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転生少女は愛されている  作者: 海雪
第3章 交流戦
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条件



「という訳で! 小鳥遊様の出場が決定しました! 」




 その様にセイラさんが決定した事を告げた後、全員が先程と同じように席へと着いたのを、確認し見届けた。その後姿勢を正して、次に進める予定があるのか一度咳払いする。




「こほん、ありがとうございます皆様。おかげで無事に小鳥遊様が参加を表明して下さいました」



「完全な脅迫」



「小鳥遊様は優しいですね。全て分かった上で納得してくれるなんて………」



「完全に無視」



「私も辛いんですよ。まぁ、後者を選んでも私にとっては万々歳ですが?」



「完全に私的じゃない!」




 逃げるならばすぐに逃げれば良かった。あの時から少し嫌な予感はしていたのだ。序列者の二人にセイラさん、さらには同学年の三人、どう考えても勝てない。ただ出場させたいだけで、ここまでするとは思わなかった。



 全てセイラさんの狙い通りであるが既に文句は言えない。仕方ないことだが、交流戦に出ると決まった以上はやり遂げるつもりだ。




「さて、皆さま、交流戦についてはまだ決まっていない事がありまして。それは他の生徒たちの出場です」




 他の生徒と言えば、詩音を呼んだ理由もそれに当たるのでは、と思ったら読み通りにセイラさんは詩音の方へと向き直し言った。




「どうでしょう? 詩音さん、出場してみませんか?もちろん本人の意思次第になりますがね? 」



「私がですか? 」



「えっ? 本人の意思次第? 私は………」



「選択肢がありました!」




 堂々とした佇まいと返事に目眩を覚えそうだった。



 セイラさんからしてみれば、選択肢も本人の意思も一緒らしい。本人が最後に決めたのであればそうだと言えるが、無理矢理に選ばれた私からしてみれば納得がいかなかった。



 その場にいる全員が詩音の事を見ている。交流戦に出場するかは本人次第、どちらかに決めたのか、覚悟した表情になった後に彼女は口を開いた。




「私、出ることにします! 」



「分かりました。その様に手続きを行っておきますね。それで他の………エリスさん、宝泉滴さん、二人も出場してみませんか?と言いたいところですが………」




 なんだか、セイラさんの歯切れが悪い様子だ。確か二人は呼ばれていない、そのせいか出場できるかは分からないのだろう。エリスと委員長の二人が持つ実力は、同じ一年とは思えないぐらいに高い。



 エリス自身は交流戦に出たいと言っていたが、委員長の方はどうなんだろう。そんなことを考えているとセイラさんがとんでもない事を言い出した。




「まぁ、その時は捻じ込めばどうとでも出来ます。何か文句があるなら消せばいいですから」



「怖っ!」




 時々コワイ雰囲気になって、そんな事を言い出すのでセイラさんは怖いのだ。人の弱みを見つけ弱点を突くのが得意な彼女は、商談相手からしてみれば敵にしたくないタイプだった。



 そういえばシア先輩は交流戦に出るのだろうか、序列第十位に収まった時期は早い方だったはずだ。回復魔法が得意な上に、近接戦で戦えると聞いた。




「シア先輩、交流戦に出場は………」



(わたくし)自身は出ません、なにせ大会規定で出場は出来ませんから………ですが、回復魔法等が使えるので裏方に回るつもりです。あちらの方からもお願いされまして」



「あぁ、なるほど」




 やはり交流戦に出場は出来ないのだろう。序列が高いと、なんらかの問題が発生して出場させられないのだ。大会自体を盛り上がらせる上で、有名どころの人物がいるなら観客は喜ぶが、相手からすれば迷惑にもなる。



 それでも聖女と呼ばれる程の逸材に声を掛けないのはおかしかった。回復魔法の使い手は全体的に見れば少ない、だからこそ上級の人物を常駐させて、様々な対策を心がけるつもりなのだろう。



 ふと思ったが、まさか学園の先生たちからも何人か大会に駆り出されるんじゃ、そう思うと怖くなってきた。なにせ、この学園の保健室にはあの先生がいたからだ。




「ニア先生は魔導具の調整に、サナーレ先生はもしもの時に保健を担当しに」



「そういえば、此処に来る途中で、機嫌が良さそうなサナーレ先生がいましたね。研究が(はかど)ると言っていましたが?」




 あの先生は気絶した患者に何か飲ませそうだ。変な薬を飲ませた罪で、大会中に捕まることがなければ良いが、そうならない様に祈っておこう。




「さて、交流戦について最後に一つだけ………小鳥遊様。本気を出さずに優勝して下さいね!」



「………は?」





















 先程まで、賑やかな場所と化していた状況から一変して、静寂に満ちた学園長室には二人しかいない。




「フフッ!………魔法省には困ったものですね。小鳥遊様を出場させろと言うんですから」



「いや、セイラ、お主は困ってはおらんじゃろ? むしろ嬉々として受け入れておるように見えるぞ?」




 学園長の目の前で、恍惚とした表情を隠さずに最新モデルのカメラを(いじ)りながら調整していた。



 明らかに、この日の為に新調したと言わんばかりだ。新しいカメラが嬉しいのか、それとも今後の事を想像したせいで笑みが溢れたのか、学園長からすればどうでも良かった。




「メイド、バニー、ナース、女教師、チャイナ、スク水、レースクイーン、小鳥遊様が恥じらう姿は見ものです」




 様々な衣装を着せるイメージなのだろう。それを着た際の想像が、脳内で勝手に再生されているのか、表情が一気に崩れて本来の真面目さとはかけ離れていた。



 なにせその様に頬を緩ませているのは、最後に一つだけ条件を付け加えたからだ。その内容が優勝を目指す事、失敗したら彼女の着せ替え人形として一日を過ごす羽目になっていた。



 そんな彼女、セイラに対して大きな溜息を吐き出した後、独り言のように学園長は呟いた。




「魔法省はどうする気じゃろうか? もしやあの子の事を利用するつもりじゃ………」



「ありえませんね。学園長も知っているでしょうが、小鳥遊様を含めた一桁の者達は、全員が化け物級の者達ですよ? 」



「そうじゃな」



「そんな者達を相手にするとは、愚か者のする事です。なにせ一国を相手に喧嘩を売るも同然の行い、魔法省が分かっていない訳はないかと」




 すかさず否定した彼女が言う通り、一桁の者達はレベルが違っていた。一国を滅ぼせる魔王種と同等の戦力を、個人で所有しているのだ。そんな相手に喧嘩を売るのは自殺行為そのもの、序列自体を定めた魔法省がそこを分かっていないとは思えないのだ。



 表から見れば英雄にされているが、裏の面からしてみれば最悪、要注意人物として見られているだろう。



 だがそれは最悪の考え、犯罪者ではない以上その様に見るのは不機嫌にさせる行いだった。もう既に二人は魔法省の考えが分かっているのか、考える素振りすら見せずに結論を出した。




「やはり………」



「魔法省は小鳥遊様の戦闘データが欲しいんでしょうね。出回っている噂はほとんど違いますから」




 本人とは明らかに違う情報が幾つか出回っている。



 それが魔法省にとってしてみれば煩わしいのだろう。序列第二位だと、本人を断定できるだけの情報や資料などが欠けていた。だからこそ交流戦という最高の場において、確実にある程度のデータが取れると思い、出場させる様に促す事を決めたのだった。




「序列第二位と決まった後、一族の者たちはお祭り騒ぎでしたね」



「そうじゃのぅ、本人の代わりに危険な依頼は、一族の者たちが変わってやっていたからのぅ、当時は魔法省も面倒を抱えておったし」



「ですね、本人じゃないことを良いことに、バカやってましたね「俺! 参上!!」とか? 「魔王の降臨だ! 崇めよ!」とか? 本人が知れば………」



「絶対に言えんのぅ」



「言えませんね、絶対に」




 お互いに顔を俯かせ、当時の一族の者達の行いを悔いているようだった。

 





 


 






 

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