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大都市クァテル


「――ひとつ訊いてもいい?」


その質問に、少女は頷く。


「どうぞ」


「ここは、どこ?」


「ここは『新大陸』に位置する新大陸、クァテルです」


「クァテル…」


やっぱり聞いたことのない地名。

既にここは、僕がもといたところではない。

どこか別の場所なんだ。


「クァテルはこの星でも有数の大都市なんです」


そう言いながら、ウイカは窓際まで歩いてくる。

そして、端から端まで綺麗に引かれたピンク色の遮光カーテンをそっと開けた。

外からは無数の光が差し込んでくる。

もちろんその前に目は閉じていた。

それでも眩しく思うほどに、ソレは輝いていた。

だんだん目が慣れてくると、ゆっくり目蓋を上へ動かす。


「―――!?」


驚きだ。

目の前には、まさに近未来都市と言われるような光景が広がっているのだ。

縦長の高層ビルに、ネオンカラーの交通道路。

空中を行く大型新幹線。

大きく空間を使い、何重にも複雑に絡んでいる。

もちろん地面にも道路はある。

その上で、数々の交通が行き交っているのだ。

しかしこの景色はSF映画の中でしか見たことはない。


「これが、大都市クァテル」


「初めはみんなそれぐらい驚きます」


「いや、だって…これはもう別の世界だよ」


「それほど驚きですか?」


「これは驚かずにいられないよ」


「フフ、そうでしょう」


ウイカは少し嬉しそうに微笑んだ。


「うん。でも、下の道路が遠く見えるんだけど」


「ここ8階ですよ?当たり前です」


「8!?」


「総合医療ヘルス、第2区間の8階です」


「ん…?ん…?ごめん情報量が」


「ああごめんなさい、まだ起きたばかりでしたよね。話は後にしましょう」


「うん、助かるよ」


「では検査からいきましょう。こちらへどうぞ」


「わかった」


ひとまず体を起こす。

思ったより、ダルくはない。

ちゃんとした処置が施されたおかげかもしれない。

具体的にはどこが悪くてどんな治療をされたのかはわからないけど。


その後は彼女の手引きの元、いろいろと検査をした。

中には緑色のスライムみたいな浴槽に浸けられたり、変な液体を飲まされたりと様々だったけど、案外楽しかった。


「――次はこっちです」


「これは?」


「メモリールと言って、ひとの脳を検査できるんです」


ヘルメットのような見た目で、シルバーカラーに塗装されている。

それには何本もの管が繋がれている。

そしてそれはひとつの巨大な機械へと向かっている。

いかにも高性能という雰囲気を出している。

しかもいろいろと要素が多い…

謎のレバーやらボタンやらでとにかくゴツい。


「へぇ…」


「あの、引いてます?」


「いや、ただ、ここにに来てから新単語ばかりだから…」


「あぁ…」


「ごめんね」


「謝るようなことじゃありませんよ」


やさしい。

彼女の丁寧さは、今の自分にはとてもありがたいな。


そんなことを考えていると、先刻のトーナちゃんを思い出す。

あれはあれで強烈だった。


「では、トリトさんはこっちへ」


「あ、うん。…これを頭に被ればいいの?」


「そうです」


言われるがまま、それを自分の頭に取り付けた。


…ガチッ


「うわっ、なにこれ!?」


何やら怪しげな機能が作動している。

がっちり固定されてしまった。


「安全用の固定装置です。少しだけガマンしてください」


「…わかったよ」


「それではいきます」


ウイカがそう言って、高性能機械のレバーに手を掛けた。

いざとなると恐ろしくなってきた。

電流とかながれてこないだろうか。


身構えていると、そんな表情を読み取ったのか、ウイカが言ってきた。


「大丈夫ですよ。すぐ終わりますから」


「ごめんね…」


そうして苦笑いを浮かべた。

次の瞬間、ウイカはレバーを引いて装置を起動させる。



一瞬にして、視界が暗転した。






―――


暗い背景だったのが、一気に光を取り戻す。

白一面の水平線。

上には張り付けたような紺碧(こんぺき)の空。


「ここは…」


初めて見る景色ではないと、曖昧でぼやけた記憶が言っている。


「おじさん、だあれ?」


突然背後から声が聞こえた。

反射的に振り替えるが、そこには誰もいない。

いきなりで動揺していると、すぐにまた同じ声が語りかけてくる。


「ここに人がくるのは久しぶりだけど、どうかしたの?」


周囲を見渡すがやはり誰もいない。

思いきってこちらも話しかけてみる。


「君は誰?」


「私…?」


「うん」


「…何だろう?」


何だろう??


「それは、どういう意味?」


「私は私のことがわからない」


「記憶喪失?」


「そうかも」


顔は見えないけど、すごく悲しそうだ。

正体は何であれ、自分の今までがなくなってしまったというのは辛いのだ。


「自分の名前はわかる?」


「…エイジア」


幸い、名前は覚えているようだ。

そして未だにその姿は見えないままである。


「あなたは?」


「僕はトリト」


「トリト、変わった名前だね」


「そうかな」


「うん」


「ねぇエイジア、さっきから君の姿が見えないんだけど…」


「隠れてなんかないよ、ほら、目の前に」


「目の前…?」


エイジアにそういわれた瞬間、その姿が文字通り目の前に現れた。


「うわっ」


いきなりで、少し大きなリアクションをとってしまう。


「失礼じゃない?」


「ごめん」


腰まで伸びた黒髪に、似合わない紫色の目がこちらをとらえている。

それに、自然と彼女とは初めて会った気がしない。


「もしかして…どこかで会ったことあるかな?」


そう訊くと、エイジアは腕を組んで考える格好をとった。

真剣な様子で、少し左眉が上がっている。

それからしばらくして、顔だけこちらへ向けたあとにこう言った。


「…勘違いだと思う」


「そっか、ならいいんだ」


「どうかした?」


「なんか、エイジアとは昔どこかで会ったような気がしただけだよ」


「トリトは今何歳だっけ」


「僕?…25歳だけど」


「じゃあやっぱり勘違いかな?この1000年でここに来た人はひとりもいないんだよ」


「1000…年?」


彼女の口から信じられないような言葉が飛び出してきた。


「い、今1000年って言った?」


「私、ここに1000年ぐらいいるの」


「比喩じゃなく…?」


「比喩ってなに?」


「うーん…」


「とにかく、嘘じゃないよ。私はここに1000年間閉じ込められてた」


「どうしてそうわかるの?」


「トリトがきたから」


「どういうこと?」


「私が閉じ込められた1000年前に言われたの、いつか君を助けにくるおじさんが現れる。って」


「おじさん…」


「だって25歳はおじさんの年齢でしょ」


「いやいや、まさか…」


ありったけの苦笑いを浮かべてエイジアを見つめた。

しかし彼女は無表情である。


「冗談は顔だけにしてね」


「悲しいこと言われた…」


「そんなに落ち込まなくたって大丈夫だよ」


「…落ち込むよ」


「ねぇトリト、今度来てくれるのはいつ?」


「来てくれるって…もしかして…」


「もう時間だね」


エイジアはさらっとそう言った。

口ではそう言っているが、やはり顔はどこか悲しそうだ。


「でも僕はまだなにも――」


言い終わる前に、その視界はまた暗転した。





――再び真っ暗な世界に戻された。

2話までお疲れ様でした。

作者の文章力的に苦痛だったと思いますが、ここまで来てくださりありがとうございました。

この調子で続いていく予定なので、お手柔らかにお願いしますね!

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