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盲目少女は転生者  作者: シルクティー


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2/2

第二話

「おい、返答はまだ来ないのか」

「早くしろよ、くそ!」


何やら外が騒がしい。


手足は縛られているけど、かろうじて視界だけは自由だった。


見たかんじ、私が入れられているのは、使われていないどこかの小屋だった。

ダメもとで手と足の縄が外れないか試しても、緩むことすらなかった。

変に犯人たちを刺激して殺される確率を上げるよりは、黙って救出を待つべきなのかもしれない。

私自身、戦えるわけでもないし、もし外に出ても逃げられるような足の速さもない。動くほうが危険だわ。


「ああ、目が覚めたのか。逃げようとしても無駄だぜ。ここは王都から結講離れてる森の中だ。下手に外に出ても、魔物に喰われて終わりだ。」


犯人が小屋の中に入ってきてありがたいことにここがどこか話してくれる。


王都から離れてて、魔物が出るという森は全部で3つ。

その中でも、一つは魔物の数が多すぎて対処が間に合わないため、立ち入りが禁じられている。だから、ここで今いる場所は2つに限られる。


10歳だからと侮られては困る。これでも5年間、王太子妃教育を施されている。こんなこともわからないほど、純粋な子供じゃない。


「ねえ、おじさんたちは、誰に雇われたの?」

「あ?んなこと言うわけねえだろ。」


そりゃそうだ。犯人も馬鹿じゃない口止めくらいするか。


でも、困ったことに、ゲームの設定に、悪役令嬢が誘拐された過去なんてものは存在していなかった。

ただ書かれていないだけなのか。あったとしても、サラッと終わってしまう事案だったのかはわからない。


でも、私を攫って得をする家は、いくつか思い当たる。


一つは、第二王子派。でも、今回のガーデンパーティーには王家は一切関係ない。だから正直、可能性は低いだろう。

もう一つは、ヴォルフルック公爵家の政敵であるスガル侯爵家。侯爵家の娘が、王太子の婚約者候補の次席であったと聞いたことがある。

侯爵家からしてみれば、娘が王太子の婚約者になってくれれば、社交界や政治の場で、優位に発言ができるようになる。だからこそ、頑張って娘を売っていた印象があった。


あとは、隣国からの刺客ということも、考えられなくはないが、犯人たちは間違いなく自国民だ。なら、この線も消える。


「おそらく、スガル侯爵家かしらね。」


そう呟くと、誘拐犯たちは明らかに動揺した。なんともわかりやすい。


「大方、私を引き下がらせて、娘を王太子妃に据えたいのでしょうね。」

「黙れ!」


ああ、挑発するのはミスったか。


誘拐犯の中のリーダー格のようなやつが魔法弾を私のすぐ横に打ってくる。


「・・!あなた、なんでこんなことしてるのよ。無詠唱で魔法が打てるならさぞかし重宝されたでしょうに」


この世界には魔法が存在するが、誰もが使えるわけじゃない。

ゲームの中でも、使えることができたのは、ヒロインはもちろんだが、攻略対象者では王太子殿下と魔法師団長の息子の二人だけ。

魔法師は数が少なく、使えるだけで魔法師団にスカウトされるレベルだ。なのに、この男は無詠唱で魔法の発動ができた。こんな逸材とこんなところで会うことになるなんてね。


「うるせえ!誰が国なんかに何か仕えるか!」


まずい。彼はおそらく魔力制御を習っていない。

そのため、感情任せに魔力が暴走してしまっている。小さな魔力弾が辺りに飛び始めている。


「あなたたち、小屋の外に逃げなさい!」

「だ、だが・・・」

「いいから早く!」


魔力暴走が起きた場合は、魔法師にしか止められない。そのため、魔法師は各地に一定数配置されている。

魔力暴走は、辺り一体の魔力量が変わるため、配置されている魔法師たちはすぐに気づくだろう。


幸い、魔力弾は小さなもののため、当たってもかすり傷程度で終わるだろうから、魔法師たちがきて、収めてくれるのを待った方がいい。何より、エレオノーラは手足を縛られ、動けない。


「落ち着いて・・・!」

「うるせえ!!」


まずい。そう思った時には、もう遅かった。

犯人から発せられた魔法弾がエレオノーラの両目に直撃してしまった。


「うっ・・・」


小さな魔法弾ではあるが、神経に直撃してしまえば、話は変わる。


「ここか!!」

「こいつの周りに結界を張れ!」


突如として響いた聞き覚えのない声。

魔法師の到着に、エレオノーラは、安堵した。


「中に!貴族の嬢ちゃんがいるんだ!」

「何?」


「はっ!お嬢さん!!大丈夫かい!!」


誰かに支えられ、上体が起こされる。


「あなたは!!なぜこのようなところに・・・」

「急いでヴォルフルック公爵家と王家に早馬を出すんだ!!」


ああ、私のことを知っている人が、いてよかった。


エレオノーラは、王族の婚約者ではあるが、社交界にはあまり出席はしていなかった。

それは、王家と公爵家の総意であり、エレオノーラ自身も面倒ごとから逃げられると考え、享受していた。


だからこそ、エレオノーラを一目見て王族の婚約者と気づく者はそう多くない。




魔法師に保護されてからどれくらい時間が経ったのだろう。


魔法師の屯所に連れて行かれたエレオノーラは、医師団からの治療を受けていた。


エレオノーラは無抵抗で魔法弾を受けていたため、身体中細かな傷だらけだった。

この世界の魔法に回復魔法は今のところ存在しない。

そのため、片っ端から手当てをされていく。


「エレオノーラ様、他に痛むところはございませんか?」

「ええ、大丈夫です。ただ・・・」


戸惑う様子のエレオノーラの様子に、医師と看護師は何も言えなくなってしまう。

現在、エレオノーラの目元は包帯で覆われており、目を合わせることは叶わない。

でも、エレオノーラは気づいていた。包帯を取ったとしても、自分の視界に光は入らないと。


「エレオノーラ!!」

「この声は、殿下ですか?」


聞こえた声で誰かを判断すると、頬を撫でらるが、よく知ってる手だったので、安心する。


「なんで、こんなことに・・・。首謀者は誰だ。今すぐ突き止めろ。」

「はっ」


あ、側近の方もいらしてたのね。


「待って、殿下。おそらくではあるのですが、スガル侯爵家かと。スガル侯爵家の名前を出すと犯人たちは動揺していたので。」


わかっていることだけを簡潔に伝える。きっと、あとはいいように調べてくれるだろう。


「エレオノーラはここですか?」

「お母様!」

「ああ、エレオノーラごめんね。ごめんなさい」


私の手を取り、泣きながら謝る母。

お母様が謝ることなんて何もないのに。


「お父様が必ず犯人を突き止めてくれますからね。」


お父様もきっとお母様と一緒にきてはいるのだろうけど、私をお母様に任せ、自分は別室でまとめられている誘拐犯たちのところに向かったはずだ。

ゲームでも、お父様はエレオノーラを溺愛しており、自分にできる最善をまず行っていた印象だった。


「皆様に、お話ししなければならないことがございます。」


殿下とお母様が私のそばを離れず、心配してくれている時、手当てをしてくれていた先生の声が聞こえた。


「エレオノーラ様の、目についてです。」


先生の一言に、部屋の中の空気が変わった。

先生が近くに来て、失礼しますと一声かけてから私の目元に巻かれている包帯を解いていく。


目元から包帯が取れていく感覚はあるけれど、やっぱり光は何も見えない。


「先生、娘の目は、治るんですよね・・?」


お母様のその疑問は、懇願に近かった。


「残念ながら、今の医療では、難しいです。奇跡でも起きない限り、お嬢様の目が見えるようになることはないです。」


隣で、お母様が泣き崩れる声がする。殿下も、言葉が出ないのか、私の手を強く握ってずっと黙っている。


こうして、私はわずか10年で視力を失った。


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