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意外と知らない北欧神話   作者: アイスの棒
恐ろしい三人の子供達
33/89

31話 巨人の館


一行は戦車に乗り、教えられた道をまっすぐ進むと、やがて大きな館が見えてきた。トールは館の扉を思い切り殴りつけてノックした。まだ怒りは収まっていないようだ。

巨大な扉が開くと、そこは大広間だった。まっすぐ引かれた真紅の絨毯の先には玉座があり、アキ達と同じ大きさのものが腰掛けていた。周りには様々な大きさの巨人達がこちらを見下ろしている。


「ようこそようこそ、巨人の館(ウトガルド)へ。久しぶりだね!トール。それに僕のたった一人の眷属君」

「ロキ!なぜ貴様がそこにおる!」


少女とも少年とも言える子供、悪戯の神ロキが、玉座の上で嬉しそうにクスクス笑っている。トールの怒鳴った声にも知らん顔だ。


「僕は行きたいところにいるんだよ。

さて、この館は巨人と力比べをして勝った者のみ入ることができる。トールが力が強いのは聞いてるけど、それを証明してもらわないといけないんだよねぇ」

「なんじゃと?それならお前を引きちぎってやろうか!」


トールの脅しにロキは嬉しそうに笑った。


「君たちは旅でお腹が空いただろう?最初の力比べは大食いにしよう」


ロキの言葉に、大量の肉が入った皿が次々と広間のテーブルに並べられた。


「よし、最初はアキ、お前がやれ」

「ちょっとトール様、どう考えても無理ですよ。おれがそんなに食べると思いますか?」


トールの目は本気だった。アキは勝敗が見えているものの、仕方なく席に着いた。相手は比較的小柄な巨人だ。ロキの開始の合図で二人は食べ始めたが、開始数分でアキの手は止まった。小柄な巨人は骨もバリバリと食べ進め、最後には皿ごと飲み込んでしまった。


「なんだ、僕の眷属なのに対したことないね。さて、次はそこの女騎士さんはどうかな?」


ロキはリサを指差していった。


「んー、私は走るのが得意だけど?」

「それなら競争するとしよう」


リサの相手に出てきたのは細身の巨人だった。広間を大きく空けて二人のためのコースを作った。


「よし、始め!」


ロキの合図で二人は飛び出した。リサの片眼の眼鏡モノクルは青い光を纏っている。細身の巨人がリサの隣に来た瞬間、剣がキラリと光るのが見えた。しかし、細身の巨人は何も影響を受けず、リサを追い越し走り抜けた。


「またこっちの勝ちだね。女騎士の君はもう少し痩せたほうがいいんじゃない?

トール、君はどうする?」

「わしは酒の飲み比べがいい」


リサは顔を真っ赤にした。別に太ってないだろう。ロキお得意の貶しだ。

トールの言葉にロキは喜んで頷くと、一つの盃を持って来させた。


「これを一口で空に出来るのは相当な飲み手だよ。巨人達は二口で空にする。三口飲んでも残ってたらお笑い者だね」


トールは盃をみた。少しばかり大きいが、普段の飲み方を考えれば簡単に一口で飲めそうだ。トールは口をつけ、ぐびぐびと飲んだ。息が続かなくなったため口を離すと、驚くことにほとんど減っていなかった。


「あれれー?トールは結構飲む方だと思ったけど、僕の勘違いだったかな?」


ロキが煽るのをみてトールは本気を出した。勢いよく息を吸い込んでから、盃を傾けた。しかし、やはりほとんど減っていない。


「トール、もしかして禁酒してる?それならそういってくれれば他のことに変えてもいいよ。三口で飲むのはもう無理でしょ」


トールはロキを無視してがぼがぼと酒を飲み込んだ。これ以上無理なほどに飲み尽くしたが、盃の酒はようやく少し減ったばかりだった。


「最後の一口はなかなかだったけど、巨人達には敵わないね。さて、もう諦めて帰ったらどうだい?君たちはこの館にふさわしくなさそうだ」


ロキは愉快そうで残念そうに言った。トールは我慢できず前に進み出る。


「ロキ!もう一度わしにチャンスをくれ!わしの得意な純粋な力比べをしたい」

「うーん、じゃあトールにはお世話になってるし、最後のチャンスだよ?そこに僕の飼っている猫がいるでしょ、そいつを床から持ち上げるんだ。簡単すぎるかもしれないけど、トールがあんまり凄くないからさ」


アキはこの結末を知っている。トールがどう頑張っても、猫の片足しか持ち上がらないのだ。


「残念だけど、ここでは君の力が十分に出せないようだ。悪いけど帰ってもらえるかな?」


ロキに対して、トールは反論できずに館から出た。戦車に乗り込むと、山羊に人間の国(ミッドガルド)に向かうように告げて、ふてくされ眠ってしまった。他の誰も気づかなかったが、アキだけは後ろの巨人の館(ウトガルド)が幻のように消え去ったのを見ていた。

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