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彼と彼女たち  作者:
第1章
28/37

茜と過ごす昼休み 7 ≪一方その頃③≫

ガラガラと生徒会室の引き戸が開く。


「こんにちわー」

入ってきたのは、生徒会副会長の小野優香〔おのゆうか〕。

彼女は2年ながら立派に副会長という職責を全うしている。それは会長である愛も認めていた。


優香は数多い愛のファンの一人である。しかも熱烈な。愛を崇高して彼女に少しでも近づきたいと思っている。


―――でも、まだまだ。


自分がどれだけ近づこうとも、愛はどんどん先を進んでいく。近づきたくても近づけない。そんな存在。

だからこそ優香は努力し続ける。


「あ、優香ちゃんこんにちわ~」

七海が気づいて優香に手を振る。


「お疲れ様」

愛も優香に挨拶をする。

優香はいつものように所定の席に座る。


ちなみに、生徒会室は縦長の机を一つ真ん中に設置し、窓際の入り口から対称の位置に生徒会長である愛が座る。

愛を基点に、入り口から向かって右側を副会長の優香が、左側を補佐の七海が座る。

また、ここに書記兼会計の生徒が一人いるのだがここにはいない。


「ふぅ」

優香は鞄から小さい弁当箱を取り出し机に置く。


「優香ちゃんはこれからお昼?」

七海が優香に訊く。ちなみに七海と愛は既に食べ終えている。

というのも昼休みまで残り10分くらいしかないのだ。


「はい。中央委員会の段取りに手間取ってしまいまして…」

「そういや、午後からだもんね会議」


優香は生徒会長の副会長を務める傍ら、中央委員会の委員長も兼任している。


中央委員会とは、全学年全クラスの学級委員長及び副委員長が在籍し、学校の行事や風紀についての会議を主にする組織である。

朝霞高校では、生徒の自主性を尊重しており、学校内の行事の企画や主催は生徒側で決定実施する事ができる。

中央委員会は各クラスの意見を総合的に判断し決定する場でもあるのだ。


一方の生徒会は、中央委員会とは一線を敷いている。

生徒会には強い決定権が存在し、中央委員会の決定を覆す権利がある。が、実際に生徒会と中央委員会が対立する事は稀である。逆に中央委員会は生徒会の諮問機関の役割も持っているため、両者の力のバランスは均衡しているといえよう。



優香が遅めの昼食を摂っている間、七海は各クラスの中央委員会の名簿を眺めていた。

そしてその中に気になる人物の名前を見つける。


「んん? ねえねえ愛~」


「どうしたの?」


「もしかしてだけど、これって愛の弟君じゃない?」

そう言って、名簿を愛に見せてみる。

七海が指差す先、そこには確かに『柏晶』の名前が載っていた。


「その通りよ」


「あ~、やっぱり」

えへへ。と笑う七海。


「へぇ~、さすが愛の弟君だね。もうクラスの学級委員長やってるんだ~」


「それは私も驚いたわ」

愛が頷く。愛にとって晶は自主的にこのようなポジションをやるような性格はしていないと思っていたからだ。…実際は、担任に強制的に任命されたわけだが。




一方優香は少しつまらない気分でその話を弁当箱をつつきながら聞いていた。

それは、晶の話題になったからだ。晶の話になった瞬間愛の表情に変化が現れた。そこを優香は見逃さなかった。

僅かではあるが、愛は優しい顔になったのだ。あの凛と佇む愛が。自分も見た事のない顔つきだった。

確かに我が弟の事だ。自分の弟が褒められれば嬉しいに決まっている。


だけど優香は悔しい気持ちになった。まだ会ったこともない晶を煩わしいと思った。


―――これは、実際に会って確かめてみないとね…


奇しくもこの後晶に直接会う機会があるのだ。

そこで晶の人となりを見てみれば分かるはず。


「…あ」


13時まで後5分を切った。

優香はすぐ弁当箱を鞄にしまい立ち上がった。


「それでは委員会に行ってきます」

鞄は持っていかない。委員会が終わったらまたここに戻ってくるから。


2人から激励の言葉を貰い、ちょっと恥ずかしがりながら廊下に出る。

大会議室は生徒会室からはすぐだ。別に焦らなくても十分間に合う。


早足になるのを抑えながら、優香は大会議室に向かった。

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