episode:25
今日は森の奥の探索を行う。
父様にも一度奥には何があるのかを聞いた事があるのだが…
中盤で出るフォレストボアが騎士団でも限界なため、奥へは行った事がないらしい。不要なリスクは背負えないと言う事だろう。
領主である父様が死んでしまったら大変だ。
今日は、安全第一に、探索をしに行く。
出来るだけ危険は避けるのだ。
門を出て森に向かう。
装備はパモスさんに作って貰った、ミスリルの剣とフォレストボアの革にミスリルパウダーを用いて硬くした革鎧を着ている。
ミスリルの剣は僕の9歳の誕生日の時に自分の腕にあった物を装備しなければいけないといってくれたのだ。普通に買ったらとても高いだろう。後々恩返しをしたいものだ…。
森の入り口に到着した。門は気配遮断を使えば気付かれずに素通り出来るようになった。気配遮断持ちの人が侵入してもこの町では対処の方法がない…まぁ、こんな田舎村に実力者が来ることはないのだが。
森の入り口をスムーズに駆け抜け、中腹に差し掛かる。
今の僕のスピードなら10分ほどで辿り着ける。
途中でフォレストボアが出たが、黄色ボールで麻痺させ一斬りにする。お肉は勿体無いが今日は無視してそのまま奥へ進む。
奥に差し掛かった時に危険察知が反応を見せる。
何かがくる…
ビシャッァ
「後ろか…」
咄嗟に横に飛び退き、青色ボールを地面に投げ凍らせる。
ドカーン…木が粉々に砕け砂煙が立ち上がっている。
姿が徐々に見えてきた。
「蛇…これはレッドスネーク」
図鑑で見た事があった。B級魔物のレッドスネークだ。
とても大きく長さは20mほど、太さは直径6mほどあるのではないだろうか。極太、極長だ。それに加えて赤い皮膚は硬く、口元にある大きな牙はどんな獲物も一突にし猛毒で仕留めると言われている、凶悪な魔物だ。こんな大きい魔物がずっとこの森にいたのかと思うと寒気がする。
もっと早い時期に森から出てきていたら父様一人でなんとかなっただろうか?この硬い皮膚に剣では中々通らない…
酷い災害になっていたかもしれない。
僕はボールを連続で投げる。油断はしない。
色は黄色1、青色2だ。
雷の通りやすそうな口元とデカイ図体を滑らせるため足元付近を凍らせた。
ビリビリビリビリッ
怒りだし動き始める。口元も外側は硬い皮膚で覆われているようであまり効果がないようだ。
ズドーン…凍った地面に滑ったレッドスネークは横に倒れる。
これだけの巨体が倒れると凄い迫力だ。地面が大きく揺れた。
その隙に剣を一閃するが表面に傷が付いたくらいで致命傷を与えるのは難しそうだ。能力値任せに振るう事も出来るが…剣がダメになる可能性もあるし、そんな事をしなくても僕には勝つ方法がある。
僕は赤色のボールを食べ攻撃力を上げる。
そして先程と同じく黄色のボールを取り出す。そして今度はボールに魔力を込めて行く。黄色のボールからは先程の雷とは比べ物にならないくらい激しい雷が発生している。
それをレッドスネークに投げつける。
ビリビリビリビリビリビリビリ
ギャギャァァァァ
そこには一瞬で絶命した、レッドスネークが横たわっていた。
「ふぅー上手くいった」
この技は、ボールの威力がイマイチ足らなくなってきた時に何か応用出来ないかと色々考えていた時に、偶然魔力を込めて見たら威力が増幅したのだ。それからは限界を試しつつ、増幅されたボールを使ってどれくらいの威力になるのか実験の日々だった。
結果的に言うと威力はおよそ2倍〜8倍程度までコントロール出来る。魔力が物凄く減るので今はそれがくらいが限界だ。
8倍のボールを作るとなると、6回ほどが限度だろうか?
普段は使っても3倍〜4倍なので十分だ。元々威力があるので強い魔物が出ない限り使う事もないだろうと思っていた。
フォレストボアには2倍で十分だったからだ。
やはりこの能力は使い勝手がいい…油断しなければ負ける事は早々ない。勿論、初めてのB級魔物だったのでA級が出てきたらわからないのだが…B級程度なら余裕があった。
「このお肉と皮どうしよう…いいものだと思うけど持ち帰るすべがない…」
ユニークスキルのアイテムボックスまたは時空魔法さえ覚える事が出来れば…
無い物ねだりはしても意味がない。
諦めて奥へ進む。
探索していると、色々な魔物に出会った。
浅い場所や中腹には一角兎やゴブリン、フォレストボアくらいしかいなかったのだが、奥にはオーガやワイルドウルフなど初めて見る魔物がいた。縄張りから出ないようなので安心だが、出てきたらとても危険だ。B級魔物のひしめく森…こんな田舎になんであるんだか。
それにしてもlv上げや経験を積むのに良い狩場である。
探索しに来ただけだったのだが、夢中になって狩りをしてしまった。
気づくとお昼を過ぎていた。
そろそろ進まないと家に帰る時間に間に合わなくなるので少しペースを上げて進む。
奥へ進んで行くと…遺跡?のようなものを発見した。
「なんだろうこれ…昔の文字かな?」
神殿のような外観でトンネルのような感じで扉はなく、奥へ広がっている。入り口の上の方には見た事のない文字で何かが書かれている。
少し覗いて見ようと近づく。
特に何も起きない…
そういえば本で読んだ事がある気がする。
古い文明時代の文字で描かれた洞窟や、遺跡の話を。
「ここは、ダンジョンなのか…」
ダンジョンはとても危険だ。しかし貴重なものが取れるらしい。
未発見のダンジョンは何があるかわからないのでとても危険だ。
初心者はダンジョン都市などの管理されたダンジョンで訓練を積んでから、普通のダンジョンに挑むらしい。
これは冒険者の心得という本からの知識である。
「きになるが…一度帰るか」
僕は好奇心を押し殺し一度帰宅する事にする。
先にパモスの所へ寄る。
「パモスさん…相談が」
「おう、なんだなんでもいってくれ」
僕は森の奥の事を話した。
素材の件である。
「なるほどな、そりゃ勿体ないな。それにしてもそんな大物よく狩れたものだな…まだ色々隠してそうだが詮索はしないでおく」
「ありがとうございます…町の役に立つものが多いと思うので捨てていくのも勿体無いんですよね。奥にいる魔物から町を守るためにもなんとかしたいです」
「仕方ない…一時的に俺のマジックポーチを貸してやる。鉱石などを保管しているものだから貸せるのは一時的だがいいか?」
「マジックポーチですか?」
どんなものか聞いて見ると。魔道具の一種でダンジョンなどからたまに出る貴重なものらしい。袋の中が拡張されていて、通常より何倍もの量のものを入れられるとの事。
そして物凄く高いらしい…
「全部は入らないが、素材別に分ければある程度は入るだろう」
パモスさんにマジックポーチ(大)を借りて急いで森へ戻る。
今度は素材を拾うだけなので全速力だ。
戻った時には食べられていたりしてないものもあったが、レッドスネークやアビスボア、オーガなど無事な素材も多くあった。
剥ぎ取りをし、入れれるだけ袋に詰めて急いで帰る。
「戻りました!」
パモスさんに袋ごと渡す。
「おぉぅ…って早すぎるだろ」
あっ 帰宅時間が迫っていたので自重するのを忘れてしまった。
「はぁっ まあいいか…素材を使いやすいように加工は任せろ」
「はい、今までの装備などのお礼も兼ねてるので好きに使ってください。一部は町のために何か作って貰えると嬉しいです」
「おう、有り難く貰っとくよ。と言っても町の者以外に作るやつもいないからな…何か案があれば言ってくれ!」
「では…騎士団の装備の強化をお願いしたいです」
「わかった…任せておけ。お前が学園から戻る頃には行き渡っているだろう」
パモスさんにお願いをして帰宅する。
本当は父様にだけは話した方が色々とスムーズなのだが…
どこまで話すか。普通に話しても信じて貰えない事が多い。
やはり学園を卒業する頃が妥当だろうか…
冒険者をするので実力が上がっていてもおかしくないのだ。
明日はダンジョンを覗く予定なので早く寝る事にした。
ご飯を食べ、少しダンジョンについての心得の部分を冒険者の心得から知識補完をする。そしてそのまま眠りにつくルイフであった。