第7話 大人からのご褒美
ジンが、【超人法】による修行を始めてから、一年が経過した。九歳になったジンは、今日も子供達と剣の稽古を行っていた。
子供達は、複数人でジンに切りかかるも、ジンは易々とそれをいなし、無力化していく。
「うわ!」
「また駄目か!」
「強すぎるよ・・・!」
「・・・!」
そんな中、ジンに不意打ちを仕掛けるものがいた。それは、マリーだった。マリーは、ジンの意表を突いた一撃を見舞おうとするも、ジンは寸でのところでそれをかわし、マリーの剣を弾く。
「!?」
「惜しかったな。もう少しで、一太刀入れられたのに。」
「・・・自信あったんだけどな・・・。やっぱり、ジンは強いね。」
「そんなことはないさ。俺も危なかった。まだまだ修行が足りないよ。」
「・・・。」
ジンに褒められ、マリーは顔を赤らめる。こうしてジンに褒められると、マリーはいつも嬉しそうな顔になるのだ。
(・・・本当は分かっていたけど、マリーに自信を付けさせるにはこれがいい。・・・それに、この時のマリーは、可愛いからな。)
そして、ジンの方も、そんなマリーを見るのが好きだった。
「お~い、ジン!」
そんなジン達の前に、一人の村人がやって来た。村で一番腕が立つ大人、ストロンである。
「ストロンさん。どうしたの?」
「村長が、ジンに話があるそうだ。一緒に来てくれないか?」
「俺に?何の?」
「それは、行ってからのお楽しみだ。大丈夫。悪い話じゃないさ。」
「・・・分かった。ごめん、皆。俺、行かないと。」
「いいよ。私達は、自分達で勝手にやってるから。」
「ありがとう。」
ジンは、ストロンと共に、村長の家へと向かうのだった。
「村長、ジンを連れてきました。」
ストロンに連れられ、ジンは村長の家に入る。村長の家は、村で一番の大きさで、一目で分かる家である。
「来たか。」
「村長さん、俺に何か用ですか?」
「・・・ジン。まずは、お前に礼を言わなばならん。村のために、いつも獣を狩ってくれて、感謝する。」
村長の第一声は、ジンへの感謝だった。村長は、ジンに頭を下げる。
訓練同様、森での狩を続けていたジンは、獲れた獲物の一部を村に提供していた。結果、村は薬草を売っているだけの時より、若干だが余裕ができていたのだ。
「・・・頭を上げてください。俺は、自分が肉が食べたかったからやっただけです。」
「それでも、村に貢献しているのは事実だ。おかげで、村にも余裕ができた。」
「そうだぞ。俺達でも、あれだけの量の獲物を狩るなんて大変だ。それを、子供のお前がやってくれたんだ。」
「そうなると、お前にも何かしら褒美をやらなければと思ったのだ。」
村長と大人達は、ジンの働きに何かしらの褒美を与えようと思い、今回呼んだのだ。
「褒美なんて・・・俺、肉が食えるだけで十分です。」
「それではわしらの気が済まんのだ。何でもいい。わしらができる範囲で、欲しいものをやろう。」
「・・・。」
村長の提案に、ジンは驚きつつも、好都合だと喜ぶ。
(・・・まさか、村長直々にそんなことを言ってくるなんて思わなかった。でも、おかげ修行のための準備ができそうだ。)
「・・・なら、森の奥の行く許可をください。」
ジンは、喜びを悟らせないように、自身の要求を村長に伝える。
「・・・森の奥に行く許可・・・?」
ジンの要求に、村長は、同席しているストロン共々困惑する。てっきり、お菓子や玩具の類と思っていたからだ。
「・・・何故、森の奥に行きたいのだ?森の奥には、質のいい薬草が多数生えているが・・・魔物の縄張りとなっている危険な場所だ。欲しい薬草でもあるのか?」
「森の奥にいる魔物を狩りたいんです。」
「森の奥の魔物を狩りたい!?」
ジンの目的を聞いた村長が、困惑の表情から一転、驚愕する。
魔物とは、生まれながらに魔法を行使することができる特異な生物である。どんな生物にも、魔力は存在するが、生まれながらにそれを使うことはできない。魔力を感じ取り、引き出す修行を行わなければならないのだ。だが、魔物はそんなことをしなくても、息をするような感覚で魔法を行使できる。もっとも、大半の魔物は、精々身体強化魔法くらいしか使えない。高度な魔法を使える魔物は、限られているのだ。だが、魔法を何も使えない一般人にとっては、脅威であることに違いはない。
だからこそ、魔物は脅威なのである。そのため、森の奥には、大人であっても近付くことはない。近付くこと自体、禁止されているのだ。
「・・・村の近くの森の魔物は、弱い部類に入るとはいえ、大人でも相手にするのは危険だ。お前は、確かに子供離れした強さを持つようだが、魔物には勝てん。魔物とはそういうものだ。」
「俺も、一度腕試しで戦ったことはある。・・・だが、結局勝てなかった。逃げるのでやっとだったんだ。」
「魔物の強さは分かっています。でも、それを承知でお願いしているんです。」
「・・・。」
村長は、魔物の危険性とジンの幼さを理由に、その頼みを拒む。だが、ジンは一歩も引かず、村長を見据える。
ジンの目をを見た村長は、ジンの放つ空気に圧倒される。
(・・・この子は・・・本当に九つの子供なのか?・・・まるで、長い年月を生きてきた人間のように思える・・・?)
「・・・何故、魔物を狩るのだ?肉ならば、兎や鳥で十分だろう。確かに、魔物の方が金にはなるが、危険に見合うとは思えん。何故、危険を冒してまでやろうとする。」
「・・・俺の望みは、魔物の心臓です。」
「・・・心臓・・・だと?」
「はい。俺は、魔物の心臓が欲しいんです。」
「・・・心臓を何に使うつもりだ?」
「・・・それは言えません。・・・でも、俺には必要なんです。お願いします!」
ジンは、深々と頭を下げる。村長は、しばし沈黙する。そして、ようやく重い口を開く。
「・・・分かった。だが、ストロンを同行させることが条件だ。それで構わないな?」
「!はい!ありがとうございます!」
「・・・。」
大喜びするジンと、それを困った顔で見るストロン。そんな二人を見ながら、村長はジンのただならぬ空気を感じ取り、困惑するのだった。




