表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/100

第九夜 夏野千里


 来ましたね。どうも近頃は貴方の訪れを楽しみにしてしまっているようです。決して、いまのり方に不満があるわけではないのですがね。


 みなさまを送って、最期に残るべき私ですから、だんだんと寂しくなってくるのは確かです。しかし、いまは姉夫婦もともにいてくれますし、幸せでもあります。


 それはそうと、夜というのに暑いですね。どうも明治の頃と比べると、涼しさが失われてしまっているように思います。


 少し手を休めて、夏野千里なつのちさとの声に耳を傾けてみましょうか。



……なんだろね、蜜柑みかんのやつに関わってからろくなことがないよ。おかげ横丁を取り仕切る仕事に就かせてもらえたのは良かったけど、昼は昼、夜は夜の仕事があって忙しいもんさ。


 時代遅れの鬼なんぞにやられちまいやがるし。あれから、どうだい、二十年近く経ったかね。小さなクマの人形に宿る式霊だか神様か。ずいぶんぼろぼろにされちまったよな。そうそう、十七年前か。その後、高島承之助たかしま じょうのすけ残骸ざんがいを引き取って何やらしていたっけ。

 どうなったんだろうねぇ。鬼とは相討ちと聞いたが、佳乃よしのもやられ、居合わせた兄妹と連れも何人か、殺されたり重い怪我を負ったり、散々な結果だった。


 それで終わらない、そんな話だったっけな。高島は何か知ってたんだろうが、詳しくは言えぬとくる。十七年経って、名坂が鬼の娘を連れてきたのも何かの兆しだろう。

 おかげ横丁を通っていくあやしのものはみな、この千里ちさとさんがあらためるんだ。そう簡単に通しゃしないよ。


 おっと、言ってるそばから鈴鳴すずなりだ。


 なにか入ってきたね。さあ、調べてみようかい。ふんふん、おや、こいつは御船龍樹みふね たつきじゃないか。おかしいね、性格は悪くても心根こころねは悪くない娘と思ったが。なぜ結界の鈴が鳴ったのだろう。悪い呪符でも持ち歩いているか、もしかして鈴自体が壊れちまったか?


 ああ、治まったね。ちょいと調子が悪いのかもしれんな。やれやれ、心水教の連中に文句を言わなきゃならん。万一、橋姫に世話をかけようものなら、何を言われるかわかったもんじゃないんだ。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ