生徒会でのお仕事
授業の終わった僕は重い重い足取りで、生徒会室へと向かう。僕たちの学校の校舎はA棟(生徒の教室のある棟)、B棟(特別室のある棟)、C棟(職員室、生徒会室など生徒と教師の棟)と並ぶように三棟(それぞれが四階まで)あって、僕たち二年生の校舎はC棟の三階にある。生徒会室はA棟の四階である。そして、繋がっているのは、A棟とB棟の渡り廊下は三階と四階、B棟とC棟の渡り廊下も一階と二階にしかない(ついでにいうと渡り廊下は棟の真ん中辺りにしかない)。つまり、僕たち生徒が生徒会室へと向かう場合、わざわざ、C棟の二階まで降りてB棟に渡り、そこから階段を登り三階か四階の渡り廊下を通るしかない。何故、もっとも人通りの多いはずのA棟とB棟渡り廊下を一階と二階設置しなかったのか疑問でしょうがない。設計責任者出てこい。
いつも通り、三階から二階まで階段で降りてB棟に続く渡り廊下を出会った先生方に挨拶をしつつ歩き去る。渡り廊下の長さは約7メートルで、窓が通路の両側についていて、放課後すぐの今は、青く雲がほとんどない晴れ渡った空が見えている。春だけど割りと日差しが強いので、日の照っていない方へとよって歩く。とはいえ渡り廊下はどんなに長く見積もっても7メートル程度であり、この行動にはほとんど意味がないと思われる。まぁ、ただの気まぐれである。
「なんで、こんな設計にしたんだろう。」
本当に謎である。遠回りしなければならないようなルートを作ってこの学校の設計者いったい何がしたかったのだろうか。というか、これでよく建設にゴーサイン出したな。僕というか、普通の人なら許可しないぞ。渡り廊下を作るのなら、全部同じ階に統一すれば良かったのに。そうすれば、僕ももう少し楽が出来……ないな。三階に、もしくは四階統一してくれれば出来るけど。統一するのなら、一階と二階だろう。けど、一階と二階だと、降りる行程は変わらないし、上る階段の数も変わらない。残念だ。僕が独り言を口では呟かずに心の中で呟きつつ、特別教室の多いB棟を歩いていると先生を見かけたので声をかける。
「こんにちは、井島先生。」
「おっ、二心じゃないか。悪いが生徒会長に、今日も会議には俺は出席しないと言っておいてくれないか?」
「わかりました。今日もこれないんですか?」
「あぁ、最近仕事がたて込んでてな。よろしく頼んだぞ。」
今の会話からわかる通り、井島先生は生徒会の顧問である。去年(僕たちが生徒会に選ばれる)までは違う先生が顧問だったらしいが、生徒会長が僕の兄に選ばれた時から、僕の兄に顧問になってほしいと言われたそうだ。理由は知らないが、前の顧問ではなにかが駄目だったらしい。
井島先生と別れた僕は、それから誰と会うこともなく、A棟の四階にある生徒会室まで到着する。基本的に生徒会は全員が集まったら、始まるんだけど大抵の場合一番は生徒会長か、生徒会会計、差野 火凜さんだ。僕は必ず三番。そして、四番が積本で最後が商村だ。一年生なのに僕よりも遅いとはどういうことだ。一年生は教室が四階だからだな。仕方がない気もする。因みに、なんで六月に生徒会選挙が行われるのに一年生が生徒会にいるかというと、僕の兄が新入生の説明会で生徒会長としての演説を行った三月の終わりごろに一年生の何人かを見込み、校長に入学式が終わったら生徒会室に来るように頼みこんだからだ。生徒会長が見込んだだけあって皆かなりのハイスペックだったけど、とくに積本と商村は能力が高かった。
いつみても重そうに装飾された生徒会室の扉はきらびやかで華やかである。その代わり、重量はとてつもなく重いが。生徒会室の会議では自動ドアにするという案が出たこともある。主に、生徒会副会長から。僕以外の人は全然重く感じないらしい。僕がひ弱なのか、それとも回りが凄いのか。………。回りが凄いからだな。僕はひ弱じゃない。
「………あれ?副会長?」
「おっ、積本か。」
生徒会室の前で立ち止まっていると声をかけられる。今ついたばかりらしい積本に挨拶を返し、生徒会室の扉を改めて開ける。そういえば、皆魔法で肉体強化してるから、扉が重くないのかもしれない。うん。きっとそうだ。そうにちがいない。それ以外考えられない。
扉を開けて、生徒会室に入ると僕の予想通り生徒会長(僕よりも早く教室を出たのだから当然)と火凜さんがいた。商村は勿論、まだ来ていない。いつも、あいつが最後だからな。二人に挨拶をして、僕と積本は、それぞれ役職によって指定された席に座り、生徒会長に割り振られた仕事を商村を待ちながら行う。僕の場合仕事と言うのは副会長における仕事のことでありその副会長の仕事と言うのは主に、生徒会長の補佐のことであり、つまり僕は、完全生徒会長の肩書きを持つ和宮 一身の補佐をしなければならないのだが、彼がそんなものを普段必要とするわけもない。そのため、普段僕は回りの片付けをしたり、他の人のプリントを代わりに行ったり、書類を先生方に提出したりしている。
「二心、これに印押しといてくれ。」
「あ、うん。分かったよ。」
生徒会長から二枚のプリントを手渡され、僕の机に置かれている判子を取り、書類に目を通して印を押そうとする。え~と、転入生の書類か。転入手続きなどの一部を行わなければならない(こういうのは、普通教師がするものだと思うんだけど、それは僕が間違っているだけか?)ので、一応書類に目を通し、知るべきだと思われる必要最低限の情報を確認する。転入生がこの時期に二人も来るなんて珍しいったらありゃしない。昔の記録にもほとんどなかったはず。一人目の名前は、櫛呂 挿架。女子。もう一人も女子で名前は相乃 琥珀。僕は二人の個人情報をさらっと流し読みした(決して長々と見つめたりはしていない。)だけだが、礼によって礼のごとく、いつも通り嫌な予感がしている。僕のハイスペックではない勘がこれが決して、よい予兆ではないことを保証している。
この勘だけは外れていない自信がある。つまり、生徒会長に巻き込まれるということだ。
………分かっていても、回避出来ない地雷は嫌すぎる。
読んでくださってありがとうございます!!
やはり更新が遅れてしまいました。申し訳ありません……。
ついに一章が終わり、2章?開始です。取って付けたように増えた新キャラをよろしくお願いします!!