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意外と知らない北欧神話   作者: アイスの棒
恐ろしい三人の子供達
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29話 夜の言葉


凄まじい力が大地を焼き焦がした。魔物達の生命は失われ、人間の国(ミッドガルド)への脅威は去った。

再び出発した戦車の中で、スノリは震えていた。無理もないだろう。予想を遥かに超える力、人間の身には過ぎた魔法を使ったのだ。アキはそんな姿を見て、そばに寄り添い手を握っていた。


「見込み通りじゃのう。流石『祝福の子』じゃわ」

「私びっくりしちゃった。スノリんは可愛い上に強いねー!」


トールとリサは祝杯をあげている。ギュルヴィは複雑そうな表情だ。


「スノリさんのおかげで多くの命が助かったのは事実です。その強力な力はあまり使わないほうがいいでしょうね。狙われるのは間違いないでしょう」


アキは詩人を睨みつけた。そんなこと言われずともわかっている。少女が震えているのが手を伝わって感じる。


「スノリ様、安心して下さい。我々も、オーディン様も貴女の味方です。必ず守りますよ」


クロボは優しく声をかける。少女は小さく頷いた。


気付いた時にはスノリはアキの肩に頭を乗せ、眠りについていた。その姿を見てリサが嬉しそうに囃し立てる。クロボが諌める声が聞こえる。アキもだんだん目蓋が重くなってきた。少し眠ろう。

目が覚めた時、戦車の中は薄暗く、静かだった。皆眠りについているようだ。外を見ると、空は闇に包まれ、夜になっていることがわかった。


「アキさん…」


横から少女のか細い声が聞こえた。眠る前の体勢と変わらず、アキの肩には少女の頭が乗っている。


「どうした?」


アキは体を動かさずに言った。


「私、怖かったです。自分があんな魔法を使ったのが。でも、私はみんなのために出来ることをしたい。それで…」

「スノリはよくやってくれたよ。本当だ、助かったよ、ありがとう」

「はい…」


スノリはそのままアキに寄りかかるように動いた。アキは頰に熱いものを感じた。


「私は貴方のために生きたい。他の何もかもがどうなってもいいです。貴方のためなら私は…」


とても静かな夜だった。その言葉は望んだたった一人だけに届いた。


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