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「それは可哀想ね。私に何ができるかわからないけれど」
「ロイもどうすればいいのかわかんない」
お城の外、地平線の果てまで続くみたいなバラ園の真ん中で、ロゼ姉は座り込んでる。足元のバラの汚れをふきとりながら、こんなことをいった。
「誰が説明したって、きっとおなじことよ」
「ううん。説明がじょうずなひとだったらきっとうまくいくと思うの」
「それが私?」
「ロゼ姉は、口説くのが得意なんでしょ」
ロゼ姉は、バラによしよしするのをやめて薄らとほほ笑んだ。
「恋じゃないもの」
「アクロちゃんのこと好きじゃないの」
「大好きよ」
「だったら口説けるよね」
「せめて説得っていってちょうだいな。話が変わっちゃうじゃないの。あとね」
ピンクの燕尾服、ピンクの革靴、ピンクの蝶ネクタイは、バラがたくさん集まってできているみたい。
「私が口説くときは、それは私が恋をした相手にじゃなくて、誰かに恋をしている誰かに対してなのよ」
「ロゼ姉は恋をしないの」
「しないわ。面倒だもの」
「恋ってめんどくさいの」
「そんなことないわよ」
「いま、めんどうだっていったじゃん」
「誰かに恋をしたらバラ園から離れなきゃいけないでしょう。でも、私ここから出られないもの」
「そうなの?」
ロゼ姉はずっと背を向けたまま。返事をしたり、笑うときだけ、首を少しだけこっちに向ける。
「本当に愛したい人を見つけてしまったら」
ロゼ姉の言葉は寂しそうだった。そよ風でバラたちがさらさら揺れる。ロイもなんだか悲しくなってきた。ロゼ姉は、どんな人でも口説…説得できると思ってたけれど、誰でもってわけじゃなくて、しかもここから出られないなんて。
「ここから出られないことを説明するのが、とても面倒でしょう」
「そういうことなの?」
「どういうことよ」
「なんか、最愛の人に会えないことが、なんていうか、辛いのかなって、むずむずするのかなって…。説明がめんどくさいからだなんて、ちょっと予想外」
またクスリと笑って、ロゼ姉はふたたびバラを可愛がり始めた。
「とにかくごめんなさい。今の姫を助けることは私にはできないわ。でも、そうね…」
「なに」
「ロイウェルは姫に嫌われたくない?」
「うん、ずっと仲良しなの」
「それなら、言うことはないわ。さようなら」
「さようなら」
ロゼ姉はとても深いため息をついていた。お話しすぎて疲れてしまったのかな?とりあえず、
「ありがとう」
ロゼ姉は振り返らなかったし、返事もなかったし、微笑んでもいなかった。




