表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
96/106

92話 結界の解除方法


「結界は解除できないのか? メシアとアーロンが戻ってきた以上、屋敷に行く理由はねぇだろう?」


 確かにクロさんの言う通りだ。

 目的がなくなった以上、無駄な戦闘は避けた方がいい。


「そうだな。撫子、早速で悪いんだが、解除できるかやってみてくれないか? 今俺たちはデュークの結界に閉じ込められている」

「はい、やってみます」


 エルヴィスさんも同意らしく、撫子さんに事情を説明し協力を求める。

 そしてクロさんも含め三人で結界の端へと向かった。


 キュー。

「え、キュアちゃんも行くの?」

 チュン。


 大人しく待っていようとしていたのに、キュアちゃんはそれを許さない。確認もせず三人の後を追っていくから、仕方なく私も恐る恐るついていく。


「キュアアーティ、穂香?」

「すみません。キュアちゃんがどうしてもついていきたいらしくて」

 キュー。


 すぐエルヴィスさんに気づかれ、恐縮しながら答える。キュアちゃんは元気よく返事。余計に申し訳ない。


「まさか、結界を解除できるのか?」

 キュキュ。


 クロさんの問いに、キュアちゃんは全身を横に激しく振る。

 どうやら解除はできないらしい。


 じゃあ、なんで?


「もしかして方法を知ってるの?」

 チュン。


 撫子さんが聞くと、今度は縦に振った。


 解除はできない。

 けれど方法は知っている。

 つまり――私の能力では解除できないということか。

 まぁ、それは分かっていたことだから仕方がない。

 ショックでもなんでもない。


「だったら撫子さんが、キュアちゃんを使えばいいんだね?」


 私が前向きに提案すると、逆に異様な空気が流れ、皆の視線が集まった。


 私、おかしなこと言った?


「それは無理だろう? キュアアーティは穂香さん専用武器だ。他人は使えねぇ」

「……キュアちゃん、落ち込んでますよ」

「あっ?」


 クロさんにバッサリ否定され、撫子さんにはため息混じりに指摘される。


 慌てて視線を戻すと――

 そこには、滅茶苦茶落ち込んでいるキュアちゃんがいた。


 キューン。

「キュアちゃん、ごめんね。もうそういうこと言わないから許して」


 慌てて抱きしめ、頭をなでなでする。


 そうだよね。

 キュアちゃんは私の武器というより――大切なパートナー。


 それなのに、私の配慮が足りなかったせいで傷つけてしまった。

 もう貸したり譲ったりなんてしない。


 するとキュアちゃんは許してくれたのか、甘えるように体を寄せてきた。


「それにしても、キュアアーティが解除方法を知っているってことは……魔族の古代魔術なのか?」

「かもしれない。クロ、専門家を呼べたりしないか? 詳しく調べたい」

「ああ。旅館に戻り次第、すぐ手配しておく」


 エルヴィスさんとクロさんは仮説を立て、対策を練り始める。


 護りし戦士としてだけでなく、考古学者としての血も騒いでいるらしい。

 いつの間にか少年みたいに目を輝かせている。


 時間を忘れて本の虫にならないといいんだけど。

 私が監視しないと、この人きっと駄目なんだろうな。


「エルヴィスさんって探求心すごいですよね?」

「うん。メシアのために博識になるって言ってたけど、もともと探求心の塊だったと思う」


 撫子さんの目にも、そう映ったらしい。

 二人で微笑みながら、エルヴィスさんを見る。


「二人してどうした?」

「旦那がガラにもなく、目を輝かせてるのが珍しいんだろう?」


 そんな私たちをエルヴィスさんは首をかしげるが、クロさんにはすべてお見通しだった。


「は、俺が?」


 本人には自覚がないらしく、きょとんとする。

 そんなエルヴィスさんも、なんだか可愛らしい。

 クロさんも含め三人で笑うと、エルヴィスさんは恥ずかしそうに咳払いした。


「さっさと結界を解除するぞ。撫子、出来るか?」


 いつもの表情に戻ると、和やかな空気も終わりを告げる。

 どうやら結界の端にはすでに到着していたらしく、見えない壁を叩いた。


「――キュアちゃん、どうすれば解除できるの?」

 キュキュキュ。


「え、グリップを持てばいいの?」

 チュー。


 私は小声でキュアちゃんに問いかける。

 すると、なんとなく言いたいことが分かり、グリップを握りしめた。


 すると――


 キュアちゃんの意思が、はっきりと頭の中に流れ込んでくる。

 そして私は、結界の解除方法を理解した。


 確かに、私の力だけでは到底無理。

 だけど、メシアの力が加われば解除できる。


 ……いや。

 メシアの力だけでも、なんとかなる?


「……すみません。多分、私だけでは無理だと思います。解除方法も、なんとなくしか分かりません」


 申し訳なさそうに謝る撫子さん。


「それなら、撫子さんの浄化の力を壁に発動させて。後は私とキュアちゃんでやります」

 キュアキュア。


 自信はあまりなかったけれど、もう後ろ向きにならないと決めたから。

 胸を張り、迷いなく指示を出した。


「分かりました。それでは行きます」


 ――バシン。


 台詞は丁寧でも、行動は凄かった。

 撫子さんは見えない壁を、迷いなく力を込めて一発殴る。


 空間が揺れ、ヒビが入る。


「イグニション!?」


 衝撃過ぎる光景に驚き、タイミングがズレる。


 それでも結界は――


 木っ端微塵に崩れ落ちた。


 ――どうやら、ほんの少しだけ足りなかったらしい。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ