第三回・不審船団を撃破しうるか? その二
モットナリの戦艦、三本ノ矢には航空艇が三十艇搭載されているという。
サミダレはこれを防ぐべく、現在装填中の蒸気鉱石火炎弾を全て徹甲散弾に取り替えるよう命じた。
『あるぇー? 逃げるのぅー?』
モットナリが煽る。サミダレはしばし沈黙、煽り返すかどうか考えた。
文言を考え出した瞬間に、艦橋へ報告が入った。
徹甲散弾の装填を完了した、とのことだ。
軍帽をかぶり直して、サミダレが命じる。
「できるだけ近づいて、航空艇をやれるだけ撃ち落としますわ! 全速前進!」
サミダレの乗艦、黒蓮時雨の長所は高速かつ弾丸の種類が豊富である点だ。
その分、装甲が脆い。
しかし、今サミダレは防御面での不安を気にしている暇がない。
即時に考えた作戦としては、モットナリの攻撃威力を三十パーセントまで低下させるのがメインだからである。
すなわち、航空艇三十の内二十一艇を撃沈させなくてはならない。
少々面倒ではある。だが、航空艇より強力な装備は、三本ノ矢には搭載されていないはず。
ならば、徹底的に航空艇を破壊すべき。
サミダレは気を引き締める。
『(*´ω`*)~♪』
送られてきたパンチカードを見る限り、モットナリはかなり余裕といった様子である。
若干イラっとしたけれども、サミダレに猶予はない。
持てる気力を全て航空艇破壊につぎ込むことを彼は決心している。
「……来ましたわね!」
三本ノ矢のハッチが開き、中津国型航空艇が発信し始めたのを確認。
サミダレは命じた。
「ギリギリまで引き寄せて。そして持てる全火力で撃ち落として差し上げて!」




