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廃屋に潜む、闇の中  作者: 秋原かざや
第1部 本編
5/11

トイレでの信じられない出来事

 というわけで、トイレに来ました。

「僕はここで待ってるから」

 流石に女子トイレの中まで行けませんよね。わかります。

「えっと、で、できれば、声かけ続けてくれます?」

「そう? うん、わかったよ。気をつけてね」

 何をと突っ込もうとしたけど止めました。ええ、今は聞きたくないし。

 というわけで、がちゃりとトイレに入りました。

 臭いが凄いです。でも、こっちも実はギリギリなので、さっさと済ませようと思います。ついでに懐中電灯は、トイレの隅においてあります。蛍光灯にして。さてと、よいしょ……。

「だいじょーぶ?」

 ラナさんが声をかけてくれました。

「はい、臭いがキツイですけど、大丈夫です」

 ふー、一息ついたーっ!!

「それならいいけど、気をつけてね?」

「はーいっ!!」

 そうなんだよね、臭いが凄いと思ったら、ここ水洗トイレじゃなくて、汲み取り式のトイレなんだよね。まあ、水洗トイレだったら、水流せないから、更に酷いことになってただろうし、不幸中の幸いと思おう。

「そろそろ終わるー?」

 またラナさんが声をかけてくれます。

「はい、もうすぐ出ま……」

 全てを終わらせて、立ち上がったとたん。


 ぐいっ!!


「ひっ……」

 ななな、なんと、下げたショーツを握ってる宙に浮いた腕がっ!!

 明らかにこの腕、男性の腕だよねっ!? 毛深いし太いしっ!!

 しかも、それがハンパな力じゃない! めっちゃ凄い力で……いやー、その中には絶対に入りたくないっ!!

 と、そこでばんとトイレのドアが開いた。

「サナっ!!」

 ぐいっと引き寄せてくれたから、私は助かりました。

 ……あ、あれ?

 するっと何かが外れて、腕が消えました。

 え? 外れたって、まさか……。

「大丈夫、サナ?」

「あ、ラナさん……あ、ありがとうございます?」

 心臓バクバク言っています。ううう、どきどきした。

 あのまま引っ張られてたら、マジ、ヤバイところでした。ええ。いろんな意味で。あ、懐中電灯、懐中電灯。

 ……。

 ………。

 ぽろっと何かが零れました。

「ううう、奪われたーっ!!」

 そう、さっきするっと外れたのは、私のショーツ。

 お気に入りの一枚だったのに、まさか剛毛の幽霊の腕に奪われるなんてっ!!

「さ、サナ?」

 しかも、今、ノーパンなんだよね? すーすーして気持ちいいを通り越して寒いですっ!! 心許ないです!!

 今、幽霊にショーツ奪われて、貴重な体験できてよかったねって思ってるでしょ?

 私の身になってよ!?

 幽霊に脅かされるわ、追われるわ、ショーツは奪われるわっ!!

 心は存分に傷ついているわよ、ええっ!!

「で、でも、スカートでよかったね。ズボンだったら、もっと大変なことになってたよ?」

「ううう、どこかにショーツないですよね?」

 泣きそうな顔で私がそういうと。

「あるといえばあるかな?」

「へ?」

 な、なんで……。

「なんで、それを持ってるんですかっ!? も、もしかして、下着ドロ……」

「ちっ、違う、違うよっ!! 姉さんがコスプレイヤーで、僕の車を倉庫代わりにしてて、それでっ!! なんなら、今から僕の車に行く?」

 というわけで、あれだけ迷った廃屋を、するっと抜けて外に出ました。

 あれ、ここ建物の裏?

「僕の車はこっち」

 そういって、鍵を開けて、トランクをごそごそしています。

「あ、これでいい?」

「きゃー、見ないでっ!!」


 ………。

 …………。

 よ、良かった、でいいんだよね?

 お姉さんのサイズが私とぴったりなのが気になるところだけど、いいことにしよう。ノーパンで廃屋を探索するのは、ちょっと遠慮したい。

「もういいかな?」

 あ、ごめんなさい。あっち見てって言ってたんだっけ。

「あ、ありがとう、助かった……です」

「それはよかった。で、そろそろその丁寧な口調止めてもらえると嬉しいな。たぶん、僕と君、タメだと思うし」

「え? でも、ラナさん……いや、ラナ君。大学行ってるって……」

「僕は19。君は?」

「……来月で、19、です」

「ほらね?」

 にこっと人懐っこい笑顔で言う。

「それに、早くサナの友達見つけて、帰ろうよ。ちょっとここ寒いし」

「そ、そうで……そうだよね」

 私の言葉にラナ……君は満足げな笑みを浮かべてる。

「じゃあ、もう一度、入ろうか」

「あれ? ラナ君……懐中電灯、持ってないの?」

 思わず突っ込み。

「僕、夜でも分かるからね」

「こ、怖くないの?」

「ん、平気。でないとここに一人で来ないよ?」

 きょとんとした顔でそう答える。

「な、何しに、ここへ?」

「いつもの散歩だけど?」

 さ、散歩でこんな心霊スポットに来ないでください。

 思わず心の中で突っ込みました。

「だよねー。さっさと、サナの友達見つけよう。それじゃなきゃ、いろいろ楽しめないし」

 え、それって、どういう?

 突っ込む前にラナ君は私の手を握り、そそくさとまた、あの廃屋へと入っていったのでした。

みんなと合流できなかった(涙)。

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