第二十六話 断罪?
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「真実の愛を私は遂に見つけたのだ。ヴィトリア!貴様との婚約をここに破棄することを宣言する!」
はい、ようやっとここまで来ました。
ルシタニア王国全ての貴族が招かれる舞踏会、今後のルシタニアの方針が示されるのではないかと言われていた舞踏会の会場で、皆さまおなじみの断罪、断罪、断罪、悪役令嬢に対する断罪スチルそのもの、それ以外の何ものでもないです!
「貴様が愛しのベネディッタに対して数々の嫌がらせを行い、口にするのも憚られるほどの虐めを行なっていたということは調べがついている!」
断罪の場となり、アルフォンソの隣に立つベネディッタは、王子がこれほどノリノリで断罪をすることになると思いもしなかった。普段はベネディッタに対して塩対応の側近ペドロやディオゴまで断罪に協力的な様子で、ベネディッタはこれがゲームの強制力なのだと感動を覚えたのだった。
「な・・なぜ・・そんな・・・」
この舞踏会場で、初めて面と向かって顔を合わせる事になった悪役令嬢も、驚きを隠せない様子でいる。そりゃあびっくりするわよねえ!だって、階段からも噴水にも突き落としていないのに、お前がやったんだって断定だもの!
アルフォンソ王子の婚約者であるヴィトリアは王子の庇護下に置かれているけど、二人が仲睦まじい姿を見せることは少なく、王宮で働く人々の間では『忘れられた婚約者』と言われているのだった。
そんな忘れられた婚約者がポッと出の男爵令嬢に嫉妬して、様々な嫌がらせをしているなどと噂で流したところ、しもじもの者に即座に受け入れられたのだった。
ベネディッタは階段から足を踏み外してしまったり、噴水に落ちた後で、
「誰にやられたのか・・分からないんです・・・」
と、怯えながら言うだけで、ああ、あの人の仕業かなって思うのだ。そのうち、
「ヴィトリア様が逃げていく姿を見たような気がします」
と、言い出す人間まで出てくるのだから呆れてしまう。
こういう時の集団の心理は面白い。そんな事をする悪い奴は炙り出して吊し上げにしてしまおうと、少なくない人々が目を爛々と輝かせ始めるのだから。ベネディッタとしても、ある程度お金貸したり、融通を効かせたり、王宮内に勤める多数の使用人に恩を売りまくっているので、都合の良い立場を築くことになったのだ。
身分差の恋?素敵!応援しなくちゃ!といった感じで、男爵令嬢擁護派の侍女メイドが結構な数、存在しているのだ。本当、悪役令嬢って何もしていなくてもヘイト値がすぐに貯まるように出来ているのよねえ!と、ベネディッタは感心しきりとなっている。
「顔色ひとつ変えず非道な行いをするお前のような奴は国母に相応しくない!私はヴィトリアとの婚約を破棄し、ベネディッタ・ボルボーン嬢との婚約をここに宣言する!」
その後、女王から直々に婚約破棄を宣言されたヴィトリアは、追放前に鏡の間に呼び出されて、再度、罵倒されることになる。
鏡の間とは、王室の姫たちが控室に使う部屋の事で、壁には無数の鏡が飾られている事から『鏡の間』と呼ばれるようになっているのだった。
ゲームでは、大勢の貴族の前で吊し上げを喰った挙句、鏡の間では王族たちに囲まれて、
「殿下が死んだのはあなたの所為なのね!」
といって罵られる事になるのだ。
アルフォンソ・ルートのヴィトリアは、断罪後、王子暗殺について直接罪に問われる事はないけれど、奴隷商人に売り飛ばされて、最終的には凌辱腹ボテエンド。
側近ペドロ・ルートでは修道院へ行く途中で誘拐に遭って、その後、惨殺死体となって発見エンド。
側近ディオゴ・ルートだと、コンドワナ大陸に連れて行かれた上での追放エンド。ネットでは、これはこれで原住民に陵辱されての惨殺エンドじゃないのかと騒がれる結果となり、結局、悪役令嬢は碌な死に方をしないという事で、みんなが結論付けていた。
月明かりしか入らない鏡の間は暗い、アルフォンソとエマヌエラに挟まれたヴィトリアが、二人から何を言われているのか、ベネディッタの方までは聞こえてこない。
ゲーム中、抱きしめられたヴィトリアは愛情に飢えているが為に、二人に対して縋り付くような行為をするけれど、抱きしめられながら呪いのような言葉を並べられ、心をへし折られていくのだった。
結局、ヴィトリアは近衛兵に連れて行かれてしまったが、大丈夫かしら?いや、大丈夫じゃないわよね。とにかく、これで悪役令嬢ルートが終わったから、次はやり込み系を始めなくちゃいけないわけなのよね?
少しうんざりとしながらも、ベネディッタはこの後の展開を頭の中で描いていく。まずは、戦いの為に医療品の確保に走って、教会の協力を得ながら野戦病院を展開しなくちゃいけないわ。ここで色々と先回りして教えてチート発揮したら『予言の聖女』とか言われることになるのよね。まあ、今でも一部の人間にそんな風に言われているみたいだけど。
今後の事も考えて、ヒロインちゃんのヒロイン育成もしなくちゃなんないわよねえ。ああ、忙しいわあ。早く戦争パート終わってくんないかしら。
「ベネディッタ」
アルフォンソに呼ばれて顔を上げてみれば、アルフォンソの王家特有の碧玉の瞳は凪いでいて、窓から差し込む月の光を浴びて黄金の髪の毛がきらきらと輝いて見えた。
悪役令嬢を断罪した事への高揚感などは一切見られない。
舞踏会で婚約破棄など、やっている事は非常識そのもの。悪役令嬢ものの展開でいけば廃嫡間違いなしの行動を取っているというのに、アルフォンソの落ち着き具合がベネディッタには異常にも見えた。
ヴィトリアが行った悪行は概ね冤罪となるけれど、裏付け捜査もなく、ベネディッタが提供した資料もそのまま使用してしまう違和感。ジョゼリアン王子が亡くなった事により、普通の思考状態じゃなくなっているっていうのが最短ルートのポイントなのだが。
「ベネディッタ、これから船でコンドワナへ移動する、すぐに用意してくれ」
「はい?」
「ボルボーン嬢の荷物はすでに侍女が用意しているので、このまま移動でも大丈夫かと思いますが?」
「向こうの受け入れ体制も整っているし、問題ないと思う」
「行こう」
殿下が部屋を出ていくと、二人の側近がベネディッタをエスコートしながら歩き出す。
「待って!待って!待って!この後、王妃の執務室に行って、今後の事を話し合うとか、そういう事をするんじゃないんですか?」
アルフォンソはこちらを振り返りもせずに、
「母上もまた、船へ移動している」
と、言い出した。
どういうこと?
マジでわかんないんだけど!
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