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『試しの二週間』が終わった日曜日も無事に日が暮れ、夕飯の時間となった。
献立はレモン漬けのキュウリサラダと川魚のすり身ダンゴスープ。
シャーフーチは『昼食はいらない』と言っていたが、夕飯はどうなのだろうか。
「呼んでみて、返事が無かったら居ないと判断するしかないね」
「サコの言う通りですわね。では、わたくしが呼んでみましょう」
今回の食事の用意はイヤナとサコがメインな為、手が空いているペルルドールが籐製の椅子から立ち上がった。
円卓に座っているセレバーナも食事の用意を手伝っていないが、心臓の病気に関する本を読んでいるので邪魔は出来ない。
「シャーフーチ!いらっしゃいますか?そろそろ夕御飯ですよー!」
階段下で叫んだ後、耳を澄ましてみる。
するとドアが開く音がした。
「はいはい、今すぐ行きます。ちょっと待っててください」
「あ、いらっしゃいましたね。夕御飯にはもう少し時間が掛かる様ですので、急がなくても結構ですわ」
リビングに戻ったペルルドールは、そのまま台所の方に顔を出す。
「シャーフーチからの返事がございましたわ。下りていらっしゃるそうです」
「分かったー」
鍋を掻き回しているイヤナが頷き、サコが五枚の皿を用意する。
間も無く夕飯の用意が完了し、少女達はそれぞれの席に座った。
しかし数分待ってもシャーフーチが現れない。
「折角のスープが冷めてしまうな。今度は私が呼んで来よう」
セレバーナが立ち上がろうとしたその時、石造りの階段を下りて来る足音が聞こえて来た。
「お待たせしたみたいですね」
布袋を持ったシャーフーチがリビングに入って来た。
その荷物に強烈な興味を示す少女達の視線を受け、薄く笑む灰色ローブの男。
「これは何だろうかと気になっている様ですが、食事を先に済ませましょう。片付けが済んだら集合してください」
「はい」
セレバーナとペルルドールが女神からの恵みへの感謝の祈りを捧げた後、妙にソワソワとした夕飯が始まった。




