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【改稿版】 悪役令嬢のそのあとは  作者: もちづき裕
第一章  悪役令嬢編
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第三十三話  入れ替え制度

お読みいただきありがとうございます!よろしくお願いします。

 ティーカップには湯気が立ちのぼらない。

 生ぬるい冷えた紅茶を出されるのは、フォルハス家でヴィトリアがいつも受ける待遇だった。別に紅茶が熱かろうが冷たかろうが、そんな事はどうでも良いのだけど、今、この時にこの紅茶が出てくるっていうのが問題なのは間違いない。


「姉上、お待たせいたしました」


 クリスとヴィトリアは同じ年に生まれたものの、半年早くヴィトリアが生まれているので姉という扱いになっている。


 そのクリスの後ろから、ヴィトリアが今まで着ていたドレスを身に纏った少女が現れる。目の前のソファに二人ならんで座ると、二人の目の前に湯気が立つティーカップを侍女

が置いていった。

 待遇が違いにヴィトリアが眉を顰めると、

「姉上、銀のペンダントは何処にあるんですか?」

 クリスの質問をしてきたのだった。


「今は持っていないわ、ドレスに合わないものを身につける事はできませんからね」

「何処にあるんですか?」

「さあ?それで?その隣の女性は誰なのかしら?」


 金混じりのハニーブラウンの髪を揺らしたヒロインが琥珀色の瞳を私の方へ向ける。

「ベアトリス・リンゼー、姉上は彼女の事を知らないの?」

 クリスの薄水色の瞳に侮蔑の色が浮かび上がる。

「姉上の最も近しい立場にある彼女の事を、貴女は何も知らないのか?」

 知っていまーす!フォルハス家に来る前から知っていまーす!


 ゲームの知識があるヴィトリアは、ベアトリスの母に対して身請け話を持って行ったり、娼館から出て自由になってもらう為にと、色々とトライはしていたのだ。

結局、最後まで愛する男をあの場所で待ち続けてしまった為、客に薬を持たせて長生きするように仕向けてみたけれど、結局展開変わらず、ゲームの強制力なのかもしれない。


「わ・・私のお父さんはブリタンニア王室第六皇子ジョアン・フォス・ブリタンニアで、ヴィトリア様のお父様と同じだというのです」


 ベアトリスはクリスからペンダントを受け取り、ロケットを開けて中の肖像画をヴィトリアへ見せた。


 ベアトリスに良く似た儚げな美人が描かれた小さな肖像画に爪をかけて引っ張り出すと、ブリタンニア王家の王允を印したものが銀のロケットに刻まれている。


「ヴィトリア様のお母様は舞踏会に参加された時にジョアン皇子と運命的な出会いをして身籠られたそうですね?だから、私とヴィトリア様は腹違いの姉妹という事で・・・」

「だからなに?こちらは公爵家の令嬢、そちらは娼婦、同じ種でも腹のつくりが違いすぎるのではなくって?」


 嫌味ったらしい表情を浮かべてゲームの通りにそう宣うと、ベアトリスはその美しい顔をさっと青ざめさせた。人の服を着て美しく着飾って現れて、感動の姉妹の再会みたいな雰囲気にでもなると思ったのだろうか?


「でも・・私たちは姉妹で・・」

「私のドレスを着てアクセサリーを身につけている貴女を姉妹と思えと?私に盗人の身内はいないわ」


びくりと震えるベアトリスの肩を抱きながら、クリスはその瞳に憎悪の炎を燃え上がらせた。


「盗人はお前の母親だろう?自分勝手に妊娠したくせに、困った時にはフォルハス家に泣きつけば良いとでも思ったのだろう、その浅ましさに吐き気がする」


クリスはぎりぎりと歯を食いしばると、

「お前たち親子が居なければ、俺たち家族が壊れる事もなく、良くわからない人間を身内に入れる事もなかったんだ!お前たちさえ居なければ!お前さえ居なければ!」

怨念を吐き出すようにして、


「罪の子は這いつくばって生きていればいいんだ!この忌子!存在する事さえ許されぬ罪人の子が!浄化も及ばぬ闇の申し子が!堂々と我らの前にその姿をあらわすな!」

テーブルを叩きつける。


 その音を合図のようにして男たちが部屋に入ってくると、ヴィトリアの後ろから麻袋を頭から被せて、腕と足を荒縄で拘束していく。


 ヴィトリアが馬車に放り込まれるのと同時に扉が乱暴に閉まると、馬が猛スピードで走り出す。悪役令嬢は全ての攻略対象者のルートに現れて、さまざまな嫌がらせを行うわけだけど、その全てのルートで当て馬悪役令嬢は碌でもない結末を迎える事になる。


 フォルハス公爵の娘ではないかと誤解を受けていたヴィトリアは、ブリタンニアの第六皇子の娘となる。ブリタンニアと共同戦線を組みたいルシタニアは、王族の血を引くヴィトリアを慈しみ、大事にしているアピールをする為に、幼児虐待に走ったイザベル夫人をマデルナ島に島流しにしたのだった。


 隣国メロヴィングの王政が敗れた際に、多くの美術品が市井に流れたのだが、その美術品を兄殿下に頼まれて買い付けに走ったのがジョアン第六皇子。美術品を買い入れる為に、ルシタニアにまで足を伸ばしたジョアン皇子は、これは我が子と判断した場合に限り、王家の王允が施されたペンダントを産んだ女に渡して歩いた。


 ロケットタイプのペンダントには出会った当初の女の肖像画を必ず入れて、その子供は私とその女の子供であると暗に示す。なんでそんな事をするのかというと、それは単なるブリタンニアの国王に対する嫌がらせでしかない。


迷惑行為に他ならないのだけれど、その産んだ子供をどう扱うかでその国のブリタンニアに対する扱いが良くわかる結果ともなる為、貴族の間ではこのペンダントを見つけたら王家へ報告する事が義務付けられているのだった。


 銀のペンダントを持つベアトリスは母親が娼婦の為、侍女やメイドの扱いで保護をするのが妥当。だがしかし、異母姉妹であるベアトリスがヴィトリアと入れ替わるとなればその扱いは大きく変わる事になる。


「馬車に乗せ込まれたヴィトリアはそのまま、何処とも分からぬ場所へ連れ去られてしまい、その後、彼女の姿を見た者は誰もいなかった」

などというように終わるのなら御の字で、やれ、娼館に売られただの、奴隷になっただの、慰み者となっただの、殺されただので、

「修道院に送られる事となったヴィトリアは終生、国の平和を神に祈り続ける事となったのだった」

というエンドすら存在しない。


 悪役令嬢のそのあとは、どうなっているかなんて誰もわからない。

「ギャっ」

ガタンと音を立てながら大きく馬車が跳ね上がり、ヴィトリアは頭を天井に打ちつけた。


「マジで腹立つー〜〜―」

クリスの野郎、フォルハス公爵家の人間のくせにメロヴィング側につきやがって!無事で済むとでも思っていやがるのだろうか?


ここまでお読み頂きありがとうございます!

モチベーションの維持にも繋がります。

もし宜しければ

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