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和風異世界いかがですか  作者: 真打
第十六章 不落城夏の陣
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16.1.不落城夏の陣①


「ねえねえ、壱成~」

「……なんでございまするか?」

「今って夏?」

「夏です。暑くて敵いません」

「へ、へえー……」


 じーわじーわとセミが鳴き、強い日差しが照りつけているのだが……。

 旅籠にとっては涼しすぎる夏であった。

 確かに暑いといえば暑いのかもしれないが、現代日本は四十度近くまで気温が上がる。

 だがこの世界は温暖化が進んでいないのか、気温も精々三十度くらいなのではないだろうか。


 この温度で苦労しているのは雪傀儡だ。

 皆で寄り添って氷を作り、体を冷やして維持することに集中している。

 氷進が強くなったことで氷の家屋を作ることができ、今は全員がその中に入っているようだ。

 今までは洞窟の中に引きこもるしかなかったとのことなので、随分体の維持が楽になったらしい。


 しかしこの様子だと、夏に雪傀儡は運用できそうにないな。

 氷も溶けちゃうし、機動力も確保できなさそうだ。

 クーラーの代わりとして部屋に居てもらうくらいがちょうど良さそう。


 そう胸のうちで呟きながら、縁側に寝転がる。

 狸の襲撃以降大きな戦いは起きず、地の利を得るためにやって来た妖怪たちとの子競り合いが続いていた。

 私もその現場である傀儡城で指揮を取り、すべての鬩ぎ合いで勝利を収めている。


 黒霊城は襲撃などが皆無らしく、割りと平和に暮らしているようだ。

 しかし案山子夜から兵力増強の申し出があったな。

 そのため異傀儡衆を壱成に頼んで派遣し、黒細と曲音を常駐させている。

 しかし現在は傀儡城での小競り合いが頻繁に行われているので、兵力はこちらの方が多い。


 とはいえ黒細率いる黒霊衆は不死身。

 何かあったとしてもそう簡単にやられるような奴らではない。

 一応異傀儡衆の母体も多く送り込んでいるので、何かあれば数を増やす事ができるだろう。 


「にしても襲撃が多いな……」

「狸の兵ですが、その殆どが幻影でありまする。しかし本物も混じっており油断ができません」

「術返しを使えるのが一人だけだからなぁ……。打ち消しの術を持つ異形がどこかにいればいいんだけど……」

「名付けで開花するかもしれませぬな」

「だったらいいなあー」


 まぁ、ここが今の異形たちの弱点だ。

 致し方ないとはいえ、何かしら幻術を見破る術が欲しいところ。

 とりあえず今は我慢するしかなさそうだ。


「旅籠様、壱成。敵襲です」

「またー?」

「陰影、兵力は」

「十五」

「私が行きまする。旅籠様はここでお待ちを」

「気をつけてね」


 颯爽と塀を乗り越えて消えていく壱成の姿を見送ったあと、再び縁側に寝転がる。

 もうそろそろ狸たちを倒しに向かってもいい頃だ。

 ここまで小競り合いが続くと人間の領地に手が出せないので、本腰を上げることにする。


 だが……少し気になることがあった。

 月芽と案山子夜についてだ。

 二人は私に隠れて何かしている事はわかっているのだが、結局何をしているかは把握していない。

 時々困った様子を見せる月芽は、なにか悩んでいるようで口に出せていないように感じる。

 一方案山子夜は普段通りではあるものの、月芽と同じく言い出せないようで時折唸るのだ。


 これは直接聞いた方がいいのだろうか?

 それとも待つべきなのだろうか?

 個人的には二人から話をしてくれると嬉しいのだが……。


「ま、もう少し待つか~……」

「失礼しますぞ」

「お」


 背後の襖が開き、白い蛇がぬるりと入ってきた。

 真っ白に輝く鱗は夏の日差しも相まって宝石のように見える。

 美しく艶のある髪の毛が風で揺れると、ほのかに涼しさを感じる冷たい匂いが漂ってきた。


魔蛇(まろち)さん、いらっしゃい」

「さん付けなど不要ですぞ?」

「言いやすいんだよね~」

「左様ですか」


 魔蛇……いや、蛇髪といった方が分かりやすいだろうか。

 団三郎の妖術を見破ったが力を使い果たして眠っていた。

 だがつい最近目が覚めたので、褒美として名前をつけてあげたのだ。


 姿こそあまり変化はなかったが、使える異術が増えたようで戦闘の補助に関しては右に出るものはいない。

 完全なるバッファーだ。

 結界術もお手のもので、人間の巫女に負けないほどのものを作れるらしい。


 だが回復が遅いらしく、連戦は不可能であると最初に教えてくれた。

 つまりMP的な回復がゆっくりということなのだろう。

 妖術の妖力を使うならば、異術は異力とでも呼んだ方がいいだろうか。

 なんにせよ弱点の開示は有難い。


「んで、どうしたの?」

「あの二人からの説明はありませぬかな?」

「ないね。なにか言おうとはしてるんだけど、戸惑ってる感じがする」

「待たれますか?」

「ううーん……次の戦いは近い。狸をそろそろ潰しちゃうつもり。それが終わったら、さすがに私から聞こうかな」

「それがよろしいかと。では、狸討伐に向けて軍議でも開きますかの?」

「そうするか~」


 腕を振るって勢いをつけ、上体を起こす。

 縁側に胡座をかきながら魔蛇に向き直った。


「敵の位置は?」

「今までの小競り合い、ただ敵を退けていただけではありませぬ。攻めてくる方角を読み、本陣の目星はとうについております」

「あ、ついてたの?」

「……お伝えしたはずですが……」

「あれぇ……?」


 ごめん覚えてない寝てたかも知らん。


「こほん……。なんにせよ、攻め落とせます」

「よっし、そんじゃやりますか」


 パンッと膝を叩いて立ち上がる。

 重鎮たちを召集して本格的に会議をするぞ、と宣言しようとしたところで……。


「旅籠様ああああああ!」

「んなになになになに!? どうした楽!!」

「ご報告! 黒霊城に人間が攻めてきております!」

「今!? っかーしゃあねえ! 魔蛇さん兵をまとめて!」

「御意」

「楽は月芽探してきて! 私も外に出る!」

「了解しましたあ!」


 急に忙しくなったな!


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