第12話
そして土曜日…。ちょっとだけ勉強するも、当然手につかず…。
鉛筆をかじってイスに寄りかかってユラユラしたり…。
机に座ったり、立ってカーテンをいじってみたり
ベットに寝転んでみたり、立って壁に頭をぶつけてみたり…。
「あー…あ…。」
………………。
「ああ!クソッ!!!」
上着を掴んで、軽く羽織って髪型を鏡を見ながら整えた。
「かぁちゃん!ちょっと出かけてくる!」
「あんた!勉強しないで大丈夫なの?」
自転車にまたがり、ふらふらと駅前公園の方に。
ただ、することもなく広場に自転車を引いてくる。
「なんで来たんだろ…。来たってしょうがないじゃん…。」
レンさんがもしも来て見つかったら嫌なので、公園のスミの方に移動する。
自転車にまたがり、ハンドルに顔を伏せる。
なんだよ…これじゃ、完全にストーカーだろ…。
それに、何時待ち合わせかもわからないのに…。
「あーあ…。オレ、ホント…バカ…。」
顔を上げると、階段からレンさんが広場の方へおりてくる…。
「あ!ヤベ…。」
わ…。普段着の…。
オシャレなレンさんもかわいい…。
ああ…かわいいなぁ…。
…と思ったけど、
それは、自分のためにオシャレしたんじゃない…。
自分の手に届かないところにいると考えると
ものすごい切なさが襲ってくる…。
ああ…告白しなきゃよかったなぁ…
そしたら、なんの変哲もない月曜日が来て、バイトで会って…
レンさんカワイイと思っていられたのに…。
そこに、高級車が止まる…。
ウィンドウが下がって、吉沢さんの顔…。
レンさん笑顔で、吉沢さんに向かって手を上げる…。
「…チクショウ…。」
涙がまた出て来た…。
自分の失恋の現場なんて…
みたくないなら…
みなきゃいいのに…。
レンさんが…
勝ち目のない男に連れて行かれてしまう…。
冷たい手で心を押しつぶされるように感じる…。
手をつなぎたかった…。
抱きしめたかった…。
キスもしたかった…。
でも目の前でまざまざと見せつけられた。
終わったんだ…。
本当に終わったんだ…。
「はは…終わった…。あ~…。」
クソ…帰ろうか…。
いや…ちょっと追いかけてみようか…。
なぜ?
無理だろう…相手は車だぞ?
ギリギリまでレンさんと一緒にいたいのか。
ただの嫉妬なのか。
自転車をこっそりと、車の方に向けて走り出す…。
車に乗り込んだレンは、吉沢に向かってにこやかに
「こんにちわ!吉沢さん!」
「こんちわ。さ、座って。吉沢さん。」
「んもう…吉沢さん。あたし、レンっていうんです。そっちで呼んで下さい。」
「そうか。ゴメン。じゃ、レンちゃんでいいかな?」
「ハイ!うふふ…。」
「かわいいね。じゃ、行くよ。」
「その前にいいですか?」
「ん?なに?」
「吉沢さん…彼女いないって言ってらっしゃったじゃないですか…。」
「ウン。いないよ。」
「あたしじゃだめ…ですか?」
「なんだ。先に言われたなぁ。レンちゃんなら大歓迎だよ。」
「キャ!やった!」
「じゃぁ、今から彼氏。彼女ね。」
「ハイ!うふふ…んふふ…。」
「はは。かわいいな。」
吉沢、方向指示器を出し、車を走らせる。
アタル、自転車で後を追う…。
そんなこと知らない車中の二人は楽しそうに
「吉沢さん!今日はどこに連れてってくれるんですか?」
「そうだなぁ…。大人の遊びでもしようか。」
「ハイ!ダーツとか?ビリヤードとか?」
「うん。そういうのもあるとこにも連れてってあげるよ。」
「やった!」
「やさしく教えてあげるよ。やさ~しくね。」
「楽しみだなぁ~♪ルンルン♪ランラン♪」
「ふふ。ホント、かわいいねぇ。」
吉沢のスマホは、二人の間の…中央のひじかけにおいてあったのだが…
Line「ライン…」
(え…ライン?)
レンがおもむろに、吉沢のスマホの画面をみると
Line:ノゾミ「今日はお友達と楽しんでね!私は貴子のところにいってきまーす。」
のメッセージ。
吉沢、すかさず、スマホを伏せようとする。
レンがその手を止めて防ぐ。
Line:ノゾミ「スタンプ:投げキッス」
「…吉沢さん…ラインやってないっておっしゃったじゃないですか…。」
「………。あ~あ。失敗!見られちゃったなぁ。」
「しかも、今の方…恋人か…奥様…?」
「で?ナニ?今日は、レンちゃんの気に入るオモチャもたくさん用意してきたんだよ。」
ダム!と、運転席側からロックの音。
レンさん、ロックをはずそうとするが…。
ガチャガチャガチャ
「!!」
「ああ、無理無理。この車走ってる時はロックかかるし。このボタンで全ロックかけてるから。」
「残念。レンちゃんとラブラブしたかったのに、無理やりになっちゃうなぁ。
レンちゃんが悪いんだよ?見なくてもいいもの見ちゃうんだもん…。
これじゃぁ、やさしくできないなぁ~。ま…。そっちのほうも好きだし…。
やっとこさレンちゃんが俺のこと好きになってくれたんだから、それなりのことはさせてもらうよ♡
今日は、シビレて動けなくするのも持ってるから、おとなしくしてた方がいいからね♪
写真とか、動画とかもたくさんとるから、ちゃーんと笑っててね♡」
「っ!!」
車のナビが
「700m 先 右 方向デス。」
「だましたんですね!彼女がいないなんて!」
「だましてないじゃん。彼女はいないよ。妻はいるけど。」
「300m 先 右 方向デス。」
「だって、レンちゃん、好きなんでしょ?俺のこと。だったら関係ないじゃん。」
「いいえ!もう降ろして下さい!」
「降ろすさ。ホテルについたら。それとも、降りないで車の中の方がいいかな?」
「マモナク 右 方向デス。」
信号は青…。




