第5章 展開する物語の章 第64話 ロングウッドの森で再会した
「戻ったぞ」
ジョシュアたちと最初に別れた場所に戻った。
「遅かったな」
「いやいや、これでも早いほうだ。それと目的は達していない」
「なんだ、目的も達していないのに戻ったのか」
ジョシュアは待ちくたびれているのと少し寂しかったことでツンデレのツン状態だ。
「ジョシュア、なんてことを言うの。コータロー様は」
「判っている。だが、こいつはこんな程度では名に感じたりしては居ないと思うぞ」
「ジョシュア、何だ、よく判っているじゃないか」
「長い付き合いだからな」
その二人の会話からセリスも本気で言い合いをしていないことは判った。基本仲のいい二人なのだ。
「コータロー様、こちらの方は?」
気粗が指摘する通りサ―リールは俺の後ろに隠れている。
「サーリール、ほら、挨拶しろよ」
俺の後ろから小さなおっさんが出てきてセリスはちょっと驚いた。
「わっ、私は、私は」
「何を緊張しているんだ。先にこっちを紹介しようか。そこの令嬢はルスカナ領主ウォーレン侯爵の次女セリス、こっちの魔法使いはシルザールのボワール伯爵家に仕えていたキサラ・ショーノ。それとこいつはオマケだ」
「オマケとは何だ。俺はジョシュア・レスト、ただの一般人だ」
「元ギャングの一般人な。それとセリスの思い人だ」
「一言も二言も多いぞ、コータロー」
「いいじゃないか本当の事なんだから。それでこちらはサーリール・ランド、このロングウッドの森の魔法使いだ」
「サッ、サーリールだ、よろしく頼む」
「いつまで緊張してんだよ。それでだ、実はこのサーリールさんの家にお引越しすることになった」
話の展開に誰一人付いてこれていない。
「お引越し?」
「お引越しというか、まあ定住させてもらうってことだ」
「誰が?」
「お前とセリス嬢だよ」
「いや、そのサーリールさんの家なんだろ?」
「そうだ。心配するな、サーリールさんは俺と一緒に旅に出るから家はお前たち二人で住むんだ」
俺の元の計画はこうだ。ジョシュアとセリスをロングウッドの森の多重結界の中に匿って一旦身を隠す。ほとぼりが冷めたころを見計らってどこか安住の地を見付ける旅に二人で出かける、ということだった。
一番の問題は多重結界がエル・ドアンに通用するかどうか、ということだろう。再度ベルドア・シルザールがセリスを探すようにエル・ドアンに依頼した時、どうなるかは今のところ予想が付かない。
どこを探しても見つからないと言う場合、消去法でロングウッドの森ではないか、という疑問が湧くかも知れない。そうなったら逃げ切ることはできないだろう。
そんな時、いかにロングウッドの森の魔法使いたちを味方に付けられるかが勝負のカギになるかも知れない。最低でもクマさんとルナは味方にしないと話にならない。
サーリールの家に着くとみんなの不満と言うか心配は無くなった。いい家なのだ。
「ナーザレスが来るまで、ここで待たせてもらうことになる。適当に寛いでくれ」
「なんでお前の家みたいな顔をしている。単になる居候だろうに」
「いいじゃないか、サーリールが言わないことを代弁しているんだ」
そんなこんなでのんびりとした日が数日続いた。若返りの魔法を使ったクマさんは数日は動けないのだ。
「なんだ、お前たち、この家で何をしている?」
そこへやっとクマさんがやって来た。二日に一回の巡回が復活したのだ。
「ん?一人は見覚えのある顔だな」
「クマさん久しぶりだな、俺だよ、コータローだ、あんたに若返りの魔法を掛けてもらったコータローだよ」
「そう言われて見ると少し前に我のことをクマさんなどと呼ぶ失礼な奴が居たな」
なんだか俺のことを忘れてしまっているかのようだ。
「それで、ここで何をしていると聞いておるのだ」
「クマさんを待っていたんだよ」
「我をか?理由は?」
「多分師匠に若返りの魔法を掛けていたんじゃないかと思うんだ。師匠やルナの居場所が知りたくてクマさんを待っていた、と言うわけさ」
「師匠と言うのはヴァルドアのことか。それなら確かに若返りの魔法をつい先日まで掛けておったな」
「やっぱり。それで師匠は今何処に?」
「ヴァルドアならシルザールに向かったぞ」
シルザールに?あ、もしかしたら俺犯人説をそのまま利用したのか?
「どうしてシルザールへ?」
「もう不要となった『赤い太陽の雫』を返しに行くのだと言っておった。殊勝なことよな、そのまま持っていてもよかったであろうに」
そのままであれば俺はずっと『赤い太陽の雫』を持っていることで追われ続けなければならない。俺を捕まえたて『赤い太陽の雫』を取り戻したが本人には逃げられた、という筋書きか。
「で、お前たちはなぜここに居るのだ?」
クマさんは呆けてしまったのか同じ質問を繰り返す。いや「何をしている」から「なぜここに居る」に変化しているのか。いずれにしても501歳で呆け始めたのか心配になった。




