男の嫉妬(樋口祐輔side)
「村田先輩!今度またコンパセッティングしてくださいよー」
「俺は結婚したばっかりなんだから んなことできるか!」
「でも村田先輩の奥さんの友達って結構可愛い子多いじゃないですか!確か…ほら、佐伯さんって人!あの人いいですよね。なんていうか大人っていうか クールビューティって感じで俺好きです!」
「お前はいいかもしれないけど 相手だって好みがあるだろ?」
「えー!ともかくお願いします!俺すっごいタイプなんですよー」
「あのさ、俺が聞いた話では佐伯さんは年上がタイプらしいぞ?10歳くらい年上でも全然大丈夫だらしい」
「そうなんですか?じゃあ俺って…」
「まあ論外ってところじゃないか?」
各部合同の社内会議があり、珍しく村田と一緒になった。俺は最初話を聞くつもりはなかったが、話題がひなたのことだったこともあり、すっかり聞き耳を立ててしまっていた。ひなたは年上が好みというのは知らなかった。もしかして俺でもいいのだろうか?いや、グズグズしていたらこんなガキに取られてしまうかもしれない。俺は帰るとすぐ彼女に確かめることにした。
俺は自分でもかなり強引だったと思った。妙なところで強引なくせに 押しに弱いことを知っていた俺は断られないような言い方でひなたを言いくるめた。そして携帯を破壊した。
以前TVの番組で「元彼、彼女の番号を消すか 消さないか」というのをやっていて、彼女がよっぽど嫌じゃない人なら面倒だから消したりしない。といったのを憶えていたからだ。
彼女にその気がなくても俺に押されて付き合ったみたいに ひなたが元彼とやけぼっくりに…なんてなっては困る。嫉妬深いかとは思ったが後悔はしていない。
俺たちは恋人としての付き合いが始まった。だが俺の心の中には不安もあった。彼女は俺のことをどう思っているのだろう。真剣に…結婚を考えてくれるだろうか?
俺はそろそろ30になろうかという頃、当時付き合っていた女 素子と結婚した。素子は美人でうちの会社の取引先の重役の娘と言う出世にはもってこいの相手だった。素子も結婚を望んでいたし、俺も子供が欲しかった。周りからも祝福されて結婚した。結婚してしばらくすると俺はあるプロジェクトを任されていて、多忙を極めていた。出張もあった。付き合っている時も忙しくて連絡できなかったこともあったから俺は彼女も納得してくれていると思っていたのだ。そしてそんな中、彼女は妊娠した。俺はとても喜んだが、しばらくすると彼女は実家に帰ってしまった。
そして数日後、俺は彼女から離婚したいと告げられた。彼女のお腹の中にいた子供は結婚前から付き合っていた男の子供だと言う。結局俺たちは離婚した。お腹の子供は知らないうちに処置されていた。
『あなたは私のことなんて好きでも何でもなかったのよ。ただ家のことをしてくれて子供が欲しかっただけ』
素子が離婚する時に言った言葉が忘れられなかった。離婚もスムーズに終わったし、そのことに後悔したりすることはなかったが、もしかしたら俺は人を愛せないのかもしれないとも思った。
もしひなたと結婚することになったら 俺は今までと何ら変わらない仕事中心の生活だろう。ひなたはその生活に満足してくれるだろうか?俺はそんなにマメな男ではないし、気が利いた言葉が言えるわけでもなく どちらかと言えば女の子からは目つきのせいか怖がられていることが多い。また寂しい思いをさせて俺はひなたを失ってしまいはしないだろうか…




