↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
執事オーバーワークス  作者: 双葉
第3章 『春、復縁、突然、そして……』
33/54

第3章2 『七宝グランドヒルズ』

遅くなりすみません今週から仕事が忙しくなります、更新ペースは変わらないつもりですが週に2話ペースで上げられるようにがんばります。


今回は新年開けてからのお話です、七宝家パーティーはどうなるのか、まずは準備段階からどうぞ。












 時間はお昼頃、氷華(ひょうか)の衣装選びを終えた(かける)はある場所へと向かう、その場所は『七宝グランドヒルズ』と言う巨大なビル。


 地上256メートル、階数は52階、様々なテナントが入っていたりと利用客の幅も広い、下層から中層まではショッピングモールの様になっていて上層部はホテル、最上層は宴会や会議などに使われる部屋が存在する。


 今回の七宝家主催のパーティーはその最上層部にて行われる、参加者は有名な企業やそれに携わった関係者だ、翔はそのヒルズに向かうべくバイクを走らせる、あれだけ大きなビルはこの一葉市にしかなく、地図が無くともその建物を見ながら走れば着くくらい目立っている。


 屋敷を出る直前にメイド長から連絡が入った翔、内容は『設営自体はほぼ完了、会場での動きをレクチャーします』と言われ、急ぎ国道を駆け抜けていく。


 しばらく走るとヒルズの玄関前に着く、車ならここでホテルマンに運転を変わる所だが、翔はバイクのため駐輪場に止める。


 バイクを止め終わるといよいよヒルズの中へ入る、厳重な警備体勢であることは目で見て直ぐにわかった、片耳にイヤホンを挿した男達が玄関に数人、ロビー付近にも数人、もっといるかもしれない。


 ちなみに翔自身このヒルズの中に入るのは初めてで、案内板を探してキョロキョロしていると、警備員に声を掛けられてしまう。




「どうかしましたか?」


「あ、俺七宝家の関係者なんすけど」


「関係者ですか、何か証明できるものは?」


「このピンバッジじゃダメ?」


「確かに七宝家の様ですが、関係者入館許可証とかは無いですか?」


「貰ってないなそう言えば」




 うっかりしていた翔、入館許可証はメイド長から渡される予定だった、しかしそのメイド長は先にこの最上階に行ってしまっている。


 翔は『連絡します』と警備員に告げ、メイド長に電話をするが繋がらない、忙しいのかもしれないと考え他のメイドに連絡をするが、




「繋がらねえ………」


「本当に関係者ですか?」


「はい、そうっすけど」



 いよいよ警備員が怪しいと思い始める、気がつけば一人二人と警備員が翔を囲み始める、入館許可証を持っていない場合は関係者入口を入らせてもらえない、しかし連絡がつかないのならどうすることもできない。


 警備員はヒソヒソと耳打ちを始める、翔にはそれが聞こえてしまっていた、口々に『もしかしてテロリストか?』『居るんだよな、嘘つく奴が』と、なんだか大層なことになり始めていた。


 話がついたのか翔の腕を掴み、何処かに連絡をしながら『ちょっと警備室に行きましょうか?』と連行されそうになる。





「いやいやいや、俺何もしてねぇよ!?」


「いいから来なさい! コラ暴れるな!」




 3人の警備員は翔を床に抑えつける、後ろ手をガッチリ組まれてしまい身動きができない、このままでは警察に引き渡されてしまう、入館許可証があれば、メイド長が渡してくれていればこうにはならなかった。


 一層警備員を張り倒すか? と心で考えてしまうがそんな武道の心得は無い、諦め掛けた時だった、誰かが走りながらこちらに向かって叫ぶ声が聞こえてきた。





「かーけーるーさーんッ!!!」


「み、美歩佳(みほか)?」



 慌てて走ってきたのは美歩佳だった、手に膝をつき息を切らしているが、その手には青の紐が付いた名札の様な物が握られていた。


 警備員は『美歩佳お嬢様!?』と、抑えていた翔をパッと離し敬礼、床から立ち上がる翔を見てホッとした美歩佳は、手に持っていた名札を翔に手渡した。




「こちらは七宝家の執事、天羽翔さんです」


「し、執事!? これはご無礼をしてしまい本当に申し訳ございません!!!」


「え? あ、ああ」



 腰を90度に折り曲げて頭を下げる警備員に圧倒される翔、序列で言えば執事は警備員より立場があるようで、その力は翔にとって慣れないものかもしれない。


 美歩佳のおかげで無事に関係者として裏口へ入ることができた、ただどうして翔がロビーで足止めされていた事に気づいたのかを聞いてみると。




「お姉様から連絡がありました」


「氷華から?」


「はい、『アイツ許可証が無いんじゃない?』って」


「何故それを早く言ってくれなかったかなあの人は………」




 何はともあれ無事に事なきを得た翔、美歩佳と一緒に関係者エレベーターに乗り込み最上階へ向かった、高速エレベーターは数秒で52階まで駆け上がり、扉が開閉し飛び込んできた景色に翔は感動する。


 廊下の外側は一面窓ガラス、見える景色は市内だけでは無く海まで見えていた、昔集まっていたフェリー乗り場もハッキリとわかる。


 今日は少し雲は多いがそれでも絶景なのは間違いなかった、しばらく見下ろした後会場へと歩き出す、美歩佳はスマホを弄りながら隣を歩いている、器用な事をする女の子である。


 会場の入口には『七宝家主催パーティー会場』と書かれた看板が設置されており、その隣には招待客の名前や会社名が記載された紙が張り出されていた。





「すげぇ数だよな、見た事ある会社ばっかじゃないか」


「はい、今回はゲーム会社も招待しているみたいなんです!」


「あー、お前がテンション高い理由はそこだったのね」


「もしかしたら有名な声優さんが来るかも知れません! サイン貰わないとですよ!」




 いつになくテンション高めの美歩佳、招待されたゲーム会社の名前は『ステルスゲームズ』と書かれている、この会社のアプリゲームやソフトをやり尽くしている美歩佳、今まさに歩きながらやっていたのがそれだった。


 七宝はその会社にいくらか出資している、ゲームのスタッフロールの関係者の枠に『七宝グループ』と入っているようだ、美歩佳はその出資者の娘としてデバッグをやったり、意見をメールで出したりと過去に簡単な仕事を経験していたようだ。


 色々な企業に期待をして投資する七宝は、世界でも名を轟かす程の権力があると改めて翔は確認した。


 会場入口で招待者の張り紙を見ていると声を掛けられる。




「翔さん、申し訳ございません。名札を渡し忘れてたいたようで」


「メイド長、ビビりましたよさすがに」


「でも翔さんならあの程度、ボコボコにすると思っていたのですが?」


「意味の無い暴力って自分を悪くするだけですって」




 苦笑いをする翔、メイド長はその表情を見るとクスッと微笑む、美歩佳は別のメイドと一度屋敷に戻ることになり、翔はメイド長に会場でのルールや接待についてレクチャーを受ける。


 実際に目にした会場は想像よりかなり広く、当日はインカムを付けての仕事になるようだ。テーブルの数も多く、料理の運搬方法も教えられ、翔は必死にメモを書いていく。


 基本的にメイド達が料理の補充や運搬を行うようだが、体力と力のある翔にも極力動いてもらう事になった、あとは招待客の飲み物をついだり、空いたボトル等の下げるタイミングなども徹底的に叩き込まれ、気がつけば時間は夕方頃になっていた。


 お昼を何も食べていない翔はさすがに体力の限界を迎え、レクチャー終了後には会場にあった適当な椅子に座り込んでしまう、渡された招待名簿を見ながら休憩をしていると。





「天羽、何をしてるのよ」


「あれ、何でここに?」


「原稿が出来たから様子を見に来たのよ、あとこれよ」





 氷華の手に掴まれているのは、紺色の布地で何かを包んだ物、大きさ的にノートA4サイズで高さは2段、翔はそれが弁当だと言うことがわかった。


 布地越しに伝わる弁当特有の香りが翔の嗅覚を刺激し、胃袋が空っぽだと知らせる腹の虫が大合唱、それを受け取る時にチラッと氷華の指に目がいった。


 指の数本に絆創膏がグルッと巻かれていた、最初は屋敷が出している賄い(まかない)弁当かと思ったが、どうやら違っていたようだ。




「おっ!! サンキュー! めちゃくちゃ腹減ってたんだよ」


「そ、そう、ただの賄い弁当よ」


「ふーん」


「何よ」


「いや、なんでも。おー! 美味そう!!」



 ランチマットから解放され現れたのは黒い弁当箱、それも(うるし)デザイン、蓋には金で菊の花が書かれている。


 ガパッと蓋を開けると、ちょっと焦げただし巻き卵、形が変なウインナー、衣が上手く出来てないエビフライ、そして焦げたハンバーグ等が型崩れで入っていた。


 下段には白ご飯を一面に敷き詰められている、もはや翔は何でもいいから胃に入れたいと考え、蓋にくっついているお箸を手に取り早速食べていく。





「ど、どう?」


「ちょっと苦いけどこのだし巻きうめぇ!!」


「そ、そう、良かったわ」


「あれ、これ賄い弁当じゃないの?」


「え? ま、賄いよ!? 私が作ればお店に出せるレベルよ?」


「ふーん、そりゃ食ってみたいな」


(良かった、もう一つのお弁当を渡さなくて………)




 ガツガツ食べていく翔を他所に、氷華はどこか安堵した表情でいた、自分の指に貼っている絆創膏を撫でながら、翔が食べ終わるのを静かに待っていた。

























 食事休憩を終えてからしばらくし、翔やメイド達は氷華が当日読み上げる為の壇上機器の設置を行っていた、スピーカーのチェックやマイクのチェック、歓談中に流す音楽の選定などの準備は夜遅くまで続き、屋敷へ帰宅した頃には日付が変わっていた。


 自室に設置されたシャワーを浴びると直ぐにベッドへダイブ、去年の冬から少しずつ準備をしてきたパーティーは、いよいよ今日の夕方から開催される。


 気になっていることと言えば、招待名簿に載っている『天羽デザイン』の事、ただの同じ名字ならなんてことは無いが、もしそれが万緒歌(まおか)の事だったら、と翔は少し考えてしまう。


 例えそうだとしても今は執事、相手は企業の社長、扱いはお客様となる。




「母さんじゃない事を願うよ、マジで」




 名簿をテーブルに投げた翔は、目覚ましをセットし、そのまま深い闇へと誘われていった。

次回は日曜日に上げられるように努力しますが、上がってなければすみませんがお待ちください。


その都度活動記録かTwitterにてご報告いたします、読了お疲れ様でした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。