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円卓のヴェリタブル  作者: 宗園やや
第四章
127/333

20

客間から出て行った族長がドアを静かに閉めると、控えていた三人のメイドがお茶の準備を始めた。

テーブルにふたつのケーキが並べられる。


「ほほう。ミルフィーユか。頂こう」


セレバーナはソファーに座り、無表情のままスプーンを持った。


「知らぬ場での食事は遠慮しておきますわ」


ペルルドールは絵の前から動かずに言う。


「薬が盛られている可能性か。王女は大変だな。確かに、安全ではないだろうな」


メイド達を見るセレバーナ。

多くのメイドがそうである様に、機械的に働いている。

お茶の準備が整うと入り口近くの壁に並んで待機した。


「どれ。私が毒見をしてやろう」


行儀悪く匂いを嗅いだセレバーナは、自分のケーキと上座のケーキを交換する。

そうしてからミルフィーユを口に運ぶセレバーナ。

モグモグモグ。

紅茶も交換後、香りを楽しみながら啜る。


「ど、どうですの?」


ペルルドールは生唾を飲む。

最果てでの質素な生活のせいで、食に対しての欲が少々強くなっている。


「美味い」


「そうではなくて」


「味におかしなところは無い」


ツインテールを解いたままのセレバーナは、あっという間にケーキを平らげた。


「ふぅ……」


一息吐いたセレバーナは、手を付けられずに残されているもうひとつのミルフィーユに金色の瞳を向けた。


「……」


「……」


微妙な空気が客間に流れる。


「私の体調に変化は無いが、どうしようか」


「し、仕方が有りませんね」


ペルルドールは澄ましながら上座に座り、ここが一流ホテルであるかの如く優雅な手付きでスプーンを持つ。


「ユーリ・ターリ様を疑うのも失礼ですし、残すのも勿体ありませんので、有り難く頂戴いたしますわ」


美味しさに涙目になりながら、行儀良くケーキを平らげるペルルドールだった。

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