第9話 魔物の使い道
「・・・信じられん・・・たった一日で・・・これだけのグレーウルフを・・・!?」
大量のグレーウルフの死骸に、村長は驚愕する。側には、心臓を取り出すべく解体しているジンがいた。
「・・・俺も信じられません。・・・ですが、これは事実です。ジンは、グレーウルフを苦も無く仕留めていました。・・・抵抗する暇も与えず。」
「・・・。」
「村長、あの子はもしかしたら、天才かもしれません!まだ十歳にも満たない子供だというのに魔物を倒したんです!」
「・・・うむ。」
(・・・天才・・・か。確かに、そうかもしれん。・・・だが、どうもそれだけではない気がするな。・・・何故かは分からんが・・・。)
ストロンは、まだ幼いジンの成果を賞賛し、天才だと言う。村長は、その言葉に同意するも、何か引っ掛かりを感じていた。
一方、ジンは、二人の賞賛に恥ずかしさを覚えていた。
(・・・天才・・・か。俺には一番そぐわない言葉だ。)
自分は天才なのではない。それは、ジン自身が一番分かっていることである。これは、あくまで【超人法】のおかげなのだ。だが、そんなことを知らない周りの人間からすれば、ジンが天才に見えるのも無理のないことだった。
「村長!ジンはこんな小さな村で燻ぶらせるのは勿体ないです!この才能を伸ばすべきです!」
「・・・伸ばす・・・か。」
「ジン!お前、絶対に大物になれるぞ!俺が保証する!」
「は・・・はあ。・・・ありがとうございます。」
ジンは、褒めちぎるストロンの言葉に適当に相槌を打ちながらも、グレーウルフの身体から、心臓を取り出していく。しばらくして、全てのグレーウルフから、心臓を取り出し終えた。
「・・・俺が欲しいのは、これだけです。残りの素材は、売るなりなんなりしてください。」
「待て。本当にいいのか?これだけのグレーウルフ、かなりの金になるはずだ。本気でいらないのか?」
「うん。村のために使ってよ。では、村長。俺はこれで。」
ジンは、二人に一礼すると、その場から立ち去るのだった。そんなジンを、ストロンは唖然と、村長は訝しく思うのだった。
「・・・さて、それじゃあ早速始めるか。」
グレーウルフの心臓を手に入れたジンは、焚火を起こすと、グレーウルフの心臓を火で炙る。
(・・・魔物の中では弱い部類に入るが、子供にはこれで十分だ。こいつを食って血肉とし、魔力と身体を強化する。)
魔物の心臓は、魔物が生み出す魔力を帯びている。その影響か、心臓は栄養に満ちているのだ。それを直接喰らうことで、栄養として身体に取り込ませるだけでなく、帯びている魔力も自分の魔力にしてしまおうというのだ。もちろん、自分の魔力ではないので、変換のためのロスが生じるが、マナよりも効率はいいのだ。
「・・・そろそろだな。では。」
ジンは、炙った心臓に齧り付く。その瞬間、ジンの口内に、凄まじい苦みが広がる。
(!に・・・苦い・・・!・・・逆行前に何度か食ったことがあったから、苦いのは覚悟してたけど・・・子供の味覚にはキツイか・・・!)
ジンは、込み上げてくる嘔吐感を堪え、何とか呑み込む。かなりの時間をかけて、ジンは心臓一つを食べ終える。
「はあ!はあ!はあ!・・・こんなにキツイとは思わなかった・・・!これじゃあ・・・訓練の方がマシだ・・・!」
ようやく息を整えることができたジン。だが、まだ心臓はたくさんある。それを見たジンは、苦笑するも、心臓をもう一つ手に取ると、再度食べるべく、炙るのだった。




