丸く、収まりました?
僕の兄はどうしてこう、突拍子もないことを突然言い出すのだろうか。僕にはちっとも理解できない。まぁ、それを言うなら、僕ごときにハイスペックな生徒会長たる、和宮 一身の言うこと、考えること、思うこと、何一つ理解できないといっていいが。
「なんで、お前がバイトするんだよ!?」
「だって、俺がバイトすれば全て丸く収まるだろう。」
「収まらないから言ってるんだよ!!学校に許可はとれるのか?生徒の模範足る、生徒会長がバイトするのか?そもそも、お前を雇ってくれるところがあるのか?よしんば見つかったとして、それまで彼女はどこで暮らすんだ?」
僕は僕にしては珍しく生徒会長に向かって、捲し立てる。普段はこんなことしないけど、少し頭に来た。うちの高校は基本的にバイトは禁止だ。一部の生徒は理由があり、働くことを許されている。けど、生徒会長がバイトをするのは基本的に認められていない。それもそうだろう。生徒会長とは堅苦しく言えば生徒達の代表であり、模倣されるべき存在なのだ。そんな存在が女子一人を養うためにバイトを始めたとなればどうなるだろう。彼のやっていることは間違っていないが、そもそもどこの子かもわからない女の子を養っているのだ。許されはするかもしれないが、生徒会長の座を落とされるかもしれない。僕は彼が生徒会長をやめることには反対なので、これにも反対するしかない。
「………っ。」
「わかったかい一身。ここまで問題点があるんだ。やめておいた方がいい。」
「……な、なら、母さんに事情を説明して……。」
「母さんに頼るのか?どうやって説明するんだ?」
生徒会長は、僕に意見をことごとく否定されてたじろぐ。僕が普段はここまで人を否定しないからだろう。それほどまでに僕は人を否定するということを普段しない。だいたい、どうやって母さんに説明するんだ。異世界から来ました?………あの人なら信じるかもしれない。それでも、たとえ母さんが了承したとしてもこれ以上家に人が居候するのは耐えられない。一人ぶん食費が増えただけで、僕のお小遣い減る。それは嫌だ。
「どうしてそこまで俺の意見を否定するんだ。」
「別に。問題点が多すぎるから。」
「分かったよ。」
先程まで肩を落としていた生徒会長は一転その顔に笑みを浮かべる。何?なんか怖い。
「俺一人で問題を解決する。だから、悪いな、二心。」
「はぁ?何言ってっ………。」
いつか感じた視界暗転。視界が黒く染まる。これは気絶というか、失神というやつか。僕は、前と同じように首もとに来た衝撃に耐えきれず気を失った。
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結果から言えば、僕と兄の無謀な言い争いの勝者は彼ということになるだろう。僕が気絶したあと、彼は今までに助けてきた様々な人間の力を借りて、僕の家にアスアレーノさんを暮らせるように手配しやがった。しかも、僕には一切迷惑がかからないのが腹立たしい。というわけで、僕の家には(僕はちっとも納得していないのだけれど)新たな居候娘が増えることとなった。
その名前はアスアレーノ・シェア。現在住んでいる、既存の居候娘の名前はメリア・シルバース。二人の顔合わせの時に立ち会ったのだが、かなり気まずい雰囲気だった。何しろ、一国の王女様と、一国の女王様だ。どちらとも、相手が異世界から来た人間だと信じるのに数時間かかった。メリアさん曰く、私より身長が低いくせに胸が大きいらしい。アスアレーノさん曰く、自分より美人らしい。僕のような、どこにでもいるハイスペックではない人間からすれば、どちらも美少女なのでそんなこと気にする必要はないと思うが。そして、それは僕が口にするまでもなく兄が口にした。さらりと。なんの違和感もなく。流石、僕の力を一切借りずに全てを丸く納めた男。この程度のことなど朝飯のようだ。普通の男子だったら、どもったりすると思うけどな。それが、普通の男子と生徒会長の違いか。
「結局、最後は全部やるのかよ。」
僕はそう言って一人ごちる。どうして、僕の兄はこう、全部一人で問題を解決使用とするのだろうか。彼だって、ハイスペックで、完全無欠の生徒会長とはいえ、まだ子供なのに。未成年に過ぎないのに、どうして一人でやろうとするのだろう。僕だってだてに彼の弟をやってるわけではないので理由には心当たりがあるが。恐らく、彼に理由を聞けばこんな答えが返ってくるだろう。
「だって、俺がそうしたいから。」
生徒会長は、意外と我が儘なのだ。
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「……………、一年間よろしくお願いしますっ!!」
最近のイベントラッシュせいで疲れた僕は(僕と異世界にいった人は僕以外疲れていない)彼女、イセレグルの魔王、アスアレーノ・シェアさんの自己紹介を机に突っ伏しつつ、窓から吹いてくる風のごとく右から左へと聞き流す。最後だけ辛うじて耳に残ったが、なんてことはない、自己紹介に困ったときによく使われる一年間よろしくお願いします宣言だ。僕からすれば、彼女は居候で、一年間もよろしくお願いされたくはないのだが。このクラスにいるのは一年でも、僕の家からは出ていってほしい。面と向かっては言わないけど。そんなこと言ったら、無理を全部押し通した生徒会長に悪いから言わないし、やらないけど。
「起立、気を付け、礼。」
「「「ありがとうございました!!」」」
委員長の号令によって息のあった、挨拶をして学校が終わる。普通の生徒なら、ここからクラブへいったり、帰宅したりするんだろうけど、僕は今日も生徒会室に向かう。なんでも、今日も会議することがあるそうだ。ここ数日の出来事を思い出した僕の足取りはとてもとても、それはとても重かった。また、異世界について喋り出すんじゃないかと、内心不安で思い足を、生徒会室へと向かわせた。
読んでくださってありがとうございます!!
例よって急展開(文が足りないとは認めない)。つまり、いつも通りですね。これで超微妙な一章完結です……?二章?からもよろしくお願いします。




