第二話 私はレイチェル
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はぁい!私、レイチェル・ワトソン!
子爵家でメイドとして働いていたんだけど、休暇を取って実家へと帰る途中で誘拐に遭い、祖国ブリタンニアからルシタニア王国まで運ばれてきてしまったのぉ。
奴隷商人の暗躍とやらでぇ、アルジェイーナへ売り飛ばされる所だったんだけど、ルシタニア陸軍の人が船までやってきて助けてくれたの!
女の人なのに男装していて、
「私はヴィオ、ルシタニア陸軍フォルハス将軍補佐、軍部階級は少尉です、あなた達を救出しに参りました」
と自己紹介した人が要注意人物です!
たまたま任務でルシタニアに入国していたというペリグリンお兄様は、どうやらこの要注意人物がとっても気になっているみたいなの!
ペリグリンお兄様というのは、私の母が乳母をしていた子爵家の御子息様で、兄と同じ年という事から、私はペリグリンお兄様って呼んでいるのぉ!このペリグリンお兄様、背も高く、筋肉がキチッとついていて、精悍!って感じで顔整っていて、結構人気があったりするの!
アーサー・ウェストウィック閣下?の秘蔵っ子とか呼ばれたり、インディナの戦線で活躍したとかでぇ、ルシタニアでの戦いでも、とっても活躍したっていうお話を聞いています!
女性に人気がある割にはすっごい素っ気ないペリグリンお兄様は、使用人たちから影で『実は男色なのでは?』とか言われているの。だって、本当に、彼女さんとかお屋敷に連れて来ないんだものぉ。
すっごい若いうちに戦争に行っちゃったから、好意を持つ対象が軍人さん?男性?みたいな?とか言われてたんだけどぉ、私はピピンッてきちゃったんだよね!
ペリグリンお兄様はヴィオ(私はちびっこ将校とも呼んでいる)のことが好き!
だけどぉ、お兄様は男の人が好きなのでしょう?
お兄様はヴィオの事を男の人だと思って好きなのかなぁ、それとも女の子だと分かった上で好きなのかなぁ。もしかして、女の子なのに男と勘違いして好きになっているとか?
ちょっと考えただけでパニックになりそう!
この問題は早いところ解決しないと頭がおかしくなりそうだわ!
「現在のルシタニア王国はメロヴィングの間者がウジャウジャいると考えて欲しいです、だから、なるべく人の目には触れず、隠密理に北へと向かいたいんですよね」
荷馬車の上に地図を広げていたヴィオは、ルシオ少年やお兄様と何か話しているみたいだけど、とりあえず今日はここで野宿をするって事らしいの。
倉庫の床で寝たり、船の床で寝たり、教会の床で寝たりしてきたけど、今日は土の上に寝ることになるのね!
夕焼けは綺麗だし、空には雲一つないから星空を眺めながら寝るわけね!ちょうどちびっ子将校さまがこちらに歩いて来たから質問してみることにするわ!
「あのぉ、ヴィオ様、一つ質問してもいいですかぁ?」
「はい?」
「ヴィオ様も女性じゃないですかぁ?なんで女性なのに、男性の格好をして、武器を持って軍に所属とかしているんですかぁ?」
「ちょ・・」
慌てたようにヴィオは私の手を取ると、小走りで移動を始めたのでした。
ルシタニア王国は北の方は山が連なっていて、真ん中の方は坂が多い台地が多くって、南に行けば行くほど平原が広がっていくっていうような土地みたい。
南部は背丈の高い幹が太くて大きな木とか育ちづらいんですって。中央が穀倉地帯で、海の近くになるほどコルクの木の栽培が増えていくみたい。
この辺りは坂が少しずつ増えてきて、牛とか飼っている酪農家がポツン、ポツンと建っているの。
もう少し行けば小さな町もあるんだけど、今日はここで一泊して、明日も同じように北へ、北へと進んで行くそうです。
「実は女だっていう事は大っぴらには言っていなくてですね」
皆んなから少し離れた場所まで来たヴィオは私の両手を掴みながら言い出した。
「出来れば大っぴらに言わないでくれるとありがたいなあって」
「なんで言わないの?」
「いやーー、軍って所詮は男社会でしょ?」
「男社会?」
え?よくわかんない。
ヴィオは短く切った髪の毛をガリガリ掻きながら言い出した。
「自分、十歳の時には少年兵として軍に入っていて、まあ、色々と訓練とか受けてはみたんですけど、なんていうのかな、ルシタニアって女王様の国なんで元々、女性騎士とか居たには居たんですけど、近代ではめっきりその数が減ったっていうか、絶滅危惧種的な扱いになっちゃうんですよね」
「うん」
「それで、まあ、男って事にしておけば問題が減るっていうか、鬱陶しくないっていうかで、ヴィオは少年兵だからね!って感じで無理やり押し通しちゃってる感じなんですよね」
そうよねえ、メイドの中に一人、メイドの格好した男の人がいたとして、メイドの格好をしているのに男を主張されても困っちゃうわよねぇ。もしも、メイドの格好をして同じように働いているとして、例え男であっても、自分は女なんですよ?みたいな感じにしていてくれた方が、周りは受け入れるかも〜。
「わかる!その考えはわかります!」
「わかってくれます?」
ヴィオはホッとした顔を見せた。
「そんなわけで、少年兵だと思って頂ければ幸いです。まあ、女子特有の問題については早急に対応できますので、そこの部分は気にせず声をかけてくださいね」
「わかりました。でも、一つ質問なんですけどぉ、ペリグリンお兄様は、ヴィオが女性だっていう事は知ってるんでしょうか?」
「いや、どうなんだろう?」
どうなんだろうってなんだろう?
「自分はただのアシスタントですし、お互い詳しい素性についてなんて話したことなんてないんですよね。自分はヴィオで少年兵で、みなさまが戦闘するのを潤滑にするためのサポートをするって立ち位置で接している関係で、性別については特に・・」
ええ?ペリグリンお兄様は気にしている感じなのに?まさかの脈なしなの?相手にされてないのかしらん?
「ペリグリンお兄様はとっても気にされているように思うんですけどぉ?」
「ああ、去年の戦闘でも非常にお世話になりましたからね」
ヴィオは私の手を両手で握りしめると、
「もしかして心配になっちゃったんですか?」
と言って、両目をウルウルさせているの。
え?一体どうしたの?
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