Episode38 双剣のエフィスト(前編)
●今回初めて登場するアイテム●
クロスソード
片刃の双剣。二刀流を使う者たちにとって、一番メジャーで、初心者にも扱いやすい。
ドッゴォォォッッッン!
僕のブレイズドラゴンとエフィストのゼウスキマイラの衝突は、凄まじい激突音ととてつもない衝撃波を生む。
その衝撃波に押さされたこともあってか、僕たちはお互いのパートナーを後ろへと退かせた。ブレイズドラゴンが頭をブルッと振るう。見ると、そこには打撲痕が残っていた。にも関わらず、ここから見る限り、敵方にはダメージを負っていない様子だ。戦いに支障が来される程ではない。それはたとえ、負っていたとしても、だ。
「くっ....あっちが優勢かっ...!」
俺は認めざるを得ず歯軋りをする。と、エフィストは不適な笑みを浮かべながら、
「どうした、リドナー!お前の実力はそんなものか!?」
と言って来る。しかし、そんな挑発には乗らない。下手に近付けば、ゼウスキマイラの攻撃をまともに受ける恐れがある。
「ゼウスキマイラを恐れているようだな!では、こちらから近付くだけだ!」
ビュゴォォァォォッッッッッン!
大きく、風を切るような、尋常を超えた音がした。ゼウスキマイラが猛突進をして来たのである。あの速さでは避けきれない。そうとっさに判断した僕は、無難に
「プロテクト!ロングリーチ!」
と唱えた。すると、僕の回りに巨大なシールドが生じ、ヤツの突進を跳ね返した。
見ると、ゼウスキマイラの頭にも痕が出来ている。流石のゼウスキマイラも少し食らったようだ。
「お前はやはり強いな。」
エフィストにそう言われて、
「当たり前だ。どれだけ修行を積んできたと思ってる。」
と返して、自らのパートナーに回復魔法を掛けた。それから、ブレイズドラゴンもろとも瞬間移動して彼の後ろに回る。
「火炎放射!」
人間の動体視力は対処しきれないほどのスピードで炎が放射された。
「なっ...!?」
エフィストは目を丸くしながらも、火炎放射を振り向き際、ゼウスキマイラの後ろ足で払ってしまった。
「なるほど...。瞬間移動か!ならば...!」
ビュゴォォァォォッッッッッン!
また、ゼウスキマイラが猛突進を始める。距離はさっきよりも近い。それに、あの速度。すぐに激突すると思われたがそれは違った。
「魔力よ、解き放て!」
そう言って、手を翳した瞬間、人並外れた魔力波が放たれる。それは、ヤツの減速を誘い出した。そして、僕はその内、瞬間移動で後ろへ。さらに、火炎放射を放つが、そるが当たったのはヤツの残像に過ぎなかった。
そして、ゼウスキマイラの動きが止まった。僕は、それを認識するやいなや、高速でゼウスキマイラに突っ込んだ。そこで、大量のシャインホークが出現。さらには、光球の雨を浴びせてきた。
僕はその間を上下左右にくねくね避けながら、時には光球を潰し、時にはシャインホークをソードビームで倒したりしながら、どんどんゼウスキマイラに近付いていった。それにつれ、横方向に高速の光球も追加されてくる。おそらく、ゼウスキマイラが放っているのであろう。
僕は上からの光球をブレイズドラゴンを信じて任せ、自らは前からの光球を対処した。ブレイズドラゴンは上からのをかわし、僕は前からのを跳ね返すか潰すかをする。
「火炎放射!」
と叫んで、一部のシャインホークを倒させることもする。
そして、ついに僕はエフィストの目の前へ来た。と、そこで彼は今まで以上の不適さで微笑んだ。2つの唇の間から、白く輝く歯が覗いている。
「ノヴァエクスプロージョン。」
彼が冷静な赴きでそう唱えた瞬間である。ゼウスキマイラを中心に強烈な光の爆発が起こった。僕は、とっさに「プロテクト」で防ぐが、ブレイズドラゴンの方には手が回らず瞬時にして召喚魔石に戻ってきた。
僕は心の中でブレイズドラゴンにお礼を言いながらもゆっくりと地面に降り立った。その頃には、辺りを包んだ光は消えていた。まだ、目をろくに使えない状態ではあるのだが。そして、彼の声。
「お前が強くなっていることが知っていたが、流石に驚いた...。まさか、コイツの鍛え上げた『ノヴァエクプロージョン』を『プロテクト』で防ぐとはな。」
その方を見ると、ゼウスキマイラから降りるエフィストがいた。目を凝らせばぼんやりではあるが、彼が本当に驚いているのが見て分かる。と、そこで目が像を結び、エフィストや周囲なとがくっきりと見えるようになった。
まず、僕は次々と魔法陣の中へ消えていくシャインホークに囲まれていた。あれほどの光の大爆発があったのでは、当たり前と言えば、当たり前なのだが、エフィストのやり方がほとんど変わっていないのが腑に落ちない。最終的な勝利を重視した、全体主義的な思考。簡単に言えば、独伊のファシズムのような思考をしている。
次は、ゼウスキマイラ。ソイツは魔法陣の中へと消えていた。おそらく、エフィストが退かせたのだろう。
「って、ことはアイツ、怠慢で勝負する気か?」
僕はそうぼやいた。
そして、最後は当のエフィスト。その両手にはそれぞれ白光りの片刃の剣が1本ずつ、合わせて2本が握らていた。彼は、自らの宣言通り、二刀流であったのだ。