イヌ科の2人 2
下ネタ純情狼娘
2
加々美は街中で例の水田裕二と優等クラスの女子生徒を見つけていた。どうやら、例の映画館の前で話している様だ。彼女の嗅覚は犬レベルな上に、それなりに耳も良い。自慢の脚でビルも飛び跳ねながら移動できるし、視力も人間よりは優れているのだ。
「見つけたー! 激写激写~! 抜き差し口ドアップ無修正バージョン! 放課後デート映画館で2人だけの4Dセッ〇ス!」
映画館が見えるビルの屋上で最低な独り言を呟きながら、彼女はブレザーの内ポケットからデバイスを取り出す。
デバイスは青い光の板の様であり、まるで機会と言うよりはカードの様にも見える程に薄い。だが、それは通信魔法は勿論の事、情報魔法ネットワークへの接続、高性能念写術式での撮影、視覚拡張と、映像記憶術式、更には映像撮影に立体映像でのスキャンした建造物の見取り図を空間へと出すなど。高性能なものとなっている。
市販のデバイスは魔具であり、通信魔法しか使えないがコレは正明と京子が共に作成した特別性であるため世界には10台しかない。
京子はこれの型落ちデバイスを500万で売りさばいていたが、結構売れたと言う。
加々美はそんなデバイスのカメラ機能をオンにすると、それを放り投げる。すると、デバイスはまるで顔に眼鏡の様な形状に変形して装着される。この状態なら、加々美の意志でズームも撮影も動画撮影もお手の物だ。
「さてさて、ワイルい子誰だ。許さんぞ、性の喜びを知りやがって!」
おじさんの様な事を言う加々美は透明になると、ビルから飛び降りる。音もなく着地すると、透明のまま狼に変身して人を縫うように避けながらターゲットの近くまで行くと人間に戻る。
早速、2人でいる所を何枚も様々な角度からデバイスへと収めていく。
加々美はかなり近くまで近づいて真正面、真横、ローアングルから撮りに撮っていた。女子生徒のスカートの中も撮っていたが、この際は些細な事故として処理しよう。ここには正義はない。いるのは浮気者と性格の悪い女と透明となって盗撮する人狼だけなのだから。
「おい、バレてねーだろうな?」
そう言うのは男が連れていた女だ。
どうやら力関係は女の方が上のようだ。加々美は2人の近くで気配を消してデバイスの録音機能をオンにする。その顔は今にも吹き出しそうになっており、ほっぺは膨らんでいる。本当にいい性格をした狼だが、証拠集め自体は滞りなくしている。
「あ、あぁ……でも、弟がどう思っているか。アイツは勘が鋭いから」
「それをどうにかスンのがおめーの役目だろうが! バレたらその弟ぶっ殺すからな!?」
「それはやめてくれ! なんで、俺なんだ? 俺には恋人もいるのに」
「はぁ? お前さ? 劣等クラス落ちこぼれが、優等クラスのアタシとイイ事出来るって名誉な事だろ? むしろ、その女と別れてくんね? てか、手を回して別れさせるから」
「そんな!」
加々美は首を傾げた。
どうやら、裕二の方が脅されている様だ。しかも、女子生徒の方は加々美も見覚えがあった。優等クラスの生徒は親の七光りで入学する奴も多い。彼女は大手の製薬会社の重鎮を務める男の娘だったのだ。
過去にギルドとして取引をしたアイリスがイライラしながら毒を吐いていた事があった。図分と上層部の人間が選民思想にどっぷり漬かったクズが多かったらしい。殺そうともしたが、直接人を殺した証拠も無かった為に何も無かったがどうやら子供にもそれは継がれているらしい。
「お前はアタシのモンでいればいいんだよ。ほら、行くぞ」
そう言うと、裕二を引きずる様に店員に偉そうに指示をして通されたエレベーターに乗って行く。加々美は一度外に出る。この映画館は4階建ての様で、最上階が個室になっている様だ。
「ほらイクど~」
加々美がその場でジャンプしようとした時だ。
「加々美」
「ん?」
背後からの声に彼女が振り返ると、そこには京子が立っていた。透明化している彼女を見つけるのは同じく人外化施術を施されて、感覚が人間を凌駕しているものぐらいだ。それでも、加々美が本気で姿を隠すと捉えられないのだが。
「あれ、京子ちゃん?」
透明化を解除すると加々美は京子の前へと歩いて行く。
京子はちんまりとした体形に、艶やかな黒髪を背中に流して前髪はぱっつんと切りそろえられたお伽話のお姫様みたいな見た目をしている。釣り目が何処となく狐を彷彿とさせるが、彼女はそのままで狐になれる。
「あの二人追ってるの? 優等クラスの奴が絡んでたら流石に面倒じゃない?」
京子はそう加々美へと質問するが、返事は決まっていた。
「面白そうじゃん! このNTR事件には闇があるよ!」
「そうか……まぁ、止まんないよね。私も協力するよ? 事情は大体ハンゾーで掴んでいるから」
「おや? これまたハンゾーでどうやって?」
「加々美に化けさせて、水田君にもう一度聴いた」
「私が馬鹿に思われるよ」
そう言うが、京子の情報収集能力は仲間達の中でもトップだ。加々美でも現場の状況から証拠を掴むことは出来ても、あの女子生徒の後ろにある親の影響力から裕二の関係者への被害までも食い止めるのは難しい。
「でも、京子ちゃんの力は便利だし。助けてもらおうかな!」
「無理やりにでも介入するつもりだったよ。既に使い魔をここのスタッフに紛れ込ませているから」
「よし! もう捉えたも同然!」
「会話は筒抜けだよ。この2人を取り巻く現状を紐解いて行こうよ」
京子はそう言うと、自分のデバイスを展開した。すると、部屋の中にいる2人の声が聴こえて来た。
(お前はアタシのモンなんだから、抵抗すんなっての……何度もシてんだし)
真顔で京子は音声の再生をストップした。
「あー! 何で!? もう一回!」
「ダメ! ってか! 何を考えてんだろう? ここ、個室があるとは言え映画館でしょ? ホテルじゃないんだからさ! 常識守って欲しいよ!」
「京子ちゃん、映像も撮らないとイケないのですなぁ! ここは私の出番! 今すぐに部屋に忍び込んで4Dセック〇を撮影してくる!」
加々美は頭を抱えている京子をその場に残して、映画館へと姿を消してジャンプする。彼女は4回の窓に掴まる。魔法で足を壁に固定しながら2人の部屋を匂いと音で探し出すと、加々美は窓を少し開けて音もなく狭い隙間にするりと身体を入れて中に入り込んでしまった。
「あぁ! あのスケベ狼! もう! 男の裸は見れないクセに! まともに取れないでしょ!」
ため息を吐いて京子はハンゾー達を撤収させる。
そして、映画館近くの喫茶店でスケベ狼の帰還を待つことにした。約30分で狼は京子の前に現れた。喫茶店にも忍び込んで来たようで、テーブルを挟んで向かい合う形になるが彼女は顔を真っ赤にしてモジモジしている。
「……撮れた?」
「う、うん……ほ、ホントにシてるなんて思わなくて。デバイスを定点カメラにしてたけど、えっと、色々耐えられなくて」
「はぁ、加々美はもう少し後先考えなよ。プールですら男の裸ダメなんだから」
「ごめん……うぅ~やっべーのが撮れた。ぶちまけよう」
「待ちなよ。それだと、男の方も大変な事になるよ?」
「浮気したのに?」
「アレはどっちかと言うと、無理矢理だよ。優等クラスのヤバい奴らは家族までも人質にするからね。誰かにバラしても、バレても彼の弟も彼女も危険に晒されるよ。それに、彼女の方はもう危険かも」
「そうだね、彼女の方は?」
「ハンゾーが守ってる」
「え? 大丈夫なの?」
「冬鬼を渡してあるから。いざとなったら召還してって命令しておいたから」
「うへー、刺客の方が心配だ」
加々美は徐々に調子を取り戻していく。
だが、証拠がとんでもない。公表したら確実に弟の信も彼女も卒倒するだろう。裏切りではなく、玩具にされていたのだ。
「京子ちゃん、どうする?」
「事実を言うのは今じゃなくていいかも。でも、その女は速めに対処しないとね。彼女さんの方が近い内に大怪我するかもしれない。もしかしたら、もっと悲惨な事に」
「仮にさ、今襲撃されたら確実に第三者が介入してるって気が付かれるよね?」
加々美は珍しく理性的な事を言う。すると、京子が苦い顔をする。
「どうしたの?」
「冬鬼が召還された。向こうの刺客、プロレベルだ……殺す気で彼女を襲ってる」
「おまけに私達の介入がバレたと。信君はタイミングバッチリだね! こうなったらスピード勝負! 相手の力を奪ってしまおう」
加々美と京子は席を立って喫茶店を出る。
ゲートを開いて2人は操魔学園前へと飛んだ。
まずは刺客を全滅させなければならない。
それは裏切りか?その答えを探すには若すぎるのか
不浄な欲望の力を追う2匹の王
明るい街に夜の香りが漏れ出す
愛は人間には重すぎた秘宝
そして、小さな赤い光が街に灯る
この怪文書は次回予告だよ。




