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第7章 王立図書館の章 第90話 王立図書館長の話

 夜遅くになってもサーリールは戻らない。仕方なく俺たちは最深部への扉を閉めることにした。


「ここは絶対に中からは開かない造りになっておる。如何いかなる魔法であってもな」


「そうなるとサーリールは閉じ込められてしまうことになりますよね」


「仕方あるまい。あの男が自ら姿を消したのであれば、閉じ込められるのは自業自得と言うものだ」


「自分の意志ではなかった場合は?」


「それでも仕方ないことには変わりない。いずれにしてもあの男の落ち度ではあるからな」


 ワンナー・ツースール館長は割と冷たい。


「館長、サーリールとは旧知の仲ではないんですか?」


「まあ、古くからの知り合いではあるな。ただそれ程親しかったという訳ではないのじゃ。会ったのも数回、というところじゃな」


「そうなんですか。とても親しいのかと」


「ただ」


「ただ?」


「助けてもらったことはある、というくらいだな」


「何かあったんですか?」


「儂の若い頃にな。まだ儂が駆け出しの魔法使いだった時、ロングウッドの森で襲われてな」


「ロングウッドで?」


「ああ、その頃は儂も今でいう中級魔法士程度の魔法士か使えない程度だったんじゃがロングウッドの森に居る伝説級の魔法士の教えを請いに森に入り込んだのじゃ」


「それで案の定迷ってしまってな。さらに、その頃は特級魔法士のあたりの悪い魔法士も結構居たのだ

。そいつらの遊びの的にされてしまってだな、瀕死のところをサーリールに救ってもらったことがあったんじゃ」


「それじゃ、命の恩人じゃないですか」


「まあ、そうとも言えるな。ただ、森の管理はあ奴の責任だったんじゃよ、だから儂が襲われたのもあ奴の責任、ということじゃ」


「えっ、ロングウッドの森の管理者はナーザレスじゃないんですか?」


「なんだ、ナーザレスとな?その名は知らんな」


「ご存じありませんか?クマの魔法使いなんですが」


「クマだと?そんな魔法使いが居る訳があるまい。何かの勘違いではないか?」


 ツースール館長が知らない、となると俺が会ったクマは何だったんだ?というか、そのクマに若返りの魔法を掛けてもらったから、今こんな姿なんだが。


「いや、確かに俺はロングウッドでナーザレスというクマの魔法使いに会って、森を管理していると聞いたのですが。ルナジェール・ミスティアも一緒に会いましたよ?」


「そうか、ルナにも会っているのか。それではそのクマも実在するのかも知れんな。ただ儂が訪れた時はサーリールが森を管理していると言っておったがな」


 よく判らない。サーリールが戻ったら確認する必要がありそうだ。


「それで、このまま閉めて大丈夫ですか?」


 見かねてキサラが問う。三人ともこのまま帰っていい物か、決断しかねていた。


「ここで泊ってもいいんじゃないですか?」


 サーリールが戻ってくる可能性は結構高いと思っていた。最深部から消えたのだ、戻ってくるとすればここしかない。


「儂はもう眠いんじゃが」


「館長が一緒でないと俺たちだけで泊る訳には行かないんじゃないですか?」


「確かにそれはそうなんじゃが。うむ、仕方あるまい、ではそこで儂は仮眠をとるとしよう。お前たちは何か起こるとも限らんので徹夜でも何でもするがよいわ」


 そういうと館長は大きめのソファーで横になった。


「どうします?」


「あれだけ探しても扉なんて見つからなかったんだから、ちょっとやそっとでは探せないだろうな。封印や隠蔽魔法を多重に掛けられているんじゃないかと思う。俺程度ではどうしようもない程のな」


「コータロー様に見つけられないのであれば私にはとても無理です。やはり館長のお力を借りるしかありません」


「そうは言っても本人はアレだからな」


 俺はツースール館長を指差した。


「こら、指を差すでない」


 こっちを見もしないで館長か言った。


「なんだ。起きているんじゃないか」


「今から寝るのだ」


 結局館長は身じろぎもしないで結局寝入ってしまった。


「仕方ない、キサラは引き続き本を探してくれないか。俺はサーリールをなんとか探してみる」


「判りました」


 そして手分けしての徹夜が始まった。

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