魔王城到着
魔王城に向けて歩き始めて、3日がたった。つまり、今僕は魔王さんが根城にしている魔王城の前にいると言うわけだ。魔王城と言えば、背景に黒や紫色で彩られていることが多いと思うんだけど、僕の目の前に存在する魔王城は全然、禍々しくなくむしろ小綺麗で、僕の持つ魔王城のイメージを払拭した。ちなみに、ここまで来るのに僕は一切戦闘を行っていない。回りの人が強すぎるんだよね。敵が現れれば、生徒会長が魔法を纏わせた、なんか格好いい技で敵をズバーン。舞さんが目にも見えない速度で、敵をスパーン。火凜さんが、覚えたての上級魔法でドバーン。僕、やっぱり必要ですか……?むしろ、邪魔な気がする。魔王だって、どうせ僕抜きで勝っちゃうんでしょ。別にいいよ。
「ふぅ。やっと着いたな。さて、ここからはさらに激しい戦いになる。気を引き締めて行くぞ!!」
生徒会長が、皆を鼓舞するように叫ぶ。この辺りは流石のカリスマ性だと言わざる終えない。皆の士気が目に見えて上がる。僕は、そのカリスマ性を目の当たりにしてさらに士気が下がる。なんでだよ。どうして僕は彼と瓜二つの顔を持っているのにそういうカリスマ性はないのだろう。はぁー、鬱だ。やっぱり、生徒会長はハイスペックだな。
「よし、行くぞ!!」
そう言って、僕の兄は魔王城の中に入っていく。不用心にもほどがある。魔王なんだから罠の数個は仕掛けてあるとか考えないのか?いや、あったとしても持ち前のそのスペックで全部、罠の意味をなさないのかな。強すぎて、罠に引っ掛かっても殴られた強者の如く、ん?蚊に刺されたか?とか言って気にも止めないだろう。これだから、ハイスペックの集団には入りたくないんだよな。足手まといになってしまうから。
そんな、僕の不安に微塵も気づかない生徒会長は、ズンズンと奥へ進んでいく。と、ハイスペックでない僕でも分かるほどに濃密な魔力の気配。少し、当てられて気分が悪い。吐きそうだ。回りの皆はちっとも堪えちゃいない。
「ふっ。我の魔力を受け流すとは、それなりに出来るようだな。人間よ。」
「き、貴様は、何者だ!?」
僕が堪えきれなくなって床に崩れていると、天井から声が響いてくる。黒い羽を背中から生やし、その羽を羽ばたかせ宙に漂う。黒いジャケットに黒いジャージだ。ずっと待ってたのかな。お勤めご苦労様。あと、僕全然大丈夫じゃないよ。それなりに出来ないから。
「我が名は、シルケーズ・クォース・エルバンズだ。魔王様をお守りする護衛隊の一人だ。魔王様の敵となりうる貴様らを、排除する。」
シルケーズなんとかさんは、生徒会長に向かって降下してくる。そして、生徒会長は生徒会の扉など遠く及ばない重量があるはずの鎧を着ながら、普段と変わらない速度でその攻撃を回避する。剣を構えた生徒会長はその無防備な背中に一撃を決める。背中から切り裂かれたシルケーズなんとかさんは、大きな傷を負いながらも、なんとか立ち上がる。むぅ。強いな。
「くっ。我の攻撃を回避しつつ一撃を決めてくるとは……。それなりに出来るようだな。だが、これで終わりだ!!」
シルケーズなんとかさんは叫ぶ。なにやら、魔力を込めて、凄い魔法を放とうとしているようだ。だけど、彼の前で、生徒会長の前でその選択は間違いだった。
「遅い。」
勇者の抜刀された魔法剣は、シルケーズなんとかさんの胸を無情にも貫く。状況を理解できないシルケーズなんとかさんは、大きく吐血し、引き抜かれた魔法剣の方向へと倒れ、気を失う。まだ、気を失っているだけだが、このまま放って置けばすぐに死ぬだろう。
「それは、困りますね。」
生徒会会計の火凜さんがボソッと呟くと、なにやら呪文なようなものを唱える。その内容の一部分も僕には理解できなかったが、彼女がシルケーズなんとかさんを助けようとしているのは分かった。生徒会長も、流石にその年齢で人間の形をしたものを殺すのは忍びないのかなにも言わない。治したとしても、しばらくは気を失ったままだろうしな。しばらくして治療が終わり、生徒会長は目の前にある階段を見据え先へと進む。
魔王城二階。
やはり、外見と同じように埃ひとつない、魔王城と言うのは違和感を感じてしまう。魔王城と言う言葉に似つかわしくないその城の内部には魔物が存在していない。何故だろうか。これも違和感を感じる。なんと言うか、異世界らしくない。
「ん?どうやらシルケーズがやられたみたいだな。俺様の出番か。」
そんな台詞と共に登場してきたのは、下半身が馬で、上半身が人と言う、ケンタウロスのような生き物と言えば伝わるだろうか。屈強な筋肉はよく鍛えられているようで、腕から筋肉が盛り上げている。気持ち悪い。なんで僕はここまで描写したんだろう。ケンタウロスで止めておけばよかったと切に思った。
「ふむ。」
彼を見て、舞さんが一歩前へ出る。
「君の相手は私がしよう。」
「ちょっ。舞さん!?」
僕は心から動揺する。なんで彼女が戦うんだよ。そんなの全部生徒会長に任せておけばいいのに。僕たちが戦う理由がないよ。
「久しぶりの強者の匂いだ。何、私は負けん。さっさと先に行ってくれ。」
なんでだよ。どうして、そんな笑みが浮かべれるんだよ。どうしてそんなに戦闘を愉しそうに迎えれるんだよ。僕には理解できない。彼女は僕に、とびきりの笑顔を向けると、名も名乗っていないケンタウロスに突っ込んでいった。生徒会長と、火凜さんに引っ張られ、僕は三階へと進んだ。
読んでくださってありがとうございます!!
ついに魔王城到着!!短いですね。次回もできるだけはやく投稿したいです。よろしくお願いします。




