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円卓のヴェリタブル  作者: 宗園やや
第九章
273/333

3

防寒装備で身を固めているイヤナは、巨大な木の門を見上げた。


「おおー。ここがサコの家かー」


ここは雪の深い地域なので、真っ白な雪が門の屋根に積もっている。

門の真下に居る時にあれが落ちて来たら圧死しそうだ。


「ここはまだ入り口だ。しかし、雪が積もると門と木の幹以外は真っ白だな。転移魔法で来たから良いが、下から歩いていたら遭難しそうだ」


仲間を連れた転移魔法を使った直後であるセレバーナは、毛糸の帽子とマフラーで完全防寒している。

ここは山の中なので、街中の様な気楽さで来ると泣きを見る。


「入り口ってどう言う事?」


「遺跡に例えるなら、丘と村の境目だな。この門を潜っても、玄関までまだ先が有る。来る者を拒んでいる感じもそのままだ」


ツインテールを下し、妙に量が多い黒髪を背中に垂らしているセレバーナは周囲を見渡す。

麓からここまでは結構な距離が有るのだが、その道のり全てが除雪されている様だ。

さすが格闘道場、身体を使った作業には抜かりがない。


「それはともかく、反応が無いな」


セレバーナも門を見上げる。

分厚い手袋をした手でノックしてから大分時間が立ったのに、誰も出て来ない。

寒いから屋内に籠っているのだろうか。


「玄関まで遠いのなら聞こえないのかな。おーい、こんにちはぁー」


イヤナが大声を出しながら力いっぱいノックしたが、やはり何の反応も無い。

腕を組もうとしたセレバーナは、コートの分厚さに邪魔をされて腕を組めなかった。

だから白い息を吐きながら腕を下す。


「ふむ。無反応だな。除雪されているから、人の出入りは有るはずなんだが」


「やっぱり何かが起こっているのかな」


「足跡が無い、のは雪が降っているから当然だが、除雪がされているのに人の気配が無いのは不自然だ。怪しいな」


「こんな所で推理しない方が良いよ。寒いから。何が起きているかを入って確かめた方が早い」


「それもそうだな」


セレバーナは、門の脇に有る小さな通用口に目を向ける。

前に来た時はそこから入った。

大きな門は少女の力では二人掛かりでも開けるのは無理なので、そちらを開けてみる。


「鍵は掛かってないな。お邪魔しよう」


通用口を潜り、敷地内に入るセレバーナとイヤナ。

風景自体は以前と同じだが、雪が積もっているせいで異常な部分が有るかどうかは分からない。

あえて不自然な部分が有るとすれば、内側にも足跡が無い事か。


「おー。おっきい家だねぇ。アレがサコの家?」


正面に有る巨大な東洋風建築を指差すイヤナ。


「そこは道場と言って、ここに弟子入りした者達が身体を鍛える施設だ。サコの家はこっちだ」


二人の少女は道場の脇に回り、東洋風の木造住居の前に立つ。

玄関である引き戸を少しだけ開けてみる。

ここも鍵が掛かっていない。


「開くのなら誰か居るはずだ。私は声が小さいので、呼び掛けはイヤナがしてくれ」


「分かった。ごめんくださーい」


玄関先で大声を出すイヤナ。

すると、聞き覚えの有る可愛らしい声で返事が帰って来た。


「サコだ!サコが居た!」


イヤナは笑顔をセレバーナに向ける。

黒髪少女もマフラーの奥で薄く笑む。


「うむ。元気そうだな」


半纏を着たサコが廊下の向こうから歩いて来た。

茶色い髪が肩を擦るくらいまで伸びている。


「イヤナ!セレバーナ!どうしたの?なんで?」


目を白黒させているサコに片手を上げて挨拶をするセレバーナ。


「久しぶり。魔法ギルドから問い合わせが来ているはずなんだが、ここからの返事が無い。だから我々が来たのだ」


それを聞いたサコは、玄関脇に有る棚に目をやった。

何も入っていないそれを見ながら首を傾げる背の高い茶髪少女。


「え?問い合わせ?来てないよ?いや、もしかすると下で止まっているのかな?」


「下とは」


「郵便屋に山登りをさせる訳には行かないから、郵便局留めにしてあるんだ。――あ、寒いでしょ?取り敢えず入って」


「すまない」


「お邪魔しまーす」

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