第29話 王都到着
「ふふふ、ジンさんのお話は本当に面白いですね。」
「とても子供とは思えません。」
アレン・ワンダースの護衛を引き受けることとなったジンとレオン。いつでも彼と娘のアリアを守れるよう、二人は馬車に乗り込み、周囲の警戒は傭兵達が行うことになった。レオンは自分も外で警戒に当たらうと言ったが、傭兵隊長がせめてそのくらいはさせてほしいと頼み、このような形での護衛となった。
幸いなことに、あれからドレクのような強者は当然として盗賊の類が現れることもなく、二人の仕事は専ら馬車の中でアレンとアリアとの他愛のない会話をすることくらいだったが。ジンは、逆行前に活躍した英雄達の活躍をアレンジして聞かせた。これが思った以上に好評で、すっかりアリアは夢中になっていた。
「確かに、時折君を子供と思えないことがあるね。どこでその話を?」
「ええと・・・まあ、それは企業秘密で・・・。」
まさか、人生を一回終えて戻ってきたおかげだと言えるはずもなく、ジンは適当なことを言ってはぐらかすしかなかった。
「・・・剣聖様、ジンさん。そろそろ王都が見えてきました。」
(・・・とうとう来たか・・・。王都クレスティア。)
クレス王国の王都クレスティア。建国王クレスの生まれた地で、クレス王国の中心。元々は小さな村だったが、長い年月を経て発展し、現在では堅牢な城壁に囲まれた立派な都市である。
ジン達を乗せた馬車は、城門の前で止まると、兵士達がやって来る。彼らは王都から出入りする人間を調べる門番である。ここを通るためには、身分証か通行証が必要である。それを提示することで、ようやく王都に入ることができるのだ。これは、王都のみならず、城壁に囲まれている大規模な町なら当たり前の手続きである。
だが、彼らはレオンの顔を見た途端、すんなりと通そうとする。
(・・・師匠は顔パスなんだな。まあ当然か。師匠の肩書きを考えれば。)
剣聖は、様々な特権を持っている。その一つがこの身分証や通行証なしの大都市への入場である。剣聖は基本、どんな町でも許可なく入ることができるのだ。
「あ、師匠。ドレクのことを話しておいた方がいいですよ。盗賊の討伐は報告する義務があるはずです。」
「そうだね。あ、君。ちょっといいかな?」
「はい?」
レオンは兵士に、ドレク達の盗賊団を討伐した旨を伝える。すると、兵士は詰め所に一旦戻り、一番偉そうな兵士を連れて来た。この兵士が責任者のようである。
「剣聖様。最近指名手配されたドレクを討伐されたとのことですが、本当ですか?」
「もちろんだ。これが、討伐の証拠だ。」
レオンは責任者に討伐の証明としてドレクの使っていた武器の柄と、切り落としておいたドレクの首の入った革袋を渡す。受け取った責任者は、首がドレクのものか確認するために詰め所に戻る。しばらくして、責任者は慌てて戻ってくる。
「確認が取れました!ドレクで間違いありません!手間を取らせて申し訳ありません!」
「構わない。決まりだから仕方ない。」
「それと、ドレクの首には懸賞金がかけられていました。どうなされます?お渡ししますか?」
「いや、いつものように孤児院に寄付してほしい。」
「分かりました。」
レオンは、ドレク討伐の懸賞金を受け取らず、孤児院に寄付するよう責任者に伝える。それを見ていたジンは、逆行前のレオンの姿を思い出す。
(そうだった。師匠はこうして手に入れたお金を孤児院とかに寄付していたな。だから、師匠の道場は結構貧しかった。他の剣聖達からは馬鹿にされていたけど、俺はそんな師匠を本当に尊敬していたんだ。)
「本当に剣聖様はお優しいですね。孤児院の職員も子供達も喜んでいます。・・・他の剣聖様も見習ってほしいものです。」
「・・・。」
責任者は、レオンを称賛すると同時に、最後に小さな声で他の剣聖達に苦言を呈する。聞こえないように話したつもりだっただろうが、レオンとジンにはしっかりと聞こえていたが。
(・・・他の剣聖はやっぱり酷いのか。師匠が俺の所に来てくれたように逆行前と変わった所も出ていたから、変わってくれていることを期待したが、駄目だったか・・・。)
ジンは、他の剣聖達が自分の知るままであることを改めて知り、残念に思っていた。性格はともかく、彼らの腕は本物で、正しく使えばどれだけ凄いことができるかジンも想像できないほどだった。だが、結局は宝の持ち腐れで終わっているのだと知り、ジンはガッカリするのだった。
「それと、ドレクの首はこの手紙と共にバルトさんの所に送ってほしい。破門したとはいえ、バルトさんの弟子に違いはありません。それに、彼にとって一番期待をかけていた弟子でしたので。」
「分かりました。責任をもって、届けます。」
「・・・あの、門番さん。そろそろ、行ってもいいですか?」
「あ、はい、大丈夫です。長引かせてすみません。どうぞ。」
責任者と兵士が頭を下げると、ジン達を乗せた馬車は王都へと入っていくのだった。




