第2話:ハーレムの実態と戸惑い
異世界で目を覚ましてから二日が経った。朝日が差し込む森の小道を歩きながら、私は思わずため息をつく。周囲には男性たちがいつの間にかついてきていて、まるで私の周囲を囲む影のようだった。
「……なんでこうなるんだ、私……」
拳を握る。元は男性だった自分の感覚では、「ハーレム」と言えば女性に囲まれるものだったはずだ。しかし現実は違った。目の前には、日々の生活を助けてくれる男性たちがぞろぞろとついてくる。彼らは一応控えめではあるものの、明らかに好意を持って私の行動を見守っていた。
「おはようございます、お嬢様。朝食の準備は私が――」
そう言って、長身の青年が誇らしげに弁当箱を差し出す。彼の視線は真剣そのもので、まるで私がこの世界の王であるかのように振る舞う。
「いや、別にそんな大げさじゃ……って、ああ、これがハーレムか……」
心の中でぼやきつつも、私は不思議と彼らの気持ちが理解できることに気づいた。元男性の感覚のままこの世界に転生しているせいか、男性たちの微妙な心の動きや悩みまで、自然とわかってしまうのだ。
「今日も森の中を偵察してくる。ついてくる者は――」
「はい、私も一緒に行きます!」
青年の一人が手を挙げる。どうやら彼は冒険や戦闘が好きなタイプらしい。心の奥底で「危険だからやめてほしい」と思っているのも手に取るようにわかる。私は深く息を吸い込み、心の中で静かに決めた。
「よし、今日は少し面白いことを試してみよう」
そう思った瞬間、別の青年が小さく口を開いた。
「……あの、僕も護衛としてついて行っていいですか……?」
私は軽く肩をすくめ、にこやかに答えた。
「もちろん。でも、無理に目立たないでね」
彼の心配そうな表情を見て、つい笑ってしまう。これが元男性の感覚を持った私の特権なのかもしれない。誰も傷つけず、でも状況を楽しむことができる――そんな感覚が、少し嬉しかった。
森を進むうちに、私はふと気づいた。この世界の女性は強い。戦士や商人、冒険者として活躍している女性たちが多く、男性は補佐的な立場が目立つ。私の周囲の男性たちも、気は利くが主導権を握るタイプではない。
「……なるほど、この世界は女性が強いんだな」
私の心の中でそうつぶやくと、目の前の男性たちは一層慎重に振る舞うようになった。元男性の感覚があるため、彼らの心理を先回りしてフォローできる。これは不思議と気持ちが落ち着く瞬間でもあった。
その時、遠くの茂みから低く唸るような声が聞こえた。獣人の気配だ。まだ見ぬ森の奥に潜む存在たちが、私たちの行動を静かに見守っている。かつて人間と戦った強者たちの末裔――その圧倒的な力の片鱗を、私は感じずにはいられなかった。
「皆、油断は禁物だ」
自然と私は声を張る。男性たちは少し身構えるが、私の言葉に従い、慎重に行動を開始する。内心では、こんな状況でさえ笑いのタネにできる自分を少し誇らしく思った。
その日の午後、私は初めて一人で森を探索する機会を得た。周囲の男性たちが離れると、なんとも言えない孤独感が漂う。だが、同時に自由な時間でもある。思わず、心の中で拳を握る。
「……女の子同士でイチャイチャしたかったんだよなぁ……」
小さくつぶやいた言葉に、森の木々が静かに応えるようだった。男性ハーレムに囲まれながらも、私の夢はまだ遠くにある。だが、この世界で生きるための第一歩を踏み出した自分に、少しだけ誇りを感じていた。
夕暮れが森を染め、オレンジ色の光が差し込む。周囲の男性たちは私の安全を守りつつ、少しずつ距離を置く。私はその光景を見て、元男性の感覚で彼らの思惑を読み取りつつ、心の中でほくそ笑んだ。
「この世界……意外と面白いかもしれない」
そして、森を抜けると小さな村が見えた。女性たちが市場で活気よく働き、男性たちは少し控えめに補助している。私は元男性としての視点で、男性たちの心理を理解しつつ、女性社会の動向を観察した。
「……さて、明日はどうやって女同士のハーレムに近づこうかな」
心の奥で拳を握り、少し笑う。まだ夢は遠い。しかし、この世界で生き抜くために、私はまずハーレム男性たちとの日常を楽しみながら、女の子同士の理想の関係を探ることにしたのだった。




