第二十七話 アホすぎる女
お読みいただきありがとうございます!よろしくお願いします。
ギャスパー・ドパルデューは、第16騎兵部隊の隊長職に就いている。
本来であれば、皇帝をお守りする近衛部隊として配属されるはずだったのだが、コーランクールから声を掛られて、エスパンナの王都マデルノを発してルシタニア王国入りを果たすことになったのだ。
国が滅びるその影にコーランクールの策あり。
そんな風に言われるほど、皇帝が他国を征服する際には、敵国の中心部をかき混ぜるような作戦を複数、同時に実行していくのがコーランクールなのだ。
20万という人数の中にいれば、ギャスパーが指揮する部隊など埋没してしまうのは間違いない。その中で飛び抜けた活躍をするのは難しいものがあるが、独立した作戦に参加するという事になれば活躍の場は広がる。
しかも、コーランクールが言うには『悪役令嬢』という不思議な役割を担うヴィトリア・デル・フォルハス嬢を死体にして皇帝に献上すれば、金、昇進、女、なんでも望むものを手に入れられるという。
その悪役令嬢は現在、カルダス領主館に滞在しているため、誘き出す手立てはすでに出来ていた。
「ギャスパー様!やって来ました!やって来ました!」
「そうか!やって来たか!」
部下のジェラールが頬を染めたルシタニア人の女と、二人の子供を連れてやって来た。
ジョアンナという母親の方は子爵家の夫人でルシタニア貴族となるが、その子供たちはカルダス領を任された女傑と言われるテレサ女史の従姉妹の孫娘たちとなり、今回、領主館に潜入させるために使った、我々の手駒の一つでもある。
王家主導の大移動から置いてきぼりを食らったジョアンナは、領地に行ったまま帰って来ない夫を待ちながら、ルシタニアの王都リジェで社交もなく、本人としては暇な日々を送ることとなったわけだ。そこで暇つぶしに出かけたカフェで声をかけたのが、今ではギャスパーの部下となったジェラールだった。
ジェラールは元々はコーランクールの部下であり、ルシタニアの王都に潜入して情報を集めたり、男としては王子様のように整った容姿を使ってルシタニアの貴族女性と関係を持ったりしていたらしい。
案の定、暇を持て余した双子の母であるジョアンナはジェラールにすぐさま夢中となってしまった。夫とは元々政略結婚であったため、夫を捨ててジェラールの妻となることをジョアンナは夢見るようになったわけだ。
コーランクールとしては、カルダスの領主館に潜入させるのに、双子の母であるジョアンナは都合が良かったということなのだろう。
「ジェラール!私たち結婚できるのよね!」
無事に領主館から脱出できた為に、感極まって女が飛びついている。興奮気味のジョアンナを抱きしめたジェラールが、
「領主館を落としたら、すぐに結婚しよう!」
戯言を吐きながら女に甘い口付けを落としていた。
「ヴィトリアを連れて来れば私たちは無事にメロヴィングに移動できるのよね?」
双子の一人が問いかけてきたため、こちらも問いかける。
「ああ、お嬢ちゃんは、短髪で男みたいな身なりをしたヴィトリアを捕まえて来たのかい?」
「短髪って何?ヴィトリアの髪の毛は金混じりのハニーブロンドで長い髪の毛じゃない」
「それは偽物の方だ、本物は短髪のはずなんだがね」
「ええ?髪が短いってどういう事なの?」
もう一人の子供が泣きそうな顔で言うので、頭をぐりぐり撫でながら問いかける。
「別に髪の毛が長い方が必要ないって訳じゃないよ?それじゃあ、髪の毛が長いヴィトリアは何処に居るんだい?」
「私たちと一緒に来たでしょう?」
双子が振り返っても誰も居ない。
「ジョアンナ、お前たちが使った隠し通路の出入り口へ案内してくれ」
ジェラールの焦った声に促されるようにして、ジョアンナは自分たちが使った隠し通路の出入り口へと案内した。
すると、地下へと通じる扉はすでに閉まっており、中から閂をかけられているのか、こちらから開けることが出来なかった。
リジェの王宮と同じ設計者によるカルダスの館は王家の別荘でもあったため、王家が逃げ出すための無数の隠し通路が存在する。
その隠し通路は館の中からでないと見つける事ができないと言われるほど精巧なもので、取手もない事からこちらから開けるのは難しいように見えた。
「ジェラール、お前は令嬢の姿を見ていないんだよな?」
「はい、自分はジョアンナと子供たちの姿しか見ていません」
「嘘よ!確かに私たちと一緒に外に出て来たもん!」
「本当に一緒に出てきたの!だけど・・もしかして・・怖くなって帰っちゃったのかしら?」
母親の方はジェラールにべったりで、子供たちの話を全く聞いていない。
「ジョアンナ、お前は子供達と一緒に公爵令嬢をここまで連れて来たんだよな?」
「さあ?どうだったかしら?」
ジョアンナはニコニコしながら言い出した。
「貴方に会えるのが楽しみ過ぎて、よくわかんない女の事なんてあんまりに気にしていなかったかも」
この女、あまりにもアホすぎる。まあ、これほどまでにアホだからこそ、夫が居る身でのこのことこんな場所まで出向いて来ているんだろうがな。
ここまでお読み頂きありがとうございます!
モチベーションの維持にも繋がります。
もし宜しければ
☆☆☆☆☆ いいね 感想 ブックマーク登録
よろしくお願いします!




