんだ。

  泣いてる顔、もう見たくないって思う」

 リィナが目を見開き、そっと私の手を包み込む。

 「……アリア、わたしも、アリアの笑顔が好き」


 距離が近づく。

 息が触れるほどの距離。

 リィナの瞳が、真っ直ぐ私を見つめていた。

 そして、ほんの一瞬の沈黙のあと――


 唇が触れた。


 驚きと、温かさと、胸の奥に灯るような甘い痛み。

 世界の音がすべて遠のいて、彼女のぬくもりだけが残る。

 (ああ……これが、“恋”なんだ)


 リィナがそっと離れ、頬を赤く染めて微笑んだ。

 「ごめん……でも、ずっと、してみたかったの」

 「……ずるいよ」

 「うん。ずるいの、わたし」


 笑い合ったあと、しばらく無言で寄り添った。

 ただそれだけで、心が満たされていく。


 その夜、私は夢を見た。

 神様がデスクに向かいながら、なにやら液晶を操作している。

 『あれ? 恋愛対象“女性限定”のはずだったんだけど……ま、いっか♡』

 「いっかじゃない!!!」

 夢の中でもツッコミを入れる自分に、少しだけ笑ってしまった。


 翌朝。

 リィナが私の肩に頭を乗せて、眠そうに呟いた。

 「ねぇ、アリア。

  わたし、アリアのために強くなりたい」

 「……リィナが強くなったら、私は負けちゃうかも」

 「それでもいい。だって、アリアの隣にいたいもん」


 その言葉に、胸の奥がじんわりと温かくなる。

 この世界に来たとき、私はただ“女の子同士でイチャイチャしたい”と思ってた。

 でも今は――その先の“想い”を、確かに感じている。

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