色欲魔王ヨシュア
「ああようやくこの日が来たんだね。さて、それじゃあっと…あぁいけない。その前に身体を綺麗にしなければならないかなそれが初夜に赴く女性の嗜みというものだね」
「そう…行ってらっしゃい」
「ヘリエル。何を他人事のようにヨシュアにくっついているのですか」
戦いを終えた一同は、善は急げと宿屋の大部屋を取った。奮発して、景色のいい海岸沿いの、気の利いたサービスが売りの宿屋だ。
「お食事をお持ちしました」
リリスが食事を運んでくる。食事他、身の回りのことはこちらに任せてほしい、と。そう弁えている。誰にも邪魔されず、水入らずで過ごしたい、と。そういう客の要望をにこやかに受け入れるのだ。
「…ただいまリリス」
「はい。お帰りなさい。ヨシュア様。皆さん」
そう言った瞬間、聞いた瞬間、すっと力が抜けたような気がする。まあ責められても仕方がないかな、と。内心、覚悟はしているのだが、とりあえずお互い、それは忘れて、安堵した。
一方、取り残されたわけでもなく、むしろ逃げる様に酒場で集まっている三人の影があった。
「で、マリアンヌ、お前さんは混ざんなくていいのかい?」
「はぁ!? バッカじゃないの!? そんなの恥ずかしいでしょ…そのスるなら二人きりでムードとか…その…」
「…お前いい年してカマトトぶるなよ」
「いい年とか何!? 何の話かなぁ!?」
「ねえねえなんでわたしついてっちゃだめなの?」
「……ま、この先どうなるかは分からんが、とりあえずはいいか。まあフレイアもその内色気づくこともあるわなその時まで…いや、この話はいいかとりあえず呑もうぜ」
「あ、私お酒ダメだから。何でこんなマズい飲み物呑むのかホンットわかんない」
「…そういやそうだったな。まあフレイアもいる時点で分かってたさ…それじゃあとりあえず…」
ああ色気がねえことだ…とふと思いつつも、まあいいかと。ヴェートリッヒは杯を傾けた。
「というか…いいんだろうか。何というか不義理というかそういうものではないかってそう思うんだけど」
「じゃあ聞くけれど君は誰か一人を選んでほしいってそう願ったら言うことを聞くわけかい?」
「いやあ…どうだろうね。まず言うことを聞かせようとするかな」
予想外に強い言葉に、少し驚くがそれ以上にドキドキしてしまうのは毒されているのかなぁと思わないでもないが、まあ大体、得たい答えとそう大差はない。
「だろう? 言ってみれば王どころか神様だからね。一人でどうこうできるとは思ってはいないさ。…まあ男色は許さないけど」
「いやだからそれはないよ!?」
「で、ですよね…ヨシュア様…私たちの身体をまじまじと見ているのを…感じます」
リリスはもじもじと顔を紅くしながら、言う。ベッドの上に座ってこちらを見るエルレイア、ヘリエル、リリス、オルティアは既に下着姿だ。
ヘリエルは甘える様にしなだれて、オルティアは全てを受け入れる様にベッドに身を投げ出して、リリスは少し大胆に四つん這いに、エルレイアは挑発するように尻を突き出して。
「あー…うん。そうだね。何だろ…はぁ…」
「きゃ!? ぅ…ん! ヨシュア…様?」
ヨシュアは四人のいるベッドに身を委ねる。それを受け入れ…ようとしたのだが、全員の身体が思わずびくりとする。
その腕が体の至る所に伸びて、身動きできないように足すらも駆使して、そして、甘える様に熱い吐息を吹きかける。
「ぁー…えっと…ごめん」
謝罪の言葉を口にする。けれど、離れようとはしない。出来るのなら、こんなことはそもそも至ってない。むしろ、胸元に埋めた頭をさらに深く潜らせるようにして、続ける。
「僕としても、止めたいんだけど…止まらないんだ。ああ柔らかそうだなぁとかそんな風にちらちらって見ちゃって…で、いい匂いだなぁとか。いや、ほんっとうに…その」
「なるほど…ヨシュア、今、とってもムラムラしてるのね」
「…ぁああ!! もう、何なんだろう。今まで気にしなかったけど、何で上手くやれないんだろう」
「ヨシュア、気にしなくてもよろしいのですよ? 私達は、あなたを受け入れると」
「…オルティア。そう言ってくれるのは嬉しいんだけどそうじゃないんだ…うん。まあこんなことを言うのもあれだけど…カッコつけたいというかその…余裕というか…ね?」
「ヨシュア様……可愛いです」
「うぁっと、リリス!?」
「そうだね。まあ? リリスの胸に特にご執心だったりするような気がするのはとりあえず色々聞かなければね。うん。身体に」
「…ぁ。いや…うんだって仕方がないと思うんだよ。ぅ…まただ。何で僕は…」
「よし。ということであればヨシュアには存分に恥ずかしい目にあってもらうとしよう。何、遠慮はいらないよ? ああ。私達も色々と曝け出させてもらうとも」
「…ああもう! 知らないからね?」
そして、初めての夜は過ぎていくのだった。
「…やった…やってしまった…」
まあ色々と。もう忘れることは出来ないだろうという諸々を。しかし、
(…うん。でも、ありがとう…皆)
けして後悔はしない。そういう、思い出だ。
「さて、そろそろ出ようか」
「よう。もういいのかい?」
宿屋の出口。人の姿がない早朝に、待ち構えていた人影があった。
「…約束が、在るんだ」
マオウと、自らの分身とも言える神と。交わした約束。
『魔族を…未だ満たされぬ魂を救ってやってほしい』
まだ、世界の為にやらなければならないことは山積みだろう。けれど、ヨシュアは、それとは関係なしに成し遂げたいと思う。
今まで、苦楽を共にしてきた魂たち。そう、今の自分だけでもフレイアにオルティア。ヴェートリッヒにマリアンヌと。そういった者達が。
自分の知らない絶望が。叶えたかった願いが。自分を待っている。あるいは自分を待っていなくても、出来ることをしたい。マオウの願いとは関係なく、そういった世界を知りたいと。そう訴えるのだ。
「俺はいいのかい?」
「まあ君の場合は、僕の手伝いだろうからね」
ヴェートリッヒが望んだ、真の仲間。それは、まあこの先どうなるかは分からないが、いや、分からないからこそ、今の魔王に、ヨシュアの元についていくことに決めた。
(魔族の中にも、放っておけない連中がいるし、な)
「それじゃあ…いこ…」
「いやいやちょっと待ちたまえ」
呼び止める声が響く。
「…長い旅になるよ」
予想できていなかったわけじゃない。ただ、いつかの夜のように、こちらの意思などお構いなくついてきてくれる勇者を、どこかで待ち望んでいた。
「大丈夫」
「私は…もう、あなたのモノでしかないのですから、放っておかれては、困るのですからね」
「皆さんのお世話したいです。もう、待ってるだけも、嫌です」
「…ありがとう」
「ておい! 私を置いてくな!」
「あれ? いたのかマリアンヌ」
「…しかし、あれだね結構引きずるものだねあの痛みというのは」
「あのいたみって?」
「はいはいフレイアは耳塞いどこうなぁ」
「…ヴぇーとりっひ…もしかしてろりこん?」
「違うわ!」
神より世界を取り戻し、人の手に委ねられた世界。
これが正しかったのかどうかは分からない。けれど、笑って過ごせる世界の為に…否、イチャイチャするために世界を救う勇者の物語は、迷った時、これからも世界を人々の手に取り戻すための力に。そうあってほしいと、マオウは、魔王は願った。
というわけで本編終わりです。後は蛇足っぽいエピローグを。
えーっと…ええ…あれですよ? まあ流石にあれなので省略を
これにて終幕。うんまあねぇ書いてるうちに前世話とか魔族編とか色々…まあ無理ですかね。気が向いたらとかいう誰得宣言を…エタる寸前だったくせに何を言うのかって話ですかね。書き直しとかもねぇ…読んで下さった方、本当に感謝します。ありがとうございました!出来れば次話もお付き合いしてくだされば!




