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【改稿版】 悪役令嬢のそのあとは  作者: もちづき裕
第一章  悪役令嬢編
33/152

第三十二話  愛の意味

お読みいただきありがとうございます!よろしくお願いします。

虐待を受けていたヴィトリアが、王宮で保護された後のこと。


「ああそう!なるほどね!家でも長年虐げられ、王宮で保護された後も駒のような扱いを受け、愛情を与えられる事のなかった君は、絶望的な孤独感と焼けるような焦燥感、それと自己承認欲求の塊となって悪役の道を進み始める事になると」


 ジョゼリアン殿下はそう言ってヴィトリアの顔をマジマジと見つめると、腕を伸ばし、包帯だらけのヴィトリアの頭を抱えこむようにして抱きしめながら、

「ヴィアはかわいいねえ、なんてかわいいんだろう、あんまりかわいすぎて愛おしさが止まらないよお」

と、わけが分からない事を言い出した。


 ジョゼリアンは本当に変わった人だった。

「承認欲求を満たすには、こういう触れ合いと声かけを繰り返し行う事が重要だって父上が言っていたんだよね」

「いや、だけどそんな洗脳必要あります?私、生まれ変わる前の記憶があるせいか、そこまで誰かに愛して欲しいなんて思ってないんですけど?」


「今は思ってなくてもいつかは思うかもしれないじゃない?」

「言葉だけでそう言われても、中身が伴っていなかったら意味がないんじゃないですかね?」


「中身とかそんなもの関係ないらしいよ?」

「はあ?」

「何回も言う事に意味があるらしい」

自信満々に言うジョゼリアンの意見に全く賛同出来なかったけれど、

「確かにね、お金がかかるわけでもなし、そんな言葉一つで悪の道に進まずに済むのなら、いくらでも言ってあげたらいいんじゃない」

vという王配フェリペ様の一言で全てが決定した。


「ヴィア、愛してるよ」

「ヴィア、可愛い」

「ヴィア、今日も綺麗だね」


 包帯ぐるぐる巻きの時から始まったこのお遊びは、飽きる事なく続けられた。婚約者のアルフォンソも、

「ヴィア、愛してるぞ」

と、言っているけれど、愛してる=挨拶みたいなものだから中身がすっからかん状態だ。


「アルフォンソ殿下、私も愛してるよー、今日も、明日も、すっごく愛してるーー」

「かっる!言葉の重みなしだな!」


 そう、まめまめしく言い続けると、言葉の重みはカスッカスになるんだよなあ。

 でも、いいのではないだろうか。

 罪の子だ、忌子だ、お前は存在すべきではなかったんだと言われ続けるよりかは、よっぽどまともで素晴らしい。


 そうやって雲よりも軽い言葉遊びを続けていた二人だったけれど、

「愛してるよ」

鏡の間で抱きしめられたヴィトリアは、アルフォンソに耳元で囁かれた時には、ゾクっと来てしまったのだった。ゾクゾクって!さすがメインの攻略対象者!


「私だってヴィアの事を愛してるわ!」

エマヌエラ様がそう言って抱きついて来なかったら正気に戻れなかったかも!ヤバイ!ヤバイ!ヤバイ!


 扉の前でヒロインを間に挟んで立っているペドロとディオゴがこっちの方を見て一つ頷いた。時間ですよね?船の出発もありますものね。もしかしたらもう生きては会えないかもしれないんですもの、たっぷり名残惜しみながら、アルフォンソ殿下とエマヌエラ様に別れを告げた。


 まさか敵軍が迫っている中で、婚約破棄と断罪宣言という爆弾を落としていくとは思わない。舞踏会場の方は相変わらず混乱し続けているようだけど、断罪をくらったヴィトリアは舞踏会に参加したそのままのドレス姿で近衛騎士に誘導され、王宮を抜け出した。


「ヴィトリア様、一度、こちらでお着替えを済ませて頂きます」


 馬車が森の中で止まった。貴族の別荘といった様子の瀟洒な屋敷前で馬車を止めた近衛兵が扉を開き、エスコートするためにこちらの方へ手を差し出した。


 女王様の差配により、ヴィトリアは、王妃の直轄領でもあるカルダスを目指すことになる。王都リジェには複数の間者の目がある為、フォルハス公爵邸へは戻らず、出産を終えたリーニャとは二週間後、北部の港で合流する予定である。合流後はブリタンニア海軍の船でブリタンニア王国へと渡り、ヴィトリアの祖父であるウィンドウッド伯爵の庇護を受ける事は決まっており、向こうでも新生児を受け入れられるように準備を整えているのだった。


 ブリタンニア国内でもルシタニアと同じように、皇帝に恭順を示すか戦うかで議会が揉めており、メロヴィングと戦う気満々のフォルハス将軍の妻子という立場は非常に危険なものとなる。


 あくまで中立の姿勢を示しているウィンドウッド伯爵がイーリャとその息子を受け入れるっていうのは立場的にまずいのだが、

「中立の立場って言っても、王はアレクサンドルが大嫌いだし、王は戦うって言っているんだから、我が家は結局は王の意思に従う事になるだろうから、フォルハス将軍の妻女を保護する事に何の問題もないでしょう」

と、ヴィトリアの祖父は軽い調子で言っていた。


「対外的には人質扱いにもなるしねえ」

 ブリタニアとしてはルシタニア王国がメロヴィングに寝返る事を危惧しているため、将軍の愛妻を保護するという事は色々な意味でアリなのだろう。


「お嬢様、こちらにどうぞ」


 まずは着替える為にと、2階の部屋へ案内された。

 小さいながらもセンスが良い部屋ではあるが、貴族ではなく金持ちの商人の別荘か何かではないかと、ヴィトリアは考えを修正した。


 湯浴みを済ませ、髪の毛も簡単に結いあげた後に、簡素なドレスに着替えを済ませる。

 手伝いをする三人の侍女がフォルハス家の者だと気がついた時には、悪役令嬢イベント、まだ続いていたのかしら〜とヴィトリアは思うことになった。


 断罪イベントを回避する為に大きく展開を変える結果となったのではあるが、断罪イベント後、ゲームの通りに、どこかの金持ち商家の別荘らしき場所に連れて来られてしまったのだ。


「こちらで少しの間、お待ちくださいませ」  


 フォルハス家だったらシガールーム程度の広さしかないサロンに通されてソファに腰をかけると、侍女がお茶とチョコレート菓子をテーブルの上に置いた。


ここまでお読み頂きありがとうございます!

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