第十八話 裏切り者の蜂起
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ルシタニアの王都を大地震が襲ったのは十年ほど前のこと。
大地震がきっかけで、深刻な経済的危機に陥ったルシタニアを立て直したボンパル候は、強引な政治改革を行う人物だ。
マリアルイーザ女王の父となる国王ジョゼは、ボンパル候の後ろ盾となり、ボンパル侯は影響力の大きい貴族を王の威光を使って排除。国教であるコリント教をルシタニアから追放し、教会が持っていた支配権と莫大な財産を奪う事に成功した。
その後、まもなくして国王ジョゼが死去した為、マリアルイーザが女王の地位に就いた。以降、ボンパル候の独裁は終焉を迎え、教会はルシタニア国内で復権をし、ボンパル候は政治から遠ざけられる事となったのだ。
女王が大嫌いなボンパル侯は他の高位貴族と同じようにコンドワナ大陸へは渡らなかった。メインヒロインであるベネディッタの父親となるボルボーン男爵の後ろ盾となっていたのがボンパル侯。
殿下の暗殺に関わったという明確な証拠は何も残されていなかったけれど、このボンパル侯がボルボーン男爵の後援をしていたということは、ジョゼリアン第一王子の暗殺に手を貸したと同義であると考える者も多いのだ。
「五千?五千の軍が、カルダスに向かっている?」
「何故エスパンナの王都マデルノに居るはずのメロヴィングの軍が、ルシタニアに侵入しているんだ!」
ホセとサラマゴ警部が驚くのは当たり前だ、ここからマデルノまで何キロあると思っているのだろうか。
「コーランクールか・・・」
ペリグリンの一言にヴィオは顔を顰めて見せた。
「コーランクールが向かったのはボンパル領だったのか・・あそこからエスパンナの国境は遠いが、近隣の領主は全てボンパル侯の支配下にあるも同じ」
「密かにメロヴィング軍を国境を越えさせて侵入させたのか?」
部下は敬礼を一つすると、滑らかな口調で報告を述べた。
「ボンパル領はエスパンナとの国境を開放、皇帝陛下直属のメロヴィング騎兵2千に、ボンパル領軍の騎兵1千、歩兵2千が加わり、総勢5千の軍となって南下、カルダス領へと進軍しております」
「王都へ連絡は?」
「すでに送っております!」
船を使って海側から攻めて来られないメロヴィングとしては、どうしてもエスパンナ側からの侵攻を余儀なくされる。
エスパンナの王都マデルノに皇帝の軍20万が集結し注目を集めている中、一部の部隊を隠密裡に動かす事など簡単なことだろう。カルダス領にも領主軍なるものは存在するが、いくらかき集めたところで総勢500にも満たない。そんなところへ五千を当ててくるというあたりに、コーランクールの本気度が伺える。
カルダスを通過させれば、王都は敵軍に背後を取られる形となる。
雪崩を打ったように急襲すれば、王都を陥落させるのも容易いとボンパル侯あたりが考えそうな事だ。
「ヴィオ様、私たちにも何か出来る事はありませんか?」
敵国はこの教会にもスパイを司祭として紛れ込ませていたようだけど、これを監視し続けてくれたのが、白髪、細身で善良そのものにしか見えない司祭長となる。
「司祭長様、ありがとうございます。まずは民を移動させなければ」
「すでに準備ができておりますよ」
教会の鐘が高らかに鳴り始めた。緊急時は教会の鐘が合図となるように、ルシタニアの民には知らしめている。
「神に仕える身ではありますが、血が騒ぎますなー〜」
司祭長が腕まくりをしながら笑みを浮かべた。
教会がボンパル嫌いは当たり前の事であり、教会の権威を失墜させようと常に画策するボンパル侯とメロヴィングの皇帝は、ひとまとめにして排斥したいと願ってやまないところがある。
「動ける者はオビドスへ、動けぬ者は領主館へ移動させるようにカルダスの民へ通達してください!住民の避難が済み次第、司祭たちは避難所、または領主館へ逃げ込んでください」
ルシタニア国内に数々の避難所を作ったけれど、城塞都市オビドスが近郊にあるが為に、カルダスの近くに住民用の避難所が存在しない。
ちょっと遠くまで移動するか、近くで危険な領主館へ移動するかは本人たちの判断に任せる事にした。
「ホセ、鉱泉病院で動ける奴らは領主館へ、動けぬ奴らはそのまま籠城するように言っておいてくれ」
「了解です〜」
「警部は、領主館に集めた憲兵の取りまとめをお願いします」
「わかりました!」
「ヴィオ、僕はどうしたら良いんだろうか?」
ペリグリンが、困り果てた様子で問いかけてくる。
ペリグリンさんをどうするだって?
「ペリグリンさんって言ったら、野砲の指揮しかないでしょ!」
「その野砲がこの街にあるようには思えなかったんだけどね?」
「いや!ありますよ!だってカルダスは位置的に重要拠点とも言える場所ですからね!」
ヴィオはペリグリンを見上げると、胸を張って笑って見せたのだった。
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