Episode48 ベルセルク艦隊
船の材料が集まった。魔法で切った太い丸太1本に、太い枝5本。僕たちはそれを海の近くに置き、魔法や剣を使って船を仕上げていく。
パキッ!パキッ!コッコッコッ!
僕とバーロンはそれぞれ丸太に剣を打ち付け、切れ目を作って行く。僕は右からバーロンのスタート位置へ、バーロンは左から僕のスタート位置へ剣を打ち付けながら回っていく。
パキッ!パキッ!コッコッコッ!
そのような音が何度もし、丸太に楕円形の深い切れ目が出来た。
「シャイニングブレード!」
マリアはそう唱えて、光の刃を現出。その刃は切れ目の内側を通り、皮が厚くスライスされた。僕とバーロンはその端と端を持って横へ。そして、また剣で打ち付け始める。
パキッ!パキッ!コッコッコッ!
すると、またそのような音が響きはじめた。
その一方で、テーラはナイフを使って、枝の尖った部分を汗を流しながら、根気よく削っていた。
サクッ...!サクッ...!サクッ...!
鉛筆をカッターナイフで削っているような音とともに、その部分はどんどん剥がれ、地面の上に蓄積していく。
残るはニコラスだが彼には見張りをさせた。使い走りのようになってしまうが、作業中に襲われたりしてしまうと、対応が遅れて、危険が及ぶ。そこで、彼には見張りを任せたのである。なぜなら、視力が良く敵に早く気付け、銃である程度の応戦は出来るのだから。そこまで説明をしなくでも、彼は承諾してくれたのだが。本当にありがたいことであった。
こちらでは、僕にバーロンにマリア。
パキッ!パキッ!コッコッコッ!
「シャイニングブレード!」
あちらでは、テーラ。
サクッ...!サクッ...!
それを、銃を持ったままのニコラスが見守る。
その安心感と効率の良さで僕たちの作業はどんどん進み、丸太の部分が完成。ここまで、約2時間半。見ると、テーラは既に尖った部分を剥ぎきっている。僕たちはマリアに仕上げの丸太の研磨を任せ、テーラを手伝いに行った。
ザクッ!グシッ!グシッ!
初めに僕が魔法を使って縦と横に枝を切って板を作っていく。それから、「モールド」でオールの形を作っていく。それを5本繰り返し、テーラとバーロンに研磨させ、切り終わった後は僕もそれに加わり、マリアもあっちの研磨が終わるとこっちの研磨をし始めた。
そんなこんなで、約3時間。丸太と合わせて約5時間半。僕たちはついに丸太を使ったカヤックを完成させた。だが、既に月は空の真南にある。この真夜中に出航するのは危険過ぎる。夜は恐ろしい怪物がたくさんいるからである。そこで、僕たちはカヤックを同じ場所に置いておき、近くにテントを張った。
そして、次の日。朝早く僕たちは起き上がり、カヤックの所へ。そこには、まだそれがあった。
「行くか。」
僕は言う。他の4人は頷き、出航の準備を始めた。
まず、みんなで海に平行なカヤックを垂直に。続いて、僕、テーラ、マリア、ニコラスの順に乗り、それぞれがオールを持つ。最後は、バーロンが丸太を押し出して、海の上でその中に。後ろのオールは片手でこちらに持ってきた。
すると、見事、カヤックは浮いた。僕は後ろを向き、
「バーロン!掛け声を頼む!」
と言う。すると、バーロンは
「わかった。」
と言い、続いて、
「1、2!1、2!1、2!1、2!1、2!」
と掛け声が聞こえる。僕たちは「1」の時に右へ、「2」 の時に左へオールを掻く。曲がる時は「1」を繰り返して右へ、「2」を繰り返して左へ、止まる時はオールを水に打つ。
そんな風にしてしばらく進んでいると、地響きが起こり、目の前の海水が広い範囲に渡って、泡立った。
「止まれぇぇぇっっっ!」
バーロンがそう叫んだので、僕たちはオールを水に打ち付ける。それを何度か繰り返してカヤックは止まった。
ザッパァァァァァッッッッッン!
そして、海の中から水晶のような輝きを持つ帆船の艦隊が浮き上がって来て、あちこちへ水を押し流した。その大きな影は俺たちの小さな船を完全に覆う。さらに、帆や側面、バウスプリットなどから塩味のする沢山の雫が滴っていた。