第33話 ガンツの秘密
「では、お願いします。ガンツさん。」
「ああ。剣聖祭の前の日に取りに来い。ついでに小僧。お前の剣もその時に渡してやる。」
「ありがとうございます!」
二人は深々と頭を下げると、ガンツの店を出て行く。
「・・・ふう。」
ジンとレオンが去った後、ガンツは一人、椅子に腰かけると汗を拭った。ガンツは、顔はおろか身体中から汗が出ていたのだ。これは、鍛冶の仕事をしていたからではない。ジンを見たことが原因である。もし、鍛冶の仕事をしていた後でなければ、気付かれていただろう。
「・・・あの小僧。・・・本当に小僧だったのか?・・・そうは思えんかったな。」
ガンツには、秘密があった。それは、相手の力を見抜くことができる特別な目を持っていること。
生まれながらにガンツは、見た人間の強さや魂の清廉さといったものを見ることができた。これのせいで、人付き合いが苦手になったこともあったが、間違った人間の仕事を受けずに済んだのも事実であり、ガンツはこの目を誇りに思っていた。
今回、レオンにジンの武器を作ってくれるよう頼まれた時、ガンツはいつものようにこの目の力でジンを見た。レオンのことは信用しているし、彼の眼鏡に叶うのなら問題ないと思ってはいたが、念のためにこの力を使った。
だが、ジンを見た時、ガンツは驚愕した。
通常、子供の魂は、余程親の教育が悪くない限り、澄んだ色をしている。だが、ジンの魂の色は、澄んだ色ではなかった。しかし、甘やかされ、自分が世界の中心と思い込んでいる屑な人間の醜く汚い色ではなかった。その色は、長い年月を経て形成された綺麗な色だったのだ。
「・・・あり得ん。まだ十二歳だぞ?それなら混じり気のない澄んだ色のはずだ。だが、あれは何十年も生きてきた人間の色だ。長い人生経験を得て、それでも曲がらず真っ当に生きることを選んだ人間の魂の色だ。・・・どうしてあんな子供がそんな色を?・・・それに、あの小僧、どんな鍛え方をしてきたんだ?」
ガンツが気になったのは、魂の色だけではない。ジンが強さを手に入れるまでの過程にも驚いたのだ。
ガンツの見抜く強さとは、単なる力量だけではない。その強さに到るまで、どのようなことをしてきたのかが漠然とではあるが感じ取れるのだ。
その時感じたものは、人間より頑強で長命であるドワーフの自分でさえ狼狽するものだった。徹底的に自身を痛め付け、追い詰め、それを乗り越えていく感覚だった。その凄惨さたるや、悲鳴を出さなかった自分のことを褒めたいくらいだった。
「レオンが連れて来たんだ。ただ者ではないとは思ってはいたが・・・。あれは、まるで化け物だ。子供の姿をした怪物だ。・・・だが、決して悪意や害意の持ち主ではない。寧ろ、真っ直ぐ生きようとする強い意志を持っている。まさか、あんな子供がいるとはな。・・・面白いじゃないか。よし、俺の名に懸けて、最高の武器を作ってやる!」
ガンツは、ジンのことを大層気に入った様子で、ジンに合った武器を作るべく、仕事場に戻っていくのだった。




