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転生少女は愛されている  作者: 海雪
第3章 交流戦
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聖女と罠



 扉が開かれ入ってきた者たちは全員、私が見覚えのある顔触れだ。なんで此処に彼女たちがいるのかが分からない、なので私は聞いてみることにした。




「エリス、委員長、何で此処にいるの? 」



「よぉ! 小鳥遊。聞いたぞ、序列第二位だなんて凄いじゃないか!」



「おめでとうございます。小鳥遊さん!」



「あー、うん、ありがとう? 」




 最初に入ってきて、声を掛けてきたのはエリスと委員長だった。部屋の中で話している間、物音一つどころか気配が全くしなかったのだが、委員長による魔法を発動した結果だろう。隠蔽を含めた、複数の魔力残滓が彼女達に残っている。



 誤魔化す為に言い訳をいうと思っていたが、堂々とした振る舞いでそんな事はなかった。とりあえず二人の返事にお礼を返しておく。私はもう一人の人物に視線を向けることにした。



 部屋に入ってきた二人よりも、三人目の人物に興味がある。彼女は学生であることは間違い無いが、制服の上から法衣に似た衣服を羽織っていたのだ。金色の長い髪を持ち、穏やかな表情と空色の眼で私のことを見つめていた。




「私は法光院(ホウコウイン)アルテシアと申します。お会い出来て光栄です、序列第二位」



「たっ、小鳥遊玲夏です。こちらこそお会い出来て光栄です。聖女様」




 "法光院アルテシア''またの名を"不滅の聖女"と呼ばれる程の有名人が目の前にいた。しかも二桁最上位に位置する、序列第十位に席を置く実力者でもあるのだ。



 まさに聖女と呼ばれる程の人格者であり、聖光教に身を置いて日夜、怪我人を回復魔法で癒す日常を送っていると聞いた。魔法省だけでなく、多くの人々からも認められて慕われている人だ。



 学園の生徒であるのを知っている、それに加え確か彼女は、この学園の生徒会長を務めているはずだった。




「貴女様から聖女だなんて畏れ多い、私の事はシアと呼んで貰えれば幸いです………」



「えっと………宜しくお願いします。シア先輩」



「はい!」




 にこにこと微笑みを絶やさずに柔らかい笑顔を見せている聖女様、少し疑問に思うのだが、彼女は何故か先程から私の事をずっと見つめている。



 気になったので聞いた方が良いか迷っていると、私が戸惑っているのが分かったのか、彼女は………




「すいません。何か不快な思いをさせてしまいましたか? それなら謝りますが………」



「いえ、大丈夫です。それよりおじいちゃん? 何で彼女達が此処に、もしかして呼んだ?」




 先程から分からない事の一つは、聖女であるシア先輩を除いた彼女達、エリスと委員長の二人だ。呼ばれているのであれば分かるが、魔法を使ってまで隠れて盗聴紛いの事をしていた。



 私の問いに対して、難しそうな表情で考え込んでいる学園長が、首を捻りながら返した。




「ん〜、いや、儂が呼んだのは玲夏ちゃんと詩音ちゃんの二人に、聖女である生徒会長のみなんじゃが? 」



「その通りですが、増えても問題ありませんね。むしろ僥倖です」



「えっ?」



「いえ、何でもありません」




 やはり呼んだのは私たちだけらしい。それよりセイラさんが呟いた言葉に不安が募るが、きっと教えてくれないだろう。そんな不安を忘れ去る為に呼んだ理由を考えてみる。



 最初に学園長は、用事が二つ程あると言っていた。



 一つ目は生徒手帳を渡し、序列第二位である事を教える為だった。二つ目はそれよりも重要そうな何かがありそうだ。その何かが分からない、だが序列第十位の聖女、シア先輩を呼んだ以上は関係がありそうだと思った。




「小鳥遊様。此処に呼んだのは交流戦の事です」



「えっ⁉︎ 交流戦って、あの学園同士のですか?」



「はい、そうです」



「なるほど、私が呼ばれた事にも納得ですね! もうそんな季節ですか? 早いですね〜」



「交流戦かー、あたしも出たいな!」




 交流戦という言葉に、私以外の全員がその事を楽しそうに話し始めた。詩音は食いつく勢いで身を乗り出し、シア先輩はどこか懐かしそうにしている。エリスに至っては出場したいと思っているみたいだ。



 委員長だけは首を傾げて私の事を見ている。一人だけ話しに混ざらなかったからだろう。




「小鳥遊さん? 」



「えっと、ごめん、交流戦って何? 」



「「「えっ⁉︎ 」」」




 私が知らないという事に全員が驚愕した表情で見てくる。交流戦という言葉からはある程度、どんな大会等かは分かるが詳しくは知らなかった。




「あら、これはもしかして、しっかりとした説明が必要では?」



「そうですね、そう言う事であれば私が教えましょう。小鳥遊様、交流戦というのは学園同士の集まりであり、いわば社交場に近いと言えばよろしいでしょうか?」



「そうなんだ」



「とは言っても、それは伝統的な裏の面です」



「裏の面? それなら表は………」




 "交流"戦と呼ばれるくらいだ。他の学園の生徒たちの集まりなのは分かるが、それ自体が裏の面という事はあまり知られていないか、もしくは重要ではないと思った。



 つまりはメインとなる部分は別にあるという事だ。




「人によっては見方が様々なんですが、一般の者たちからしてみれば、面白い催し物に見えています。いつの世も人は祭り好き何でしょう。その者たちの中には生徒たちの親御さんも見学しに来ますよ」



「そうじゃよ、親御さんだけでなく。あらゆる企業からも人員が派遣されてな、優秀な生徒をスカウトしに来るんじゃよ、此れがのぅ」



「他にも、魔法省が主催者側で進行しているのです。盛り上がらない訳がありませんからね!」




 生徒たちは交流して語らうだけでなく、様々な人たちに自分自身をアピールする場でもあるわけだ。ならこの大会に参加しないという人は少なくないだろう。



 それにほかの企業からも人が来る。という事なら、魔法省、軍、警察、一流企業などの大手が来たとしてもおかしくはない。交流戦で抜擢されるのであれば、二年や三年は死に物狂いで参加を表明し出すかもしれなかった。



 だが、私には全く関係がなかった。周りが祭り騒ぎであるならそれで良い。




「………うん、分かった。けど何でその話しをしたの?まさかだと思うけど私に………」



「出場して欲しいんです!」



「えっ?嫌だけど?」




 断った影響か、全員が驚いた表情のまま微動だにせず、指の一本すらも動かしていない。先に意識を覚醒させたエリスが私を問い詰め出した。




「どうしてだよ小鳥遊、これはチャンスだぞ⁉︎ 」




 確かに、学生である者達からしてみればそうだろう。学園の卒業後には、就職や大学への進学が待っている。だからこそ必死になってしまう者が出て来るのだ。




「まぁ、別に良いです。その答えを予想していなかった訳ではありませんから」




 セイラさんは予想していたと、言葉通りの落ち着いた態度で言ってきた。そして、おもむろに立ち上がりある物を取り出す。どうやら何かが入った紙袋のようだが、嫌な予感がヒシヒシと伝わってくる。



 紙袋の中からはみ出して見えている物に加えて、今の私の状況は考えてみれば危うい事になっているだろう。




「あー、その、私はちょっと用事があるのを忘れて………」




 最悪な未来を回避しようと思い、すぐさま立ち上がり学園長室から出ようとするが………



 部屋にいた全員に邪魔された。詩音とシア先輩は微笑みながら両手を掴み、エリスと委員長は扉を守るかのように待機している。



 そして最後に、セイラさんは妖しく恍惚とした表情で、唇の端を吊り上がらせながら脅し同然で言った。




「構いませんよ? 参加しないと言うのであれば、別の事をしてもらいますから。むしろ私ならそちらの方が最も望ましい結果ですが? どうされます?」




 どうやら、学園長室に入った時点で嵌められたようだ。セイラさんが先程呟いた言葉はこの時の為に用意した、万全を期した際の策がさらに強まった結果からだった。



 私が選ぶ選択肢は二つに一つだけ、観念して交流戦に参加するか、それとも身(ぐる)み剥がされて着せ替え人形にされるかの一択だけ、私が選んだ結果は………




「………はい、参加します」



「ありがとうございまーす!」





 

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