第一回・物資輸送を護衛せよ!
空を切り裂く六つの影がある。
内訳は商用飛行船が二隻。
航空戦艦が四隻だ。
虚数海を超えて飛ぶ航空船団は、空賊の襲撃を警戒している。
「笑士国で私掠船免状が大量に発行されたそうですわね?」
船団を構成する戦艦、黒蓮時雨の艦長であるサミダレは、情報確認のため上記の内容のパンチカードを送った。
「らしいな。よっぽど重課金してバラまいた奴がいるらしい。このクエストにも出張ってくるかもしれんから、気をつけておけ」
同じく護衛を務める戦艦、天狼星艦長、アマツマガボシの返答は上のとおりである。
サミダレは了解のパンチカードを返送する。
「ところで大伴彦麿さま?」
「何でおじゃる?」
「さきほどから貴艦の方角に不審影群があるとわたくしの観測員が伝えていますの。気づいていらして?」
護衛船団の一員、戦艦応天門ノ火を操作する大伴彦麿とサミダレはパンチカードのやり取りをした。
「ああ、気づいておじゃるよ。ほほほ、一捻りにしてやるでおじゃる」
「返り討ちにならないようお気をつけになって?」
慢心こそが危険なのだ。
サミダレは心得ていた。
現に、黒蓮時雨の二時の方角から急速に近づいてくる大型飛行船がある、という内容のパンチカードをクエスト参加プレイヤー全員に送付した。
「そっちが本命かもねえ」
戦艦信天翁艦長、みらくる☆あんずからのパンチカードは大いに納得できる。
サミダレが観測員から得た情報によると、不審影群は輸送船団である可能性が高い、とのことだった。
「でも、あんず思うに、輸送船団も注意しないといけないだろーね。きっと爆薬を載せてるよ」
「ふうむ、ではすぐに砲撃警告を出しまするかの。麿は連中を片付けるゆえ、ご三方は大型飛行船を頼むでおじゃる」
「了解した。じゃ、一応クエストリーダーのあたしが警告しとく」
サミダレにアマツマガボシからのパンチカードが届くや否や、天狼星が砲撃を開始した。
「ま、待ってくださいまし!?」
「何だい、サミダレ。あんたもあたしの弟なら覚悟決めてぶっ放しな!」
サミダレはため息を吐いた。
クレイジー・スチームワークス・クロニクル。
日本国内で六番手のVRMMO。
プレイには課金が必要ではあるけれども、和風スチームパンクという珍しい世界観を持つこのゲームには根強い人気がある。
今、サミダレを始めとする四人のプレイヤーは、護衛任務クエストを受けていた。
激戦の予感を覚えながら、サミダレは軍帽とツインテール、その他身なりを整えて、命令を下した。
「全砲門、砲撃用意! 目標は二時の方角、不審大型飛行船ですわ!」




