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死神の飼い猫ぷらす  作者: 稲狭などか
13/14

イヌ科の2人

隠し撮りと人海戦術


「え? 浮気調査ぁ?」


 そう言ったのは天道加々美と言う少女だった。木に吊るしたハンモックに寝転がっていた彼女は怪訝な声をあげると、特に深く考えていない顔で欠伸をする。今は放課後だ。部活にいそしむ連中の声が遠くから聞こえてくる。

 まるで犬耳の様にぴょんと跳ねた藍色の髪の毛に、大きな瞳の童顔な女の子だが、一番は妙に短いスカートから伸びる美しい脚が特徴的な子だ。その佇まいは何処か、大きな犬か狼を思わせる。

 学校の中に在る噴水庭園、木々が生い茂りそこにはあまり人が立ち入らない。その所為かちょっとした隠れ家の様になってる。そこはかつてはガラの悪い連中のたまり場だったが、今はみょうちきりんな連中の縄張りとなっていた。

 操魔学園。優等生と劣等生が紅と蒼で色分けされ、明確な差別が学園包みで行われているクソみたいなところだ。そんな学園には何かとトラブルが尽きない。優等生達は劣等生たちをいじめたり、食い物にしたりとやりたい放題だ。だが、魔法の実力は劣等生たちには無い。勝ち目のない人たちは殆どが泣き寝入りをするしかないのだ。

 だが、そんな中でも優等生達を手玉に取り、時には倒してしまう7人の集まりが劣等クラスに現れたのだ。そんな連中が不良連中から卑劣極まりない方法でこの噴水庭園を奪ってからと言うモノ、ここには

困った生徒たちが時々やって来る。


「そうなんだ。俺の兄貴なんだけど……なんだか最近おかしくて」

「お兄さんのお兄さんがリトルフィートして彼女の洞窟探検には不向きになって来たんじゃない? よくあるよ~? それか、真っ白しろすけが彼女さんの遺伝子と悪魔合体したかだね」

「お、女の子がそんな事、いけないと思う」


 男子生徒は少し顔を赤くして顔を逸らすが、加々美は興味がないとでも言いたげに眠ろうとしている。


「ちょ! 起きてよ! 兄貴さ、彼女は劣等クラスの同級生なんだけど! 浮気相手がヤバいかもなんだよ! 優等クラスの女子とコッソリ休日に会ってたんだ! しかも、個室のある映画館で! 今日も兄貴は何も言わないで消えるしさ!」

「あー、もうそれセッしてるね。確定じゃん? なんで私に言うの? 正明に言いなよ? なんやかんやで助けてくれるよ?」

「いないんだよ! 加々美しかここに居なかったから頼んだんだよ!」

「ムフー、私はただじゃ動かないのだよ? 私の要求は無条件で飲むなら聞いてあげる」

 

 加々美はそう言うと、ニヤ―と笑う。


「な、なに?」

「私の命令を何でも1回! 拒否権無しで実行する事! どう? それでも頼むの?」


 男子生徒は苦い顔を一瞬するが、直ぐに返事をする。


「何でも言ってくれ! 俺の兄貴が悪い事は知ってる、でも! 優等クラスとのいざこざはヤバいんだ! 加々美もわかってるだろ!?」


 そう言った彼はかなり焦っているかのようだった。その事情も加々美は察しがついていた。優等生とのトラブルは理不尽にも劣等生側に責任をなすりつけられる事が多い。

 ハンモックから降りると、加々美はその健康的に引き締まった身体をぐーっと伸ばす。そして、男子生徒に顔を近づける。彼は顔を赤くしてギョッとするが、加々美はスンスンを何回か鼻を鳴らす。どうやら匂いを嗅いでいる様だ。


「え? な、何!?」

「君、名前なんだっけ?」

「え? おいおい、同じクラスなのに……水田だよ。水田みずた のぶ。兄貴は水田 裕二。写真なら今出すよ」

「写真は要らないよ。私には見分け付くから、あと、報酬は後払いでね。証拠もバッチリ、もしもの時は止めさせるから。優等クラスの女は厄介だけど、まー何とかなるでしょ!」


 そう言うと、加々美は信が何かを言う前に走り去っていった。人間じゃない速度で消えた彼女は、そのまま学園を取り囲む水路を軽々と飛び越えて街へと繰り出した。

 疾風迅雷の人狼の下らない暇つぶしが始まった。



「加々美? 何処に行くんだろ?」


 走り去る加々美を見ていたのは庭園に向かう途中の京子だった。

 艶のある黒いロングヘアを姫カットにした小柄な女の子だ。少し釣り目な顔つきは何処か狐の様な印象を与えるが、その黄緑色の燐光は抜け目がなさそうだ。


「のんびりしてたし、そんなに急な用事じゃないのかな? でも、なんか心配だな……ハンゾー」

「此処に」


 京子が呼ぶと、彼女の前に膝を着いた忍者が現れた。


「適当に人員確保して加々美を追って。追いつかなくても良いから、ある程度の位置だけ抑えて」

「御意に」


 速攻で返事を返した忍者はドロンと消えた。


「加々美単騎じゃ、トラブル起きるかもだからね。私も、首突っ込むよー」


 そう言うと、京子は抱えていた紙袋を空間に開いた小さなゲートに放り込むと、助走をつけて思いっきりジャンプし加々美と同じように学園の水路を飛び越えて街へと繰り出した。

 ちなみに水路の幅は、25メートルである。

加々美は少しアホなのでトラブルをややこしくする奴です。フットワークと機動力は最高な上に忍び込む天才ですが、面倒になると蹴って来る奴です。

新幹線並みの速度で走り、透明になって、その脚力で蹴りつけてくる。

そんな奴に浮気調査の頼みごとが舞い込んできたお話です。何話か続くよ

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