表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
24/164

Episode23 鎧蠍となったクリス

 その蠍は、信じられないスピードで突進を繰り出してきた。それも、背中を打って動けなくなったバーロンとテーラに向けてだ。

 至近距離で黒い波動を食らった痛みに耐えながら、

「危ないっ!」

とだけ言った。それで、精一杯だった。これを聞いた2人は痛みで動かなくなった体を無理矢理、動かして、紙一重でその突進をかわし、テーラはナイフを投げた。しかし、蠍の鎧は堅く、あっさりと弾き返されてしまった。

 凶虫ブルータルにもあの巨人にも、サキュバスにだってコアという弱点があった。その場所は色々だったが、全てにコアがあった。しかし、この蠍にはコアがない。少なくとも、一目ではわからない。

 そして、その蠍が今度はこちらを向いた。すぐさま、僕は

「女神よ、我に癒しを!スーパーヒール!」

と唱えた。これで、僕の魔力は一気に半分までに減少した。しかし、そんなことを気にしている場合ではない。それに、エリーナさんが言っていたではないか。僕は神宿しゴッド・ドウェルだって。僕の魂には神の子が宿っている。いわば、半神に近い存在と言うことだ。普通の人間より、魔力の回復スピードが速くたって良いはずだ。

 僕はそれを信じて、まず「ドローイング」で遠くに飛んでいったロンギヌスを引き寄せた。そして、残りの魔力のさらにその半分を剣に魔力を込めた。

 ギュォォォォォン!

と、蠍は人間が変化したとは思えない吠え方をした。ヤツは大きい方の鋏を開けて飛んできた。筋肉が剥き出しになっている。僕は、そこへソードビームを放った。すると、

キャァァァァァス!

蠍は叫んでから、怯んだ。

 そこへ、マリアが紫雷の矢を放つ。バーロンは「ハーディ」をかけてもらった剣で斬りにいく。テーラはナイフを投げ、ニコラスは銃を唸らせる。

シュバ、シュバ!キーン!シュンッ!ズドドド...!

さまざまな音が鳴り響く。

 しかし、全て防がれたようだ。紫雷の矢は分厚い殻で受け流され、「ハーディ」をかけた剣もその殻を通しはしなかった。蠍が尾を振ったので、バーロンは後退した。さらに、その尾によって銃弾が全て受け止められる。僕は残り1/4ほどしか魔力が残っていなかったが、何とか立ち上がることが出来た。

 続いて、僕は残りの魔力をロンギヌスに込めて、ソードビームを放った。狙ったのは尾の細くなった部分。そこは一瞬にして千切れた。千切れた尾は弱々しく動いている。もちろん、それ以降、意外に厄介な尾の攻撃は起こらなくなった。

 それから、僕は

「僕は魔力が足りない。それまで、耐えてくれ。」

皆にそう言う。すると、全員が頷いてくれた。彼らはかわしては攻撃し、かわしては攻撃しのヒット&アウェイの繰り返しだったが、これが一番安全で確実にダメージを与えられる方法だった。

 そんな中、僕は考えていた。ヤツにも弱点はある。サキュバスは剥き出しになっていた。血のような暗い赤色をしていた。そして、全て単独の球体だった。ん?単独の球体?変身直後に見たあの目は単独の球体だった。それに、目の中央が赤くなっていた。十分可能性はある!

 そう考え至った頃には、魔力はほとんど回復していた。僕は、

「モーメント!」

と唱えて、蠍の前に立ちふさがり、さらに

「クロスカリバー!」

と唱えて、目を体ごと貫いた。すると、目から大量の血が吹き出す。気持ち悪かったが、目がコアだったことがわかった。

 そして、中から血だらけになったクリスが現れ、杖をつかみ呪文を唱えようとした。

「マーダ...」

しかし、その前に彼は力尽きた。

僕は出来るだけ血の少ないところを掴んで茂みの中へ放り投げた。バッファル島で死体遺棄をすると、補導はされるが、犯罪ではない。前科にはならない。ましてや、島がこの状況で補導されて旅が邪魔されることもない。その時の僕の頭には、犯罪でなければ良いという考えがあった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ