変動
「えっ? 消えた? どういう事?」
あまりの想像を超えた事に理解が出来なかった。ただ単に誰かが、魔王種以外の魔物たちを倒したという事であれば問題ないが、そういう事ではないだろう。
突然の魔物たちの消失に驚いているのは私だけではなかった。その場にいた全員が信じられずに、様々な可能性を上げてはいるが考えがまとまっていなかった。
「どうして消えたんだ! 件の魔物たちは一体何処にいる! 」
「空間魔法では? そうとしか考えられない」
「バカな! 報告によれば魔王種が動いた様には見えないと言うではないか! それに空間魔法は我々、人類が未だに行使することが叶わない魔法だ!」
事態について把握出来ないが、何らかの方法によってその場から居なくなったのだろう。詳しい情報を知っていそうな学園長に近寄る。
「何があったの?」
「なんでも忽然と姿を消してしまったらしいのじゃ」
「魔法陣とかは? 幾ら予備動作もなしに魔法を発動させるどころか、召喚とかであれば………」
「その兆候すらも無く消えてしまったみたいじゃよ。問題なのは、魔物たちの行方なんじゃが?………」
予備動作もなしに忽然と姿を消しさるのはあり得なかった。召喚魔法でさえ、痕跡として魔法陣が出現するはずだがそれもない。
残っている可能性としては魔王種が異能を、もしくは空間魔法を使ってその場から消し去ったり。別の場所に飛ばす方法だが、動いた気配がないのであれば魔王種の仕業ではないだろう。
私が考え事をしていると、一人の人物がバァンと扉を乱暴に開けて入ってきた。その音に、会議を行なっていた全員は咎める様な視線を向けて睨んだ。
「しっ、失礼します。消失したと思われる魔物たちが、学園都市の四方に出現したと報告が入りました!」
「何⁉︎ どう言う事だ!」
「は、はい、学園都市にいる者たちから突然、魔物が出現した報告が………」
「規模の方は⁉︎」
「各区域からは約千体ほどと報告がきています。同様の規模だと………」
つまりは、最低でも約四千体の魔物たちが一瞬にして学園都市に現れ、攻め込んでいるという事だ。
魔物などから都市を守る城壁が存在しているが、そのままでは突破されてしまうのは目に見えている。だがその時一人の男、コランさんが立ち上がった。
「まずは、学園都市に向かう。賢者殿お力添えをいただきたい」
「問題ないぞ、その為に来たんじゃからな。儂は北門の方を担当しよう」
「それでは、軍は南門を、西門を二桁の者達が担当するが。残りは………」
「それじゃあ、私は東門を………」
「「「ッ⁉︎ 」」」
その場にいた全員が、私が放った一言に驚き目を見開いている。特に隣にいた詩音が慌てて私の事を止めようとしていた。
「玲夏さん⁉︎ 冗談は止めてください!死にますよ、強いとは聴いてますが!」
「詩音、私は大丈夫だから」
彼女を宥めているとコランさんが近づいてくる。
「すまないが頼みたい、出来るか?」
「隊長⁉︎ 彼女では危険ですよ!いくらあれだけの召喚獣だとしても………」
私たちを案内してくれた、猫人族の美女が止めている。やはり人手が不足していたとしても、軍人としての矜恃があるのだろう。戦闘には参加させられないと思っていたが………
「すまない、小鳥遊殿。貴殿に東門を頼みたい」
「問題ありません」
了承の言葉を受け取った彼は、敬礼を行いその場を去っていく。もう一人の彼女も目の前まで来ると、敬礼を行い一言だけ残して去っていった。
「………ご武運を」
すぐに動き出した軍の者達は学園都市へと出発した。部屋に残っているのは詩音だけ、彼女は不安そうに私を見てくる。
「大丈夫、心配しないで良いから。リヴィアを護衛として置いていくから」
「玲夏さん………」
リヴィアを召喚し詩音を守るように伝える。私はその場を後にして学園都市の東門へと向かった。
学園都市・西門
城壁に攻めて来ている魔物を、次々に倒していく光景が見られていた。黒いローブを纏った、魔法使い風の者達が魔法の雨を降らしては、魔物の数を減らしていくが数が多かった。
千に匹敵する魔物たちは、雄叫びを上げて城壁に攻撃していく。身体をぶつけては城壁を壊そうとしているが揺らしているだけだ。ただの突進による攻撃だが油断は出来ない、少しずつ揺れが大きくなるにつれて戦闘に参加した者達の不安が増しているのは目に見えて明らかだ。
そんな時に一人の人物が魔物の群れに突撃していくのが見えた。豪華な鎧を身に纏った、美麗な男が一振りの剣を掲げ魔物を斬りつけた。
「はぁっ!」
「グギァアアアーーー!」
斬り付けられた魔物は雄叫びを上げて倒れる。魔物の身体には深々とした傷痕がついている上に力尽きたのかピクリとも動いていなかった。
「次だ!」
すぐさま、剣を握りしめて魔物へと斬りかかる。一撃の下に次々と地に伏せられていく魔物、城壁を壊そうとしていた魔物たちは雄叫びを上げ、その男に突撃していくが………
ヒュッという空を引き裂く音が聞こえると同時に魔物が苦しみ出した。
「ガァアアアアーーー」
さらに立て続けに、ブスッと魔物の身体に無数の矢が突き刺さる。魔物を絶命させていく、多くの者たちはその光景に釘付けとなっていた。
「援軍だ! 城から円卓の十三騎士団が来てくれたぞ!」




