第二十九話 ゲームにはない選択
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「馬鹿じゃないの?メロヴィングの皇帝に認められたら、あんたが王様だって認められる事もあるのよ?戦う回数だってめちゃくちゃ減るし、死ぬ人だって少なく抑えられることになるのよ?民の命を考えたら恭順ルート一択で何の問題があるっていうの!」
「メロヴィングの属国となり、我が国の働き手となる男達はメロヴィングが他国と戦う為の戦奴となる為に徴兵され、使い捨てられ、女達は他国から来た人間に蹂躙され、老人や子供は殺される。そうなってもまだ、死ぬ人が少なく抑えられるって言い続けられるのか?」
「そ・・そんな事にならないでしょ?新しい支配者を受け入れるだけじゃない?」
「お前はメロヴィングの支配下に置かれた国々がどうなったのか知っているのか?」
アルフォンソが憎々しげに睨みつけると、ベネディッタは呆れ果てた様子で声をあげる。
「それじゃあ、なんで貴方は逃げ出したのよ?民を守るのが王家の義務なんでしょう?その義務あってこそ、今まで甘い汁を飲んできたんでしょう?だったら今すぐ戻って戦えばいいじゃない!こんな風に逃げ出すなんて!他国から腰抜け野郎だって謗りを受ける事になるわよ!」
「うるさい!」
アルフォンソがベネディッタの首を押さえつけると、王配フェリペ様が大きなため息を吐き出した。
「お前がジョゼリアンを毒殺さえしなければ、我々だってこのような手に出る事はなかったのだ。アルフォンソが残ればメロヴィングの属国の道しかないというのならば、我らはルシタニア王家の王位継承権、国土保持の証の全てを持って新大陸へと移住する。なあに、この前の海戦でメロヴィングはほとんどの船を大破する事となったからな、ルシタニアの王位を渡せとコンドワナ大陸まで辿り着くことも出来ぬわ」
そう言って王配はベネディッタを引きずり起こすと、
「悪役令嬢に破滅エンドなるものがあるのだとしたら、ヒロインにも破滅エンドなるものがあるのだろう?であったら今こそ、お前は破滅エンドを迎えたという事だ」
近衛の一人にベネディッタを渡しながら言い出した。
「船底に連れて行って奴隷どもの慰み者としろ、いくら楽しんでもいいが、絶対に殺すな。分かったな?絶対に殺すな。コンドワナに到着したら原住民との産み腹として使うのだから、その旨はしかと教え込むようにせよ」
「ちょ・・いや・・いや!いやああああ!陵辱エンドなんてイヤ!イヤ!イヤ!」
ルシタニア王国がコンドワナ大陸の未開の地を発見したのが今から三百年ほど前のこと。
原住民が多く暮らす大地に降り立ったルシタニア人は、海辺に住む一族の族長が寛容な性質の者だった事もあり、現地の人間との間に多くの子供を作り、ルシタニアの血を現地に混ぜ合わせる事で潤滑な統治を図ろうとした。
血の混ぜ合わせには別にルシタニアの男が女に種をうえつけるだけではなく、ルシタニアの女に現地の男の種をうえつけても良い。船底で奴隷の血が混ざったとしても、その子が働き手となれば何の問題もない。
「嫌よ!嫌!助けてアルフォンソ!ディオゴ!助けて!助けて!」
扉を閉めた王配は涙を流す女王を抱きしめると、
「大丈夫だよ、大丈夫だからね」
と言いながら女王の額に口づけを落とした。
ラムエスブルグ皇家の出である王配フェリペ様にとって、女王以外は世の中どうでも良いというような人である。
「エマヌエラ様、落ち着いてください」
リカルドがエマヌエラをソファに移動させ、アルフォンソは怒りが収まらない様子で壁を殴りつけた。
衝撃の断罪に立ち会うこととなったディオゴは、思わず大きなため息を吐き出した。
ああ、俺のルートってコンドワナの開発だとか何とかヴィトリア様が言っていたけど、今、ここに居る方々が何の不満を抱く事なく安心して生活できる拠点を俺が整備しなくちゃいけないってことだよね。
ディオゴはコンドワナ大陸へ親について三度ほど行った事がある。
温暖な気候で、海が綺麗な場所だから、暮らしやすいとは思うけれど、一万五千人の住むところを過不足なく確保するのは大変なことになるだろう。
窓から夜の海を眺めていると、一隻の船がこちらに合図を送りながら近づいてくる姿が見えた。ブリタンニア海軍の船で、この船がコンドワナまで移動する際の護衛艦としてついているのだ。
これから戦争となる為、ルシタニアもブリタンニアも武器が必要となる。ブリタンニアは武器の開発に力を入れている国ではあるのだが、大陸封鎖令もあって鉄鋼の輸入に四苦八苦しているような状況でもある。
これから向かうコンドワナの開拓地は資源の宝庫であり、金鉱、ダイヤの鉱床、鉄鉱資源も豊富にあるため、到着後、すぐさま、ブリタンニアへ鉄鋼を送るよう手配しなくてはならない。
ペドロは何故、一緒に来てくれなかったのだと心の中で恨み言を吐き出しながら、
「リカルド様、船がコンドワナに到着したらしばらくは居てくれるんですよね?」
ジョゼリアン王子の最側近だったリカルドに思わず縋り付く。
「いや、今回の結末を見届けるために来ただけだし、僕はすぐに帰るつもりだけど」
「無理ですよ!一年!一年でいいから居てください!お願い!」
ディオゴが移動中、泣いて懇願し続けたのは言うまでもないことだ。
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