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第6章 魔法学校の章 第77話 王都で身辺調査だ

 それから俺は様々な手を使ってエル・ドアンの素性を調べ始めた。隠蔽魔法は最早お家芸だ。誰にも探知されずに王都魔法学校の書庫に入り浸って手掛りを探し始めた。


 記録によるとエル・ドアンが生まれたのはアステア歴245年、今は261年なので15歳か16歳に間違いない。ドアン商会会頭の次男として王都で生まれている。


 この国では王朝が変わる度に新しい暦が作られる。だからアステア王朝が始まってから261年、と言う意味だ。前王朝の歴史や記録は王朝交代の際に殆ど破棄されるので古き文献は残らない。


 エル・ドアンは貴族ではないが大商人の子息だったようだ。資産は下手な貴族よりもあるのだろう。父のトール・ドアンはボワール商会の様に爵位を金で買ったりはしなかったようだ。


 今の所普通の子供だし、特に魔法の天才になる素養は見当たらない。どこで間違った?ああ、間違ってはいないのか。


「あれ?」


 俺はあることに気が付いた。エル・ドアンの父の記録はあったが母の記録が無いのだ。それは何処を探しても見つからなかった。


「母親が居ない?ああ、養子とかそういうことかな」


 養子にしても母親の記録はあるだろう。そうか、独身の時に養子に取れば母親は無いか。でも、なぜそんなことを?


 謎はあるが記録そのものには齟齬はなかった。が、偽造なんて割と容易そうだ。


 王都魔法学校にある記録からではエル・ドアンの正体にはたどり着けないのかも知れない。


「どうしようか」


 キサラに相談してみたが、良案があるはずもない。


 俺が発見したエル・ドアンの正体を示す証拠は見つからない。ロングウッドの森に戻ってナーザレスに若返りの魔法をジョン・ドゥに伝授したかどうかを確認できれば確率はグンと上がるのだが。


「でもそれが確認出来たらどうなんだ、って話か」


 確かにエル・ドアンがジョン・ドゥ(どっちにしても偽名だ)だったとして、それが何なんだ?


 同じ異世界から来て若返った者として協力できないか、ということ、あたりか。


 エル・ドアンをジョシュア捜索に向かわせない、という消極的な事ではなく、味方にしてしまって一緒に二人を見守ってもらう、なんてことができればアステア王国では無敵かも知れない。


 ただ問題なのは何故ジョン・ドゥが若返ってエル・ドアンになったのか、ということか。


 何か目的があってのことなのか、ただ若返りたかっただけか。


いずれにしても資料や第三者の証言では辿り着けそうにない。ということは正面から本人に確認するしかない、ということか。


 エル・ドアンが学校に入った時の経緯をローウン先生あたりが知っているのであれば聞き出せる可能性あるかも。


 そう思いつくとおれは早速ローウン先生を訪ねた。


「ローウン先生、少しいいですか?」


 教師の控室は全て個室になっている。控えの間もあってほとんどの教師はそこを書庫にしていた。得意な魔法書や教えている魔法書を収納しているのだ。


 ローウン先生の書庫には古代魔法や攻撃魔法の魔法書が数多く並んでいる。図書館よりは専門的な書物が多そうだ。


 そういえばエル・ドアンの控室には全く書物が無かった。聞くと全てが頭の中にあるので不要、ということだった。それで天才を再確認したのだが正体がジョン・ドゥだとすると少し事情が変わってくる。


 俺と同じように同じ時代の合衆国から転生してきたのだとすると魔法にはこの世界で初めて触れたはずだ。ということは俺とあまり変わらない知識しかない、ということになる。というか魔法の知識なんてファンタジーの世界の話でしか無い筈だ。あくまでフィクションの話だでしかない。


「なんじゃ、コータローではないか。エル・ドアン先生はどうしている?」


 俺のことよりもドアン先生のことを気にしているのは仕方ない。俺には何の興味も無い筈だ。


「そのドアン先生のことでちょっとお聞きしたいことがあるんですが」


「ドアン先生のこと?一体何を聞きたいというのだ?」


 ローウン先生は少し興味が出てきたように身を乗り出した。


「いや、大した話ではないと思うのですが、あの若さで王都魔法学校の教師を務めているなんて、一体どういった経緯で入学されたのだろう、と不思議に思ったのです」


「入学した時の話か。本人にきけばいいのではないか」


「勿体ぶって教えてくれないのですよ。ローウン先生なら

お詳しいんじゃないかと」


「まあ知らぬわけではないが。いいだろう、少し話をしてやろう。その代わりだ」


「その代わり?」


「エル・ドアンの動向を私に報告すのだ」


「動向を?何の動向ですか?」


「なんでもよい。何か学校や校長、他の先生について言っていたことを教えてくれればよい」


「彼についてもう数か月経ちますけど今のとこそんな話は一切聞いたことがありませんよ。彼は学校や他の先生には興味がないんじゃないでしょうか」


 それはそれで失礼なことだが本当の事なので仕方ない。俺にはエル・ドアンを庇う理由も無かった。


「それでは何の役にも立たないじゃないか。話をしても無駄、ということか」


「そんな交換条件なしで教えてくださいよ。彼が学校に興味がない、ということは先生にとって朗報じゃないですか」


「なぜじゃ」


「彼が興味がないのは学校のこともそうですが、校長の座にも興味がない、ということじゃないですか」


「うむ、そういうことになるのか。確かにあの男にはわが校の校長の座は目標でも何でも無さそうではあるな」


「いいだろう、では話してやろう」


 そしてローウン先生はドアンが入学した経緯を話し始めた。

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