第7章 王立図書館の章 第91話 最深部、その先へ
「定番はどっかの本を動かすと扉が開く、とかなんだがなぁ」
「定番なのですか?」
キサラが俺の呟きを捕らえて問う。
「そうだな、定番ならな。いいからキサラは本を探してくれよ」
「判りました」
キサラから離れて俺は最深部の一番奥の棚からもう一度確認することにした。
棚から本を一つ一つ取り出してみる。蔵書数からして途方もない回数になりそうだ。
順番に本を取り出してみるが特に何も起こらない。他なの左端の上段からから順に取り出し始めてその壁の三分の一ほど来た時だった。
「ん?」
少しだけ違和感を感じた。何かの結界を抜けた感じがしたのだ。前にここを探した時は感じなかったものだ。
「この辺り、何か変だな」
俺は違和感を感じた辺りを重点的に探し始めた。
特に怪しい本もない。どの本を取り出しても何も起こらない。
「ちょっと待てよ」
俺はあることに気が付いた。その辺りは古い歴史書(但しその殆どが偽書らしい)が並んでいるところなのだが、本の並び順が時代に沿っていないのだ。
俺もアステア国の歴史に詳しい訳ではないが一通りはドアン教室で学んでいた。現在のアステア国になる前の歴史書なので正史であっても偽書であっても、この最深部に保管されているのだ。
「これをちゃんと並べる、とか?」
何でもいいからやってみる。何も起こらなくてもダメ元だ。
「ん?」
さっきより、より確実に結界を通り抜けた感じがした。今いる所がさっきまでと同じ場所ではない、という感じだ。
辺りを見渡してみる。向かって右の方向に何か黒い霧のような物が見える。
「キサラ!」
俺はキサラを大声で呼んでみるが反応は無かった。
「一人で来い、ということか」
ちょっと違う気もするが、俺は一人でその霧の中に入って行った。
黒い霧を抜けると直ぐにまた図書館に出た。但し、さっきまで居た最深部とは違う。そしい、そこには。
「なんだ、来たのか」
サーリールが居た。
「来たのか、じゃないぞ。黙って行ってしまうから皆で探していたんだからな」
「すまないな。ここに入ることが出来たのだが一度出てしまうとまた戻れる保証が無かったのでな」
それは確かにそうかも知れない。偶然入ることが出来ても次も入れるとは限らないのだ。もしかしたら俺が入った方法とも違ったのかも知れない。
「まあいい、それで何か見つけたのか?」
「まあな。ここには特殊な希覯書しか置いていないようだ。そして、それは転生者について書かれたものだけ、ということらしい」
「転生者についてだけ?とすると俺たちに関する何か、ということか。それこそ俺が探していたものだ。それで元の世界に戻る方法が書かれた本は存在したのか?」
サーリールは今手にしている本に目を落とした。
「今私が持っているこの本がそうだ。確かに殿世界な戻る方法が書かれている」
「本当か。いったいどんな方法なんだ?」
サーリールは浮かない顔をしている。聞かれたことに応えたくない、という感じに見える。
「なんだ、どうした?言えないのか?」
少し覗き込んでみたが、俺にはさっぱり読めなかった。アステア語でも無く勿論日本語でも無かった。
「それは何語で書かれているんだ?」
「これはこの世界の言葉ではない。これは私が居た世界の、私が居た場所で使われていた言葉だ」
サーリールが居た世界?サーリールも転生者だったのか。
「サーリール、あなたも転生者だったのか」
「そうだ。転生者ではない、などと言ったことはないが?」
確かに転生者なのか?とは聞いたことが無い。
「俺とサーリール、そしてエル・ドアン。一体何人転生して来ているんだ?」
「誰も統計は取っていないから判らないな。少なくとも私は二十人は知っているが」
「そんなに?」
そんなに多いのか、そんなに少ないのか、言っている自分でもよく判らなかった。
「俺とエル・ドアンは多分同じ世界の日本とアメリカという所から転生して来たんだが、あんたは何処から来たと言うんだ?」
「私は、君とは多分違う星、というか次元から来ているから、その日本やアメリカという所は知らないな」
次元が違あ、なんてことなら確かに全く判らない。そもそもこの世界も次元が違うのだろうが。
「それで、その本を書いた人はあんたと同じ世界から来た、ということか」
「そうなるかな。そうとも言えるしそうでないとも言える」
「なんだよ、それ」
「判らない、と言っているのだよ」
「なんで判らないんだ?」
「私に昔の記憶がないからだ」
ああ、転生に異次元に記憶喪失と来た。欲張り過ぎじゃないか?
「じゃあ、その本もあんたが書いた可能性もあるってことか」
「そう言うことだ」
とりあえず、何でもアリな気がして来た。




